注意、このお話は二次創作小説になります。
血表現、死ネタ(蘇り、繰り返し、やり直し)表現がございます。
それでも宜しい方はどうぞ
⬇
最後の晩餐。
それは、聖書に記されたイエス・キリストの処刑される前に食べた夕食のことであり、死刑囚が処刑前夜に選択出来る最後の夜の晩餐である。
あるものは、ハンバーガーと言った。
あるものは、鮭と言った。
あるものは、チョコレートと言った。
さて、貴方は最後の日に何を望む?
否、質問を変えよう。
“最後の日”だと分からないままでいつも通りの食事を貴方はするだろう。
最後の日だと分からないまま食べた最後の晩餐だが、貴方はそれを最後の晩餐だと言うか。
最後の日、最後の食事だと分かっていることを最後の晩餐というのか、それとも最後の晩餐だと分かっていなくとも最後の日に食べているのだから最後の晩餐だと言うのか…、
それは人によって異なるだろう。
俺は、最後の日だと分かっていても分かっていなくとも…、それが”最後の晩餐”ならばそう言えるだろう。
もし、自分が殺されるなら、…
貴方はどうする?…誰に殺されたい?
…貴方はなんでも手に入るとしたら、…
何を望む?
腕に繋がれた点滴からは、ゆっくりと俺の腕に液体を流し込んでいた。
この液体は何だろうか。
毒…とかではないだろうか、毒だった時俺はどうなるのか…、苦しんで死ぬだろうか。
訳も分からず意識を失って死ぬだろうか。
毒だとしても死に方はどうなのかは分からない。
冷たい地面。何故か繋がれた点滴。赤く染まりつつある緑色のフード。
牢屋に繋がれた鎖は左手を繋いでいた。
何か動く度、ジャラジャラとうるさい。
『はぁー……』
溜息をつくと、隣に居る看守が嫌そうに俺の方を見つめてくる。
『…なぁ、はよ殺してくんね、?』
そんなに嫌なら、はよ俺の事殺せばいいのに。
この国の考え方もよく分からへんなぁ…、犯罪者をこの国の地下にずっと捕らえておいたところで戦争か何かがあった時にそのまま逃げられるのがオチだろうに。
どうせなら、早く殺してくれ。
「…殺せへんねん。…弁えろや。つーか普通は生きたいもんやろ」
生きたい…ね、…そんな気持ちずっと前に消え去った。
『…別に、俺はよ死にたいんよね。』
ジャラジャラと鎖を動かしながら言うと煩いとでも言いたげに睨みつける。…酷いな、暇やし何もやることないんやもん。
…なら、と看守さんの方を向いてひとつ質問する。
『…なぁ、管理人さん…いや、看守さんはさ、最後の晩餐何がええ?』
…最後の晩餐、…最後の日に食べる料理だ。
…いつの日か、おれも聞かれたような気がする
「…私語は慎むように。」
黄色い目が面倒臭そうに俺を見つめている。
『…お願いやねん、そろそろどうせ死ぬんや。』
…どうせ死ぬんやったら、答えてくれや。…な、?
「………はぁー、……俺は鍋とかがええな。美味いし」
長いため息やなぁ…、なんて笑いそうになったが話を続けてくれるようでよかった。
鍋…か、ええな。痛風鍋とか、?何鍋かな。おれはキムチ鍋とか…あとは普通の鍋とかも好きやなぁ…、あ、闇鍋またやりたいな。
『お、看守さんええね。…鍋か、ありやな。』
看守さん、そういう度に顔を歪ませていた彼だったがはぁ、と溜息をついて俺の方を見つめてそう言い返してくる。
「…看守さん呼び気持ち悪いな、シャオロンでええ。」
シャオロン…ねぇ、……なら、俺のこともちゃんと呼んでもらいたいものだ。…まぁいいか
『…シャオロン看守な。』
「………あと、これは情が映ったとかじゃない。勘違いはするなよ。」
『…分かってるわ、シャオロン看守。』
外を眺めると、外は、真っ暗だった。
『…シャオロン看守、今何時ぐらいなん?』
「…消灯まであと10分。」
消灯は21時。…、早く言って欲しかった。
取り敢えずできる限りの身支度をしていると、奥の方から看守長の声が聞こえてくる。 消灯まで残り5分らしい。…なんて、そっちを見つめているとか細い声が俺に話しかけてきた
「……あと、おれは看守ちゃうから。」
知ってる。お前が看守や無いことも、…俺が囚人では無いことも。…それで俺が、___な事も。
『……知ってるよ。』
「…そうならええねん。、」
「…あぁ、明日はコネシマ担当やから。」
『コネシマ…か、』
「……コネシマ知ってるやろ?」
『…知ってる。』
知ってるに決まってるやろ、俺のこと馬鹿にしてるのか。…なんて言いたかったけれどお前に言ったところでどうせ分からないから。
「…なんでそんな顔しとんの、お前」
『…別に。』
「…ぁ、消灯らしいわ、もう寝ぇや」
『…ん、』
そう言った瞬間、大きな声で聞こえてくる。
「消灯ー!!!」
…これは、ロボロの声…やな。
電気が消える。
朝起きる。目をぱちぱちとすると何時もの牢屋でカーテン越しから光が漏れ出ていた。
…懐かしい夢を見ていた気がする。
彼奴らと遊んだゆめ、戦った夢、…忠誠を誓った夢。…もう、…見ることは無いけれど。
…、小さな部屋で何もやることもなく、ただひたすらに死ぬその日を待ち続ける。
普通の人間なら狂っているだろう。
…まぁ、俺は普通の人間なんかじゃないが…、
「…おい、起きろや。」
『なんや、看守さん。起きとるけど』
不機嫌そうな声、いつもよりトーンが下がって完全にオフの声。気力は無い。
…それほど俺が嫌いか…、
「……今から、朝食を渡す。」
そう言って食事を渡すことだけの為に作られたほんの小さな穴にフランスパンとスープ、サラダの健康的なご飯を渡される。
口に含み、嚥下する。…ただそれだけの繰り返し…、美味しい…それだけである。
もし、今日が処刑の日で…、これが最後の朝ご飯なら…それはきっと幸せである。
…何せ、早く死にたいから。
銃戦争に巻き込まれて、敵地に攻め込んで来いって言われたらきっと喜んでいく。
…そう、喜んでいくのに…。
……彼奴にまた、…そうやって命令されるなら何事だって喜ぶのに。
『…なぁ、看守さんや。』
「……、」
ガン無視…か。
シャオロンは…、彼奴は良い奴だから。俺みたいな死刑囚でも少し尻尾を振りつつ話してくれる。…まぁ、死刑囚だからそこまで仲良くすると後々辛いことになるのだが…、
こんくらい返してくれても良くないか???
『…、今日の…天気は何や?』
そう俺が聞くと、俺の事をキッと睨みつけて大きなため息をついたあと…、
驚くほど低い声で
「…晴れや。…」
と返答してくれた。…まぁ、彼は心無いとか言われとるけれど…なんだかんだ言って良い奴だ。…もちろん、ここの皆は良い奴しか居ないのだが…、
『…そぉか、……』
戦争は…何時やるのだろうか…、…この軍に囚われ始めてから1週間近くが経つ。
……この軍ならば、死刑囚だなんて2、3日位で早く処刑してしまうのに…、
どうして今回は処刑もせずに、放置なのか…。
……まぁ、晴れの日が続いてるからだと思うが…、
この軍は少しおかしい軍だった。雨の日に処刑する。何故かそう決まっていた。
…何かと、雨が降り終わったあとの晴れの空が綺麗だから。
雨が降り終わって、晴れの空を見せる前に殺してやろうとする。…まぁ、雨が降り終わると…世界は綺麗に見える。
…雨が降り終わった時…その時はこの国の脅威は居なくなる。…そう考えた方が妥当だ。
きっとこの国のそういう方針だろう。
『…、晴れの日はきっと綺麗なんやろなぁ』
…汚れなんて1ミリもない。そんな晴れ。
…きっときっと、綺麗だ。
ベッドに座り込んでいると、檻の外にいるコネシマが急に何かし始める。
…インカムをつけて、あーだこーだ文句を言っていたように見えたが、諦めたようにため息をついて俺の方を睨みつけた。
「俺はこれからここから離れる。…、んで、2人の看守が来る。」
『…』
「そいつらになんかしたら殺すぞ」
『……なんもせぇへんよ。』
チッと彼は舌打ちして、地下牢から歩いて行く。…、ひとりでカーテンの隙間からもれる光を見つめてた。
すると、上から2人が降りてくる。
「…あー、うす。…ショッピです。」
気だるげにこちらを見つめた彼の目は、アメジストみたいな綺麗な目だった。
「チーノと申します!!」
非対称的に笑顔に挨拶してくる彼。
『…死刑囚の犯罪者に名前教えてええん?』
ニヤリとそう笑うと彼らは、面倒くさそうに目を細めた。
「なにか出来るんですか?…牢屋に閉じ込められてるくせに名前聞いた程度で」
『いーえ、何も。あ、そーや……看守さんたちや。』
『雨の予報はいつや?』
「……雨か?雨は、……1週間後とかやったかな、…。」
『…そぉ、…ありがとーな。看守さん』
あと1週間で死ねるんだ。…もう少し、もう少し耐えれば…
お前らに会えるんだ。
昔の人間は良く、輪廻転生と言うものを信じたらしい。…、俺の友人は、俺に向かって言ってくれたんだ。
何回輪廻転生しても、お前を見つけたるから
…、全部嘘だったけれど。
……、閉じ込められたその世界は、きっとどんな世界よりも暗くてジメジメしてて、…死にたくなる。
こんな世界なら、生きていたくない。
お前らの元に戻りたい。…帰して、…俺を
アイツらの元に…、お願いだから。
『…帰して』
「は、?返して?何言ってるんすか?」
『…、ぁー、…何でもないわ。看守さんもそろそろご飯やろ?それに昼からずっと見守ってくれとるし…、看守さんたちも帰りぃ?』
…外を見ると真っ暗。
「……そうっすね。帰ります。…なにか怪しい行動したら他の人達くるんで覚悟しといてください。」
『はいはーい、分かっとうよ。』
そう言うと、ショッピくんはめんどくさいように俺を睨みつけて、チーノを連れて歩いていく。…その顔は、その目は、……
何一つも変わってない、…そうやって
”興味のない”人を威圧するところも…、
”どうでもいい人”に媚びを売り続けるのも
『…なんも、…変わってない。』
彼らが変わらなくて、本当に良かった。
『…最後の晩餐何にするかなぁ……、』
今日から考えるのはきっとそれだけになりそうだ。
「起きろ」
そう威圧的な声で起こされ、目を擦ると目の前には銀髪の綺麗な人が居た。
長く伸びている髪は、風になびいている
「……ようやく起きましたね。…いやぁー、ロボロさんに怒られるとこやった…、」
『…、看守さん、ひとりで来たん?』
「看守さん?…あぁ、まぁ…看守?ですもんね。…一応2人のはずなんですけど…、相手の方が来る途中にコーヒーこぼして…、」
『…、そうなんすね〜。』
「…あぁ、ごめんよ。今来たから囚人にまでその話しない出もらいたいですねぇー」
ミルクティーの髪色に、眼のない白色…、
周りには蝶が飛んでいそうな人だった。
『…コーヒーこぼした人ってこの人なん?』
「あ”ッ、ちょ、囚人さんまで言わないでくださいよ!」
『…んは、w…、コーヒーこぼしたんや』
本当に変わらない。
『…おにーさん。…お兄さんはさ、テセウスの船って…どう思っとる?』
銀髪の彼は、何の話だ?と首を傾げていた。
コーヒーをこぼしたと笑われていた彼は、少し真剣な目付きで俺を見た。
「…それって、何ですか?テセウス、?」
『…心理実験やで。』
「…テセウスの船って言うものがありました。」
彼は、そのまま続ける。それを語る彼は、何処か懐かしい顔だった。
「部品が壊れ、新しい部品を付けます。それを繰り返していくうち、元の船とは全く違う新しい部品だけのものが出来上がりました。けれど、見た目は一緒。部品が新しいものになっただけ。テセウスの船と名付けられた時の部品達が無くなった。…ただそれだけの船です。」
「さて、これをテセウスの船の言えますか?言えませんか?…って言うものですよね。」
「…はぇー、そんな難しい問題、…、 」
『……んで、看守さん達はどうなん?』
「…俺は、テセウスの船はテセウスの船って言えないと思います。やって、…全部部品は違うんでしょう?テセウスの船と名付けられた時の部品達はもう居ない。その部品達が全部揃ってのテセウスの船だと俺は思うんで!」
「…全く違う意見ですね。私は、テセウスの船はテセウスの船とそう言えると思います。だって、部品は違うけれど部品は新しいだけの全く一緒のものです。だったら、きっとテセウスの船と言えるでしょう?」
「ってか、囚人さんはなんでそう聞いてきたんですか?」
『…さぁ?…どうやろね』
大好きな人達やった。ずっと…愛してた。
だから、…寂しかったんだ。
『……心理実験で答えた奴でも、実際置きた所でその回答は変わるかもしれない。』
俺だってエミさんと同じ考えやったのに…。
「……、それって…貴方が変わってしまった事があったって言う意味ですか?」
『……人生誰しも意見が変わるなんて良くあることやから』
本当に気持ち悪い。
外の天気は、酷く晴れていた。太陽は俺を笑ってた。
『……』
『神様…早く、雨降らしてや。』
早く、楽にさせて
「…キミ、だいじょーぶ?」
夜目が覚めて、顔を上げると目の前に緑の瞳が見つめてた。
『…どうしたん、看守さん』
「侵入者が来てな、大丈夫か思って」
「侵入者と一緒に逃げられても困るし…、な?」
閉じてる目はこっちを見て、笑ってた。
「…オスマン、そんなに囚人に近づかない方がいいよ。殺されても困るだろ」
白い服の赤目の彼は俺を睨みつけていた。
『…殺さへんよ。もう絶対』
「…ふぅーん。いつか殺した事があるんだ」
「……どうして人を殺したかは分からないけれど、人を殺した奴は信じられない」
それをお前ら軍人が言うのか…、軍人のお前らが…人を殺すことを快楽としてるお前らが…、俺が…、
『…、別に信じひんくてええよ。俺だって同じやから』
人はこんなに変わってしまうのか。
「…キミは、人を殺したことがある?」
『…あぁ。…』
「…なんで? 」
『………、大嫌いやったから。』
だから、こんなループに俺は苦しめられている。
_何回輪廻転生した所で運命は変わらない_
そう気づいてしまったから。
どうせなら、…どうせなら
__お前らが殺して
『…なんでお前が泣いとんの。』
大嫌いだったと言った瞬間、目を見開いて…赤い瞳を腫らした。
「ぃ、や…ッ…、違う…、なんか、涙出てきて…、」
『”…、泣くなや。げどちゃん”』
「”ゾム”?」
誰にも行ってないのに。だれも、…俺のなまえなんてしらないはずなのに、…、
『ッ…!??…は、?…、なん、ッ…』
口から空気しか出てこない、声なんてでない
助けて欲しかった。やめて欲しかった
記憶なんて、戻ったら苦しいだけだから
「…、げどちゃん。囚人に情沸かせないで」
オスマンは、何もかもわかってる顔して、…いつもみたいに目を細めてた。
…絶対、どうなるかなんて分かってるから。
『…俺さ、もう眠いねん。やから、もうええ?』
「…、うん、そうだね。」
「じゃ、ひとらんも行くで。
”…ごめんね。ゾム”」
聞こえないぐらいの声で、俺に言われた。言わないで欲しい。
謝罪の言葉なんて…要らないのに。
『…明日は、大先生が作ったうどん食いたいな…。』
牢屋の前の監視カメラは、ゆっくりと俺を捉えていた。
「_____、どうしたん?」
「…いやぁ、此奴の動きが怪しくてだな」
「…、__、殺してくれ。」
「は、ッ…?なん、ッ……」
「苦しみながら死にたくないねんッ!!!」
「_____ッ…!!?」
手は真っ赤で、目の前には皆倒れてて
「ころしたくなかったのに」
死んで欲しくなかったのに
どうして
『ッ…は、ッ…、ぅ、…』
頭が痛く、ベッドに倒れ込む。目が覚めると兄さんが優しくこちらを見ていた。
紫は心配そうな眼差しで見つめてた。
「…大丈夫か?」
『…ぁ、…だいじょぶ、…』
ポンッと優しく頭を撫でられる。
「…医者呼んでくるから、待っとけ。」
…昔も、こうやって…悪夢を見た時は助けてくれた。
優しいにいさん。
『…』
目を閉じる。
「…何が痛い?苦しい?」
次目を開けた時、水色の瞳は心配げだった
『…メンタル的な問題やから、大丈夫。 』
「 …そっか。…でも心配だから言ってね。囚人さん 」
その目はとっても優しいままだった。大好きだった。
『…ありがとう。…看守さん』
でも、未だに看守と囚人という立場だった。
「…あぁ、そうだ君、好きな食べ物ある?」
『…食べ物……、うどんが好きや』
「なら、うどん持ってくるから。その間寝ときな」
頭を優しく撫でられて、目を閉じる。
ずっと、あのまんまが続けば良かったのに
いい匂いで目が覚めた。
囚人服は、少し汚れていて空気も少しくすんでいた。
『…うどん、?』
「…うん。君が少し体調悪そうやったし昨日独り言言ってるの聞いたからあげよう思ってん。」
青色の髪はあかりに照らされてた。こちらを向いて優しく笑いかけてくれる。
「…、…んで、それの付き添いや」
桃色の声がでかい彼は布面で顔が見えない。
『…おいしい。』
1口食べると、とてもおいしい味がする。
懐かしい…そんな味。
『…ありがとう。…、』
あの時だって、…そうだった。…体調崩した俺に優しくしてくれたのはロボロと大先生だった。
『…看守さんたちはさ、何時俺殺されるか知っとる?』
「…えっ、…あー、ぅーん。」
大先生はびっくりしてる表情だった。
「あぁ、知っとるで。」
それに対して、全然驚きもせずにロボロは反応を返してくる。
「ぇ、えぇの?これ、…言ったら駄目な奴やないの?」
「…こいつ、死にたいらしいしええやろ。」
『…明日は、雨やろ。明日俺は殺されるんか』
「……なんや、知ってたんか」
『………予想は尽くし、ずっと雨の日を探してたから…、殺して貰えるなら本望や』
「…なんでそんなに死にたいの?」
青色の目は、こちらを見ていた。
『…助ける為やから。』
何回輪廻転生したって、お前たちを助ける。
その為に、今生きていたから。
「…起きろ。」
酷い低い声がこちらを見つめてた。冷たかった。
…雨は、降っていた。
『…、赤い目、綺麗やな。』
雨は、もううるさい程降っていた。
「……君は、なんで助けたいんだ?何を助けたい?」
赤い目と、金髪は凄く似合っていた。
『…なんで知っとんの?』
あぁ、…いや、…知ってるさ。わかってる。
どうせあいつらやろ?
「うちの情報員は記憶力が良くてな、伝えてくれたさ」
『……俺には仲間がおってん』
その目はきっと遠い目だった。…あの時の思い出は…ずっと心に刻まれてる。
『…大好きやねんな…、その仲間が……、』
雨の音は酷く五月蝿く鳴り響いていた。
静かに…息を吐く。
『…俺のせいで、俺のせいで死んだ仲間がッ!!!…生きて、…生き返ってくれるなら俺は死ねる。…仲間の為に…死ねるんや』
「…なんで仲間は死んでしまったんや…」
初めて赤色は口を開く。睨みつけていた彼は、泣きそうな顔で…何処か俺を心配げに見つめながらそういった。
『…、俺の仲間は…、』
仲間…は、……
実験体、それはずっと冷たい部屋に残されてた。その実験施設は、その国の違反行為…。
その施設は、軍に無くされた。
入ってくる軍人の足音、…2人の青年と目が合う。綺麗な人だと思った。
「…君、名前をなんと言う?」
名前は無かった。…黄緑の目に、光も無くただ見つめてるだけ。
『……名前は無い。お前らも捕えられる。はやく逃げろよ。』
…ただそれだけの出会いだった。
俺を見てくれた。優しく話しかけてくれた。
俺の”仲間”ただそれだけ。
「ゾム、…ぞーむッ!!」
頭を叩かれて、目を開けるとそこは前の世界。
『…なんやねん、寝てたのに…。』
桃色の目が合う。
「あ、ロボロとゾムやん。」
すると後ろから見慣れた黄色が近づいてくる。
『手に持っとんのなんやねんw』
「えー、ハンバーガーマジカルグミ入り。美味そうやない?」
『バグってんのか頭…、www』
「まずマジカルグミってなんやねんw」
虹色のグミがハンバーガーに入ってるのを笑顔で食ってる。…お前は何者やねん。
絶対不味いやろ
「俺死んでもハンバーガー食いたいねんな」
『いや、なんでやねんwww、死んでまでハンバーガー食いたいん?』
「いや、ハンバーガーお前が1番食べとるやろ」
「お前やったら鍋ーとか言うと思ったんやけど、鍋食わんのか」
『シャオロン闇鍋に色んなの入れるからな…。』
「そうやで、前回俺生ハム入れたからな…って…お前らには言われたくないわ」
「カニとタルトは無いわww、」
『なんでやねん!!!タルト美味かったやろが!!』
「味覚バグっとんのか!!?」
「ってか、カニはええやろ!ダシ出てて」
『あれのせいで美味しいの全部不味くなったやろ!!』
「タルトに言われた無い!!」
「お前ら2人の黙ってろや!!」
「「生ハムにも言われたないわ!!!」」
談話室でそう騒いでいると、一般兵の悲鳴が聞こえた。一気に空気が変わる。
「なんや、内ゲバか?」
『…コネシマとショッピくんかな。』
「それにしては血の匂い強ないか…。…スパイか? 」
幹部の耳についたインカムは、一気に赤く光る。
ut<幹部連絡、一般兵用食堂にて内乱発生。至急近くの幹部は向かって欲しい。>
ut<今、反応的にシャオ、ロボ、ゾムが近いわ行ける?>
『”了解、直ぐ行く” 』
ut<頼むわ。>
3人で走り出し、食堂にて向かうと1人の兵士が暴れていた。
「がぁぁぁッ!!うわ、ぁぁぁ!!しね!!しねぇぇぇ!! 」
「…うーわ、まじか。」
そいつは、暴れ回っていて兵士は何人か倒れていた。血まみれ。…そいつは1人の兵士を掴んでいた。…、かわいそ
「取り敢えず落ち着けるか」
ロボロは、話す体制になりながら歩いてく。
俺は相手がロボロの方へと見ているのを確認したあと後ろ足でその兵士の方へと向かう。
シャオロンも援護に回ってくれるらしい。小型ナイフを取り出した。
「なんでこんなのやっとんの。…今なら間に合うからそのナイフ置いてや」
「ははは、www…ふざけるな、…、幹部だろ!?この国の犬だろ!!?俺を助けてくれるわけない!!!」
「助けたるから…ね?大丈夫やって」
時間稼ぎは十分だ。シャオロンに兵士を助けて貰って、俺は此奴を殺す。
足に勢いを付けて、殺そうと手を伸ばした。
そう、手を伸ばした。
バンッ、…似合わない銃声音が響く。
死体だと思い込んでいた、1つの身体が銃を持ち上げて、シャオロンの体に撃ち込んでいた
「グッ…、ぅ、ッ…げほ、ッ…、」
シャオロンは少し、ニヤケていたようにも見えた。…なんで、…どうして、
伸ばした手は空を切った。
『しゃおろ、………』
その言葉をいい終わらないうちに、そいつらは銃を持ってこちらに向けた。
「…まじか。」
俺はシャオロンの持ってたシャベルを借りる。
『…ロボロ、シャオロンの事頼んだわ。』
「……ゾム、頼んだ。シャオロンの事は任せぇ…、」
ロボロは、こいつらと距離が取れないことを理解しシャオロンの止血に向かった。
…、俺は、こいつらを殺すだけ。
一般兵1人の命くらい、いいじゃないか。
こいつらは幹部に手を上げた。…やから、許されるよな。
勢いを付けて、1人の頭へシャベルをぶつける。そいつは頭を抑えながら、こちらをギッと睨みつけた。
『…何やねん、人を睨みつけんなって』
『……後でいっぱいお話聞くから今は寝とけって…ッな!!?』
2人の兵士を半殺しにする。…、どちらの兵士も気絶してしまっているようだった。
…………、
人間は、短時間に体内中30%程の血液を失うと生命に危険が起きるらしい。
撃たれたのは、鳩尾。戦闘中の俺は気づいてなかったけど…ロボロだって負傷してた。
銃弾は2発だったらしい。1発はロボロの肩に当たっていた。
彼奴はそういうの隠すの得意やから、…やから、…シャオロンを医務室に連れていかなかった。ロボロは、端でどうにかしようとした。
…けどダメだった。
俺やってわかってた。撃たれどころが悪いのも、真っ白な程に血の気が抜けて言ってるのも…、
気づいていたって、それが仲間のものだから。言いたくなかった。知らないふりをした。…、
俺は本当にずるいやつやから。
戦闘が終わって、シャオロンの近くによった時もうシャオロンは45%は無くなっていたと思う。
シャオロンを出来るだけゆっくりと運ぶ。インカムで必死にはやく助けてと叫びながら。
…シャオロンは、ずっと集中治療室に籠ることになった。これから生きていけるかは分からない。
最初はシャオロンだった。次は…誰だっけ。
重い空気の会議室、全員が怒りと憎悪…そして憎しみを持ちながら話し合っている。
「…拷問した結果、あの兵士達は家族をa国に殺すと脅されあの悲惨な現状を繰り出したようです。」
ショッピくんは、出来るだけ表情に出さないように拳を握りしめていた。
「…a国か。…鬱、a国の情報は」
グルッペンだってそうだった。…大事な仲間があんなふうにされて黙ってる奴は居ない。
「兵士の数はおよそ220.5万人程、軍事、政治と国の権力を握ってるのは総統ただ一人。彼奴らは卑劣の極。ほかの国にも俺たちと同じような目に合わせ、向かってきた奴らを返り討ちし、自分たちの領土にする。」
「領土にされた国々は忠誠心が薄い、そいつらの手を取ってやればこっちの国にも勝算がある。 」
皆が淡々と資料を読み漁り、人の話を聞きつつ真剣に行っていく。
「…任務を言い渡す。コネシマ、ゾム。」
「ん、なんや。」
「お前らには、偵察に行ってもらう。良いな?」
『…ハイル・グルッペン』
会議が終わって、俺は直ぐに行く場所があった。…幹部は近寄らないところ。
知りたくないと、近寄らない…集中治療室。
ピッ、ピッ、ピッと大きな音が鳴っている。
集中治療室のシャオロン、…数値は下がる一方だった。
『…死なんでな。シャオロン』
涼しい風が吹いていた。その日は、空も曇っていて…不吉な日だった。
崖の下にあるその基地を眺めながら、メモを撮っていく。何処に看守がいるのか、看守は何分交代か…など。
シッマは、ずっと黙っていて俺の方へと視線を向けて何かを伝えようと口を開けては閉じていた。
『…どうしたん、お前。』
「…やっと…気づいてん…、あぁ……そういう事やってんな…俺、…そっか」
『…は、?…やから、しっま、?』
「……ゾム、落ち着いて聞いてほしいねん」
「俺、今日死ぬかもしれへん。」
『………は??』
風一気に舞い上がる、コネシマの瞳孔の中の俺は目を見き驚いていた。
『待ってや、ッ…なんで、急に』
「…いや、そういう運命やねん。…、いやぁー、最後に鮭食いたかったなぁ…、」
『…なんッ、…』
「ゾムも最後の晩餐は決めといた方がええ」
「…自分が望む日に、死ねるように」
『は、…、』
強風が吹き上げる。シッマはきっと気づいていたらしい、こちらを見つめるスナイパーに。
俺に向かって撃たれた銃弾をシッマは庇ってくれる。その撃たれた瞬間の表情を
庇ってくれた時の表情を俺は忘れることができないだろう。
なんでそんなに、…ありがとうと感謝する顔をしてるの?
風に任せて、そのシッマの体は落ちていく。
『シッマッ!!!』
また手を伸ばしたけれどその手は届かなかった。
その体も回収出来なかった。静かな会議室。
冷たい目で俺は見られていた。
『…』
「……、なんで、…なんであの人が死んでッ、あなたは無傷なんですか!!! 」
肩に手を置かれて、何回も揺さぶられて
何でと聞かれたって俺だって分からんよ。
『…ごめん。』
「………、しょっぴ、やめよ。ゾムさん責めたってゾムさんのせいちゃうから 」
「おれ、ッ…おれは、ッ!!!」
「…もうええ、…あの人が死んだかどうか見に行ってくるッ!!」
「おい待てやショッピッ!!!」
『指示が出るまで行ったらあかん!!お前らまで死ぬで』
「…死んだってええ。」
後輩に嫌われたのは初めてだった。
愛を与えてくれた彼奴らを…俺は殺したんだ。
見殺しにした。
次はショッピとチーノが死んだ。
コネシマの死体を探しに行ったそうだ。雨で足場も悪くて…、そんな場所。
ショッピは、コネシマの後輩。大切な兄のようなもの。…失った苦しみは到底想像出来ないものばかりだろう。
だから、死体だけでもと探しに行った。
…俺は、その姿を見てた。…けど、止めることが出来なかった。
チーノはそんなショッピを止めようとした。
…一般兵たち何百人も総出で幹部の死体を持って帰ってきてくれた。
……、みんな、冷たかった。
たすけられなかった。
どんどん弱っていく俺が目に見えてわかったんだろう。レパとえみさんが俺の所に来てくれた。
俺は、ずっと…、だいすきだった。
仲間が、…シャオロンが、コネシマが、…ショッピが、チーノが…、
だいすきだった。
幹部を何人も失った悲しみで、俺たちは1度戦争をやめにすることにした。
相手が攻めてくるようなら、こちらも応戦はするがそれ以外は攻撃をしない。
そう会議で決まった。
「…グルッぺン、どうしたん?」
そんな時、グルッペンは絶妙な顔でそれを見つめていた。
それはひとつの資料。
「…最近此奴の動きが怪しくてだな…」
それはB国。…、a国と同盟を結んでいるそんな国。
「あぁ、それなら自分が見に行ってきますよ」
エミさんが手を挙げ、そう発言する。
「…エミさん辞めといた方がええんやないか」
それに対して、トントンは目を細めながら資料をパサパサと鳴らした。
「…だったら、俺が行きます。」
「レパ!!?…、ええの?グルちゃん。」
「……現状、沢山の仲間が亡くなっている。それでも行くのか。」
「生きて帰ると、約束できるか」
「……えぇ、貴方の為なら。」
「…そうだな、ゾムも行けば良いじゃないか」
『…これ以上、俺は人死ぬ所見たない。人が死んで、俺だけ生き残るのは…もう嫌やねん』
「……ゾム、…人は死ぬ時に死ぬ。それはお前のせいじゃないさ」
「…、大丈夫。彼らは死なない。」
『……、俺は言ったからな…。』
彼らを信じることにした。
綺麗な街だった。けれど、それは偽りでしか無かった。何処もかしこも監視カメラだらけ。
『…大丈夫かよ、…』
こんな街で生活していたら、頭がおかしくなりそうだ。
「…、ゾムさん。ごめんなさい」
『は?』
ぐちゃり、何かが潰れた音が響いた。
後ろで囚われていたのは、レパとエミさんだった。
テセウスの船。
沼男。
テレポーテーションの思考実験
トロッコ問題
全て、心理実験である。…貴方は何を考えて、貴方はどう行動しますか。
彼らにテセウスの船を聞いたのは、…
今の我々軍がそれに当てはまると思ったから、…だから、おれは
ぐちゃり、ぐちゃり…目の前の出来事は理解したくない。
ただそれは壊れていた。
手を伸ばしても、それは届かない。
最後見えた表情は、幸せそうで
それは待ち望まれていた”死”だったのかもしれない。
どうして自分は、死なないのか。
どうして、…彼奴らは…、…満足そうに死んでいくのか…。
愛した彼奴らは…どうして、………、
えみさんとレパを運ぶ。…昔もえみさんをこうやって運ぶことがあったっけ。
あの時は、エミさん足怪我したんだっけなぁ…。頑張って軍まで帰ったなぁ…、
あの時のあれでエミさんとは仲良くなれたんよなぁ…。
レパは、彼奴が一般兵だった時に運んだっけなぁ…。幹部全員で一般兵背負って山超えるみたいな訓練やったっけ…、
俺とトントンでいい勝負やってんなぁ…。
軍に着いて、しんぺいさんに彼らを渡す。
その表情は、酷く悔やんでいた。そらそうだ何人も仲間を失っているのだから
「ぞむ、…大丈夫?」
げどちゃんは、俺の目を見て…そういった。
『…俺は大丈夫やで。… 』
「………そっか。…今度大ちゃんにうどん作ってもらおうね…。」
頭を撫でられる。
『…、なぁ、げどちゃん…。俺は何時まで人が死ぬのを見ればええ』
「…ぇ」
『…シャオロンは…まだ死んでない……けどいつ死ぬか分からへんわけやん 』
『…それにあの時俺が見てれば…、ちゃんと気づけてれば…、シッマやってそうや!!』
『…彼奴が死ななきゃ…、ショッピやってちーのやって死ななかった!!…見殺しにしたんや…おれは…、レパもエミさんも、俺が1番近くにいたのに…あんな…あんな死に方!!!』
『…ぜんぶ、おれのせい 』
『次は誰になるか…分からんねん…、げどちゃんを殺してしまうかもしれへんよ』
「…ゾムのせいじゃない。大丈夫。大丈夫。もし、ゾムといる時俺が死んだとしても俺はゾムを恨まないよ。」
「…ゾムは、…ほんとうに偉いね。」
『…げどちゃぁ、…』
「あれー、…もう、ゾム。泣いちゃってんの?ほら、目擦らない…、赤くなっちゃうやんか」
『マンちゃん…、』
「俺に似とる目が台無しやでぇ〜?」
そう言ってるマンちゃんも目が赤くて…くまも酷くて
『……ごめん。俺のせいで、』
「…軍人になったら、覚悟しなきゃいけないねん。後輩も、先輩も…同期も皆死んで行くんやって」
「…任務で死ぬことが出来るなら、それは軍人として本望や。…お前のせいやない」
そう言ってくれたマンちゃんも、げどちゃんも…外交やってる最中で死んだ。
『いややッ…もう、俺は嫌や!!!グルッペン!!…、無理やッ…ごめん、 』
「…ゾム。…、 」
泣き叫ぶ俺は、ただひとりで軍基地の廊下で泣き声を反響させていた。
「ぞむ。…ごめんな。ずっとひとりでこんな思いさせて」
『にいさんの…せいやない。… 』
兄さんは、軍の緊急事態のために帰ってきた。紫色のマフラーを風にナビかせながら、頭を撫でられた。
「…、ぞむ。すくえなくてごめんね」
『ぺしん、…ペ神は頑張ったんや…。ちがう、俺がもっと…周り見れてたら…あいつらは救えたかもしれへんねん。…おれのせいやねん』
『……、なんで、兄さんもぺ神も…俺を愛してくれるの?』
『おれ、…おれを、好きでいてくれるの?…みんなをおれは、…みごろしにしたのに 』
「…しゃあないやんかお前は、お前は何も悪いことはしとらんよ。」
やっぱり、こいつらは優しいんや。頭を撫で続けてくれたこいつらも、軍人だから
すぐ死んじゃうかもしれないのに
予想は的中
軍人の彼らは、自爆テロを起こされてそのまま…、おれの知らないところで
手を伸ばしても、手を伸ばしても…触れることは出来なかった。
また、死んじゃったんだ。
シャオロンが起きた。
『…しゃお、…ろん、ッ…、』
半年ぶりの目覚めだった、ロボロも鬱も、トントンもグルッペンも…もちろん、俺も喜んだ
「……みんな、…しんだんか」
何人も居ない俺らを見てシャオロンが口にしたのはそれだった。
「……あぁ、…軍人らしい最後だった」
シャオロンは、窓の方を見つめてこちらを見てから
「…それなら、そのまま死んでたかったわ」
『…へ、…、?』
「…あー、また失敗した……。…軍人としても、人間としても…もう無理やんか」
「俺が打たれたのは、腹や。それに腕も…軍人として撃たれた瞬間にしねた方が良かったわ…、ほんま」
シャオロンは淡々と失敗したと語っていた。ロボロはそんなシャオロンを見て殴り掛かるかの勢いで詰め寄っていった
「…何を偉そうに…ッ!!!何が失敗したや!!?俺らはお前が生きてるだけで嬉しいねん!それを死ねた方が良かった!!? 」
「馬鹿やろ!!?…、おれが、どんな思いでお前を…ッ!」
「…おれの事思ってるんやったら、ころしてくれよ。」
「…みんな死んどる世界で生きてた所で…」
そんなシャオロンに呆れてロボロは出ていく。それを見ていたグルッペンは、…何も言うこともなく仕事をしに帰っていった。
そんな状況を見たトントンは口を開く、
「…どれだけお前は希望の光とされてたか知らんかったやろ。」
「勝手に…俺を希望の光とするなや。」
「……変わったなお前」
「…お前らもや。勝手に決めつけるな俺を」
それに怒ったトントンは、扉を思いっきり叩きつけた。
『あ、…トントンッ!!』
トントンを追いかけるために、ついて行った。
それが間違いだったのか、
『トントン待って!!…あんな言い方駄目やって』
「…そぉやなぁ、…あんな言い方駄目やったなぁ…はは、w……何人も見殺しにしたお前にはんなこと言われたくなかったけどなぁ」
『…と、…とんと、』
「…ぁ、待って……俺、今なんて」
『…ごめん、…トントン。』
「あ、ぞむッ!!…ごめ、ッ…、」
俺は、そんなトントンの言葉を聞かないでただ嫌で病室に戻って行った。
病室に戻った時には、病室の扉は開かなかった。
『は、…ッぁ、?…なん、ッ…、』
ダンダンッと扉を開けようとはするが、扉の隙間は全て密封されていた。
『は、?、 』
「…うつ、」
「…ん?なぁに、…」
「…ごめんな。最後まで俺、ダメなやつで」
「…んーん、そんなことない。シャオちゃんはずっといい子やったよ。」
扉越しに聞こえる声。…さいご、?何を言ってるんだ。
まって、…待って、…、嫌な事を考えてしまう。
走っていって、隣の部屋に入り込む。窓を開けて、反対側の窓に飛び移る。
まって、
ほんとうに、やめて、
まだ、しんでほしくないから。やめて
『シャオロン!!!!鬱ッ!!!!』
体当たりで窓を割る…。そこは一酸化炭素が充満しているようだった。
シャオロンは、静かに眠るように死んでいた。ピンクの肌、痛いげなその死体。
『…なんで、…なんでッ!!!…』
「…なんで、途中で開けたんや。…失敗したやんけ、…ふざけるなッ!!!!」
『…なん、ッ…で、 』
「…直ぐに死んじゃうようなら、…もう俺の手で殺してあげたかった…。」
「…ぼくだって、しにたかったのに」
「耐えられないんやッ!!人が死んでくのに!!」
「…、なぁゾム、殺してくれ。」
その手には、ナイフがあった。助けて欲しいとそういう風にこちらを向いて
『は、ッ…?なん、ッ……』
なんでと疑問の俺に、ただ鬱は泣きながら怒っていた。
「苦しみながら死にたくないねんッ!!!」
その肌は、もうピンクっぽくて、…
そういえば一酸化炭素中毒での後遺症は重いんだったか。…それなら、殺してしまった方が楽か
ナイフを持って、心臓に向かってそのナイフを一突き。
苦しまないように殺してあげる。
「ゾムッ…!!?」
前を向くと、そこにはロボロが焦った表情で立っていた。
『ろぼろ。』
『ロボロも、…死にたい?』
ぐちゃり、ぐちゃり、ぐちゃり。
ぐちゃり、ぐちゃり。ぐちゃり
気づいた時には周りは血だらけで
『あれ、…』
ロボロは倒れてた。
『おれ、…殺したんか…?おれが、?…』
「ぞ、…む、?」
「何してるんだ…、ッ!」
2人の目に移ってるのは2人を殺した俺。
3人の死体に囲まれてるおれ。
血だらけなおれ。
『……もう、ええか。』
ナイフを振り上げて、そのまま。
次、目を覚ました時自分はループしていた。同じ時期に俺が軍に入って、幹部になって、皆と話して、笑って…その毎日。
けど何回やったってみんなは死んでいく。
何回輪廻転生して、繰り返したとしても運命は変わることが無かった。
そこで気づいたんだ。
彼奴らが死ぬ時に、笑ったのはなんでか。
自分が死ねば、ループから外れることが出来る。彼奴らだってループしてたんだ。
死んだら、ループを外れることが出来て彼奴らの元にきっと行けるはず。
だから、死のうと思う。…どうせなら、お前らの手で殺してくれ…
ただ、その前に俺が最初に入った時に起こった軍人達の大量の殺人があった。それを防ごうと思う。
どんな状況にあろうと、軍人は命令に背いては行けない。…それを破れば、きっと殺してくれるだろう。
きっと、スパイだと思って殺してくれる。
だから、俺は……
おれの仲間は
『…ぜんぶ、俺が殺しちゃったんや。』
だから、償いたい。
「……そうか。…、自分で殺したのか」
『あぁ、殺した。ちゃんと殺してやった』
「……裁かれるべき人間であることを理解しているな」
『…あぁ、』
「今回城殿が行ったのは、軍の裏切り行為である。身勝手な行動により多くの命が危険に晒された。」
「それにより、明日処刑することが確定した。良いな?」
『……、えぇ』
どんなにそれが嬉しいことか
「さて、貴様はどんな晩餐を望む?」
『………、鬱っていうのおったよな』
「あぁ、居るが」
『そいつの作ったうどんが食べたいねん』
「……食べたことあるのか?」
『……1回な………食べたいねん』
「…分かった。手配しよう。それにしても最後の飯が鬱のとは…、」
『………、もう話すことは無いやろ?』
「…まぁ、それもそうか…。だが、貴様みたいに落ち着いてる死刑囚は初めて見たのでな」
『…あぁ、…』
そら、何回も死んどるからな…まぁ、今日が最後だと思うけれど…、
「…さて、死ぬ前に土産話や。何か聞きたいことでもあるか?」
『……仲間に殺されたら、お前はどう思う?』
「…さぁな、……だが、まぁ…殺したのが仲間なら望んで殺されよう。」
『…そぉか。…、』
「グルさんそろそろ、夕食の時間や…鬱に用意させるんやったらさせへんと」
「…それもそうか、…。城殿との話楽しかった。最後の晴れ舞台、期待しているぞ」
『…おぉ、』
2人は歩いていく。目の前から、離れていく
『……望んで殺される…か。』
本当にそうやったんかなぁ…やったら、…嬉しいなぁ…、…なぁ、グルッペン。
もう、名前を呼んでくれないグルッペン。
大好きな…仲間たち。
「はーい、どーもぉ、…ご飯やで」
『…ぇ、…あぁ、ありがとさん』
「それにしても僕の作ったうどんで良かったん?最後くらい高級シェフとかに作らせても…」
『…別に、あんたのでもええやろ』
「そらそうやけど…」
あんたのご飯食えるんやったら、別になんやってええねん。
高級シェフなんか比じゃないくらい美味しいご飯を作れるのはお前だから。
これも、最後になるのか…、
「…そんじゃ、寝るとええよ。あと何十時間しかない人生楽しみな」
『…ありがとうな。』
「ほら、起きぃや」
目を開けると金色の目と目が合う。
綺麗な黄色。
『…、なんや』
「なんやって…、お前の事起こしにきてん」
「ほら、牧師さんとこ行くで。」
『牧師さんって、…なんでや、』
「はぁぁ?知らんわ。…なんやっけ死ぬ前に身を清めるだとかなんやとか」
『…そぉか、 』
「起きたんなら、行くで」
手に手錠をかせられて、そのまま牢屋から出ていく。廊下を歩いてそのまま真っ直ぐ行くと綺麗なステンドグラスのある場所につく
此処は教会か…。
「…来たんですね。」
牧師の格好したオスマン。オスマンはこちらを向いて、ゆっくりと笑った。
「んじゃオスマン、外いるから頼んだわ」
「はい、分かりました。」
そういえばそうだった。牧師モードの時は敬語で、常に笑っていたっけ。
『…何すんねん』
「……悔いるべき事をひとつ残さず話しなさい」
『……俺が此処に存在していること全てやろ』
『俺が居なきゃ防げた事もあったのに……』
「…そぉですか。…では、貴方は自らの罪を認めることが出来ました。そして、今から貴方は生まれ変わるのです。 」
「では、処刑台へと向かいましょう。」
連れてかれて、手を引かれる。
処刑台まで、歩いてく。その間オスマンは何も喋らない。
『…お願いしてもええ?』
「…なんでしょう。」
『こっち向いて、…笑って欲しいねん』
そう言うとオスマンは、ゆっくりと困ったように笑って涙を流した。
「……記憶があるって言ったら、どうする?」
『…記憶…あるんか、…』
「……ゾム。…、ごめんな。助けられなくて」
『…んーん、マンちゃんが記憶あるって分かっただけで良かった…。ありがとうな、マンちゃん、 』
手を引かれて、処刑台まで乗る。
幹部がほぼ居て、グルッペンもこちらを向いてニヤリと笑っていた。
処刑の時間は、午後2時。教会の鐘がなる時間だ
『…大好きやった。』
『……マンちゃんしか言えへんからさ…、仲間として、本当にさ』
処刑台に首を通そうとした時、いきなり警告音が鳴り響く。
「…はぁぁ?こんな時に敵かぁぁ??」
「ん、待ってな?ちょい見とくわ」
「…あー、一般兵たちの食堂で内乱起こしとるわぁ、…」
大先生はそう言うとインカムを使って話し始める、
「幹部連絡、一般兵用食堂にて内乱発生。至急近くの幹部は向かって欲しい」
『…っ、は、?』
「取り敢えず俺とロボロで行くわ〜!!」
シャオロンはそう言って笑った。…辞めてくれ
また、…あん時の事がおきるんちゃうか
『……なぁ、待ってくれへんか』
「…はぁ?囚人がなんやねん」
また、シャオロンが死んじゃうんか
『………俺も行かせて欲しいねん。』
「…はぁ、??囚人がどうしてやねん。」
『……、駄目か。』
そう言うとオスマンとひとらんが前に立ちこちらに目を向けて笑った。
「そこの囚人を行かせて上げてくれないかな?」
「……ほぉ、ひとらん。それはどうしてだ?」
「……こいつはさ、昔から仲良しなんだよ…。だから、…信じてやって」
「でも、囚人やんけ」
「……囚人だろうと1回だけ信じてくれへん?」
「オスマンまで、…なんでや、そんなにこの囚人が好きなんか」
「……囚人、裏切らないと言えるか?」
『…あぁ。 』
頭を下げると、笑ってくれる。
「ひとらん、縄を切ってやれ」
切ってくれると手を前に出すことが出来る。ゆっくりとグルッペンの前まで向かう。トントンやコネシマが剣を向けてくる。
けれど、そんなの関係なしに俺は頭を下げる。手を胸元において、声を大きくハッキリと…あの時のように
『偉大な心遣い感謝申し上げます。グルッペン・フューラー総統閣下、幹部オスマン様、ひとらんらん様。』
「……幹部しか知らへんやろ、そのポーズ、…なんで知って、」
赤色の瞳がこちらを向いて泣きそうな顔をした。…が、知らないふりをして俺はグルッペンに目を向けた。
「…行け。」
「……ひとらん、ゾムに剣貸してやって」
「ん、分かった。はいゾム」
『…ありがとう。げどちゃん』
そのまま走り出す。シャオロンとロボロとあの時のように
剣を借りた俺は、一気に距離を詰めて首をきる。
『……、死んでくれ。 』
あの時の嫌な思い出を無くしてと言うように。…お願いだから、誰も殺さずに死んでくれ。
くるり、くるりと回りながら、ナイフで彼をさした。
『…んはは、笑…』
前もこうやって、…出来たらよかったのに。
「処刑場近くにて、内乱発生、シャオロン、ロボロは戻ってこい!!」
…待て、今までそんなのなかったやん。
俺らがここで戦ってる時に内乱が発生した?
…俺がここにいることで、未来が変わった?
……、どういうことや。
「相手はあの時の首謀者や!!!はよ、捕まえろ!!」
…あの時の首謀者
『……ぁ、』
…俺が入った時にあった防大殺人を俺が防いだ。…その時に捕まった犯人がいた。
前回は俺が捕まえていなかったから、犯人はそのまま射殺され死んだが、今回おれはこいつを捕まえた。
だから、こいつは…
「おい、囚人動くなよ!!!お前ら一般兵!見守っとけ!!」
「はい!!!」
その返事を聞いたあと、シャオロンとロボロは外へと走ってく。
おれは取り押さえられ、そちら側に行くことが叶わない…、
『…、クソ、…ッ…』
彼奴は…、ヤバいやつなんや…やから、 …やから、
「……、ゾム」
声が聞こえて、顔を上げた。
『…ぇ、…ぐる、…』
その時の表情はとてもあほ面だっただろう。
「お前ら、一旦手離せ 」
そういう指示が出た瞬間、俺の周りから兵士が遠ざかる。
「……、ゾム。任務を言い渡す。」
『…ぇ、…なん、ッ…おれのなまえ』
どうして、
俺の名前を、…、
「…、お前は、ずっとゾムや。」
『……記憶戻ったんか、?』
「………あぁ、お前が俺の前で感謝してくれた時のを見てな」
『……ごめん、グルッペン』
『俺…お前のことッ!!!』
「……今に始まったことじゃないだろう」
…お前はそうやって許してるれるんか
「それに今のお前は、シャオロンも、ロボロも救ってくれた。……ゾム、任務を言い渡す」
俺の目を見て、ゆっくりとわらった。
『…、』
「幹部を救え、」
その声、その声におれは、救われた。
『ハイル・グルッペン』
…あぁ、懐かしい。……そう、この感じだ。
グルッペンに命令されたのが、俺に向かってその言葉を言うのが…、どれほど恋しかったか…。あぁ、
廊下を走っていき、処刑場の近くの窓を突き破り、落ちていく。
彼らが戦っているのがよく見える。
「…はぁ、ッ!!?彼奴なんや!!?」
トントンや、ショッピが戦っているのを見て、おれはゆっくりと敵の大将の頭に向かって銃口を向ける。
バンッ、バンッ、
ナイフを向けて、クルクルと回りながら周りの人間を倒していた。
「……」
ただ楽しい。
『んはははは笑笑』
陸にあげられた魚は、ぺちぺちと飛んでいた。とっても綺麗な魚。
けれどその魚は息をする事が出来なかった。
魚は、陸へと進むため足を作り肺呼吸を作り出した。
…あぁ、手を伸ばしているのに。
ただ愛していた。
「ゾム、ありがとう。…もう良いさ」
気づいた時には周りに敵は居なくて、メンバーがこちらを見てただびっくりしていた。
「敵は居ない。…もう仲間を亡くす必要も、仲間を自ら殺すことも…しなくていいんだ」
その声を聞いて、…俺は、…言いたいことが山ほど出てきてしまった、
もう死ぬ俺だけれど、最後くらい、我儘言ったって構わないだろう
『…総統様、発言宜しいでしょうか』
「…あぁ、構わない。」
この時だけ、仲間として居させて。
『……何が、大丈夫やねん』
震えた手が、ずっと下を向いていた。
『……なんで、死んだんや…お前ならだいじょぶやったやろ!!?』
「……お前、誰やねん。…なんで勝手に切れ始めて…、」
『シャオロン!!!…ちゃんと聞けよ。おれはゾムや!!!…お前らの大事な仲間の、…ぞむ。… 』
メンバーの中に緑色がハマる。綺麗な黄緑。目に見えるほど動揺する彼らも、
「ぁ、…ぞむ、…、?」
黄色の瞳にくるりと黄緑が宿る。…目を合わせなかった彼が、ゆっくりとこちらを向いた
シャオロンが泣きそうにこちらに手を伸ばした。目の周りを擦って、泣き出して、
そんなに擦ったら、目腫れちゃうよ。
なぁ、シャオロン。
『…コネシマ!!! 』
「ぁ、…ゾム。」
『何がおれは死ぬ!?…言われた側の気持ちも考えろよ。…ずっと、探しててんで?お前のこと』
『…シッマ。……なんで、…なんであん時死んだんや?…お前なら避けれたやろ…、』
泣きそうにゆっくり笑って、シッマは口を開けていた、
「……そうかもな。 」
そんな顔して欲しかったんじゃないのに
『…ショッピ、チーノ…ごめんなぁ、…いい先輩になれへんかった』
『……初めての後輩やってん。…、大好きな後輩…、人に嫌われたのも、仲間にあんな態度したのも…初めてで、…何にもできなかった。』
『…俺はお前らを見捨てたんや』
「ちがッ、…ごめんなさいッ、…おれが」
ショッピくんが珍しく無表情崩しとるなぁ…チーノはいつも通りぐちゃぐちゃやなぁ
『…ほら、泣かんといて…。』
「…ごめん、ぞむさん。…あんたのせいやないもんなぁ、ッ…、ごめん、ッ!!」
『ちーの、…ほら、顔上げて』
オレンジの瞳。…暖かい色で好きなんよなぁおれ
『…エーミールもさぁ、…レパも死なんって言うてくれてやんか…』
『…なんで死んでん、……』
息を飲む音が聞こえた。
『ぐちゃって、…潰れた時の音も、悲惨な姿も…全部おぼえとる。』
『そんな姿させへん為におれ居ったはずやねんけどなぁ…、怪我させて…死んじゃった』
「…ごめんなさい、…本当に、あなたを1人にさせるつもりはなかったのに」
『……、えみさん。』
落ち着いた彼の匂い。紅茶みたいなとってもいい匂い。…。
「…ぞむさん。おれずっと、ゾムさんに憧れてたんです」
「……、あなたが苦しんでるの知ってて…、あなたを助けてたくて…あの時立候補しました。…けれど、貴方に逆に苦しい思いをさせてしまった…、ごめんなさい」
『…れぱ。……、』
本当は分かってた。俺が力不足のせいで死んだことだって、……分かってた。
新人の彼に、こんな思いをさせてたのか、
やっぱり、先輩失格やなぁ…
『……、だいじょぶやって、…そうお前らは言ってくれたけれど…しんじゃったんやなぁ』
下唇を必死に噛んで、涙を耐えてるひとらん。
「…ごめん。…ごめん、ぞむ。…ちがうんだ」
…泣いちゃってるやんかぁ、…泣いてて欲しい訳ちゃうねんで、…、ひとらん。
『…記憶あったげどちゃんも、マンちゃんも…俺の事救おうとしてくれたよなぁ…、、…ありがとう。』
「…ぞむ、……ぞむ、ッ…、」
『…なんや、マンちゃんまで泣いてるやん』
俺と似ているエメラルド。目から落ちる大粒の涙。…いつも俺になくなって言ってたのに立場逆転やなぁ…、
「…、軍人として…死なせてくれてッありがとう。」
所々震える声も、とっても綺麗。
『……まんちゃん軍人として死ねることは本望なんやろ?』
『…なんやったら、笑って…、』
笑ってる顔が1番あうよ、…マンちゃんは
『……、にいさん。…ぺしん。』
『自爆…テロやったなぁ、…、ごめん。1番痛いやんか…、たすけてやれへんかった』
『遺体も見つけることできひんかったッ!!』
『…ごめん、…ごめん、…、』
「ぞむ、…ゾムは悪くない。だいじょぶ…、ごめんね。」
水色はゆっくりとこちらに足を運ぶ。
「お前はしっかりと先輩出来てたよ。」
紫色も目を見てくれる。甘えさせてくれる。俺の心の弱さを見てくれている。
『…ごめん、…ごめん。』
このふたりの安心感が好きだった。優しい安心感。
『……、なんで、自殺なんてしようとしたん、…、?…だいせんせ』
「…ッ、 」
ずっと泣いていた彼が、初めて…、声を発した。
「ぞむ、…生かされたってことちゃんと、覚えてたかった」
「みんなが、…しんで、……おれも、あんな酷く死にたくなかった…、」
「やから、ッ…、がんばろ、…してたのにッッ」
『……だいせんせい 』
『…殺して、、…、お前のことを考えなくて、…無神経なこといって、…ごめん。』
「なんで、ぞむが謝んのッ!!…おれが、…ぼくが、…僕がわるかってん、」
涙はずっと、頬を伝っていた。
『……、ごめん。…だいせんせい。 』
青色は、ずっと泣き止まない。
『……ろぼろ。とんとん、ぐるっぺん』
『ごめんなさい、…ごめんなさい、…ッ、ごめんなさいッ、…ゆるされることじゃない、』
『ずっと、きがかりだった。…ずっと、ッずっと、お前らにあやまりたかった。』
『…おれが、…おれがお前らを殺したんやッ!! 』
トントンがこっちに来て、抱きしめてくれる。
「独りにして、…ごめんな。…ずっと辛かったな。」
「…ゾム、泣かせてしまったな…。」
「あの時に泣かせないと…、独りにしないと約束したのに…」
……何時の約束だ、…、?
…ぁ、……そうか。…そっかぁ、…、
なんで忘れてたんやろ。…覚えてなきゃあかんかったのに…、
実験体、それはずっと冷たい部屋に残されてた。その実験施設は、その国の違反行為…。
その施設は、軍に無くされた。
入ってくる軍人の足音、…2人の青年と目が合う。綺麗な人だと思った。
「…君、名前をなんと言う?」
名前は無かった。…黄緑の目に、光も無くただ見つめてるだけ。
『……名前は無い。お前らも捕えられる。はやく逃げろよ。』
…ただそれだけの出会いだった。
俺を見てくれた。優しく話しかけてくれた。
俺の”仲間”ただそれだけ。
『…なぁ、グルッペン、トントン』
おれが最初に来た時に約束した。
絶対守るって、言ってくれた約束。
「…なんだ?」
『俺を独りにせん、?』
「…なんや、そんなことかいな笑…、」
「絶対独りにさせへんよ。」
「…俺らはお前を泣かせないし、独りにしない。…大丈夫さ、離れない。」
するとトントンが手を出してくる。
『なんや、この手…』
「…日本っていう国の文化や、小指合わせてな。」
「指切りげんまん、嘘ついたらハリセンボン飲ます…って言うな」
「大分野蛮だろ、その国」
『んはは笑、なんや笑んなのするん、?』
「おん、針千本は飲みたくないなぁ笑」
『破ったら、針千本飲ませるで!!笑』
「怖ァ笑」
『…はりせんぼん、…飲ませなあかんな…笑』
「……あぁ。その位の事は我々やったさ」
「…お前を独りにしたんや、…、」
こちらを向くから、俺はゆっくりと笑った。
『……、なぁ、グルッペン。』
『いや、みんな。…お願いがあんねん。』
風が思いっきり拭いて、俺を強く包んだ。
風船は、…ゆっくりと割れた。
『…、俺を……、お前らが殺して』
『…もう疲れたんや。…何回、何百回、何億回と繰り返したこの人生、…もうええやろ。』
『最後にみんなに会えたの…嬉しかった』
頬を伝う、思い出たち。
「……ゾム。…」
グルッペンは、今までないくらいに俺を起こりつける。
それは心配等ではなくてただ、…、仲間を失うことが怖い青年と同じだった。
「…死なないでくれ」
「もう俺の手元から落ちないでくれ。…」
「ゾム、」
こちらを向いて、グルッペンは手を刺し伸ばしてくる
「また、我々の仲間にならないか」
みんなの視線が俺に向く。自然と俺の近くにいた彼らは、グルッペンの後ろへと横に並び出す。
その視線は、俺をずっと見つめていた。
おれがずっと、前から欲しかったのは
仲間だったのかもしれない。
お前らを殺して、1度死んで、のあの日から俺はずっと、1人だけだった。
一人ぼっちな俺は、ずっとお前らの部下だった。…大好きな、お前らの。
けれど他人だった。
仲間ではなかった。
ずっと欲しかった言葉だった。
俺はその手を、…ゆっくりととった。
涙がこぼれ落ちていく。…、
『…なぁ、…グルッペンッ…、』
吃音混じりのこの言葉、…でもどうしても伝えたいから。
『…もう、独りにせんでな。』
「当たり前じゃないか。」
真っ黒な雨雲は、ずっと止まなかった。どこかへの行くこともせず、ただ1人の青年を濡らしていた。
雨雲は、ゆっくりと晴れ始めた。誰かが傘をさしただけなのかもしれないし、雨雲がなくなろうとしてるのかも、…それとも、晴天が彼の方に行こうとしてるのかも…、
今はまだ分からなくても、きっと、いつかは晴れるから。まだその雨雲がどうなるかなんて考えなくていい。
自分が望む、物が手に入らなくても…、どれだけ手を伸ばそうと手に入れることが出来なくとも、…手を伸ばし続けることがどれほど大事なことか、
色がなかった世界に、呼吸ができなかった世界に、雨が降り続ける世界に…、
きっと人々は生き続ける。
けれど、その先にきっと色がある世界に、呼吸が楽にできる世界に、晴れ続ける世界になるはずだから。
その時まで、生きづつけて。
「ゾム。」
今あるその幸せを噛み締めて
『なんや?』
いつか壊れてしまうかもしれないけれど
「もし、今日が最後の日で最後の晩餐かもしれなかったら…ゾムは何食べたい?」
…でも、壊れてしまうかもしれないその一瞬まで、…ずっと、
『…んー、大先生のおうどんやな!!!』
光に手を伸ばし続けて。
_光に手を伸ばし続けて_END
コメント
11件
夜なのに声が自然に出るくらいボロ泣きしちゃったんだけど…っ😭 かさねさんの小説ほんっと大好き…!!
最高すぎる...良きすぎるぅ泣
さて、皆さんは最後の晩餐を食べるとしたら何を食べたいですか?ちなみに主はおうどんと鍋が好きなのでおうどんか鍋にしたいなぁと考えています。けれど寿司も捨てきれない…、寿司かうどんか鍋です。