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「それ以上動くな…!」
そんな言葉がボクの脳内に響いた
「それ以上動くと、舞園蒼唯の命はないぞ」
そう、ボクの命がないと言っていた
驚いて顔を見た
そうしたら謎のお兄さんは少し涙を流しながら銃口を目の前にいる警察に向けゆっくりゆっくり後ろに下がっていた
「…あ…あの…」
「…ごめんね…アオくん…君は覚えてないかもしれない…でも、これは君のためだから」
“君のため”そう君は言った
「……ボクのため…」
そう口に出して警察の人、謎のお兄さんが一斉にボクを見た
「…ああ、君は…いや…」
「……アオくんは、この銃で人を殺めそうになったんだ」
「だから俺は、アオくんを守ろうと思って咄嗟に銃を君から奪い取り、人質をとるような体勢にした」
ボクが…人を…?
「アオくん…俺さ」
夢はそこで止まった
謎のお兄さんのことを忘れ、謎のお兄さんに人質にとられている夢
「…なんだったんだろう…今の夢……」
ボクは何も考えずもう一度ゆっくりと目をつぶる
そして意識はどんどん薄れていき、また眠ってしまう
「アオくん…俺さ」
「友達も家族も…誰も俺を話そうとも…見ようとさえしなかった」
その短い文がボクの頭で何度も何度も流される
「だから…もし君があの時、本当に人を殺めてたら、俺と同じようになっていたかもしれない」
俺と同じすなわち、誰からも相手にされなくなるということだ
「…そんな君を想像したら…頭の中が真っ白になって…それで今の感じかな…」
「…お兄さん」
「……」
「どうしたの?アオくん」
「……」
どうしてだ…?さっきまで声は出せたのに…急に出なくなって…!
「ッ…!!」
ボクは飛び起きた
「…はぁ…はぁ…」
「……どうして…どうして…」
何故、ボクが記憶を忘れたことになっているのか
何故、ボクは人を殺めそうになったのか
何故、お兄さんを見ていると父を見ているような気持ちになるのか
「…父さん」
ボクの父はボクが幼稚園の頃に死んだ
その時のボクは父と追いかけっこをしていた
父もボクが小さいからという理由で手加減してくれていた
でも、ボクが走っているとすぐ近くから大きな音がなり、その場にしゃがみこんでしまった
その場合というのは道路のど真ん中
すぐ横からはスピードはそこまで速くはないが、スマホを見ながら運転している
そして、父が焦り、猛スピードでボク目掛けて走っていき、ボクを思いっきり吹っ飛ばした
ボクを飛ばしたあと、後ろで、誰かの叫び声や
救急車という人など色んな人の声が聞こえた
ボクは飛ばされた衝撃で少し頭を強く打ってしまったため、起き上がることができなかった
その時、ボクをゆっくり抱きかかえる人が居た
幼い心でもこれはダメだと思った
たが、その人は<大丈夫><君は一人じゃないよ>
そう言った後、その人は何も言わずに、ボクを抱きかかえながら走った
その時、ボクは後ろが見えなかったため、何があったのか分からなかった
ボクの父がどこに消えたのかも分からなかった
その人は、6歳になるまで色々教えてくれた
そして、6歳になると児童養護施設に入れられ、その人とはそれ以来会っていない
今となれば、父が死んでいることなんて、あの頃を思い出さずとも分かる
「あぁ…もう!寝て忘れよ…」
「アオくん…ありがとね、そう言ってくれて」
ありがとう?ボクは何を言ったんだ…?
「…アオくん、君がまだ小さい時のこと…覚えてるかな?」
ボクが…まだ小さい時の頃…?
「アオくんのお父さんが、アオくんが車に轢かれる直前に助けた時だよ」
「ッ…!?」
そう言ったあと、お兄さんは顔を見せた
あの時と何ら変わりもない…父さんに似た目をして、微笑んでいる
「アオくん」
「お別れの時間だよ」
そう言って、お兄さんはボクを突き飛ばした
その後、後ろで発砲した音が聞こえた
すぐに後ろを振り向いた
そこには、頭から血を流しているお兄さんの姿があった
そして、ボクはふと思った
多分、父が死んだ時もこうなっていたのだろう
ボクはまた一つ、自分のせいで大切な命がなくなったのだと身に染みて思った