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Mist-404
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「…貴方が、”御前崎財閥”の当主様でしょうか。」
レイラーがそう問うと、少女は一般の人が住むようなチンケな部屋に案内し、置かれた椅子に腰を下ろした。
「いやぁ、ごめんね。」
そう言って少女は木製の広い机で頬杖をする。
「…た、タメ口!?」
レイラーは八幡宮の、敬っているとは思えない態度に心底驚く。
「初めてですよ、皇でも見た事ない…」
そう言って少しあたふたしていた。
「皇?とかさ、私は嫌いだから。」
「わかんないし、階級とか。」
そう言って、少女はため息をつく。
「ふぅ。」
空気が、一変したような錯覚。
少女は語る。
「…まず、騙し討ちみたいなことをしてごめん。」
「…財閥に属してる訳じゃないんだよね、私。」
「財閥に属してないのにあんなことしたんですか、貴方…」
「そうそう、みーんなリィン・システムの効果ばっかり見て、構造について考えようともしないから、ちょっと孤独でさぁ。」
「さて、改めて自己紹介をしようかな。」
「私は御前崎財閥当主…改め、御前崎研究所で一人研究をする”研究員”」
「…の、八幡宮。」
八幡宮と名乗る少女は名刺を渡した。
確かに、名刺には八幡宮という名前のみが記載されていて、財閥の
「…今回レイラーさんにコンタクトを取ったのは、リィン・システムについて考えを共有したかったから。」
「今回私はレイラーさんを皇だとかじゃなくて…”同類”ということにして コンタクトを取ったんだよね。」
「同類…ですか?」
「…確かに、そうかもしれませんね…」
「表立ってリィン・システムの研究をしているのは私くらいですし、よく考えれば貴方みたいな人に目をつけられるのも時間の問題でしたか。」
「ご明察〜、ちゃんと頭が切れる人で安心安心。」
「…さて、話を戻そっか。」
「…レイラーさんはさ、リィン・システムについてどれくらい研究した?」
「まず、リィン・システムが先人の技術で、今の人類では再現不可能であること。」
「人のタヒを覆して、何度でも生き返ることを可能にすること。」
「…そして、一種の呪いであること」
「私は、これくらいです。」
八幡宮はニヤリと笑う。
「まぁ、研究した時間が短いとそれくらいしか得られないかもね?」
「…その、なんだっけ?ウパパロンさん?の理想を実現させるには程遠いんだけど。」
「…そう言う貴方は、どれくらい知っているんですか。」
そうレイラーが問うと、八幡宮は20枚程のメモを取り出した。
「まず1つ言っておくけど、私は独自のルートから”リィン・システム”を入手してるから、それを前提にしておいて。」
「独自のルートで!?」
「そうそう、まぁ”同類”だから話しただけで、そこに深い意味は無いよ。」
そう言うと、八幡宮は咳払いをして話を戻す
「…私はこれを使って、何度も自分を殺してみた。」
「はぁ!?おかしいんですか!?怖くないんですか!?」
「所詮一般人の命だよ?失ってもどーにもならないでしょ。」
「…褒めるとかでもないですけど本当に狂ってますね。」
八幡宮は特に反応することもなく、
「…何度言われたことか、あはは。」
と流した。
「さて、また逸れちゃったね。」
「…私は何度も自分を殺して、それぞれ2つ…仮説を立ててみたんだ。」
「仮説…ですか。」
「…まず、成り立ちの仮説かなぁ。」
「1つは、先人の足掻き」
「なにか大きな恐怖が、先人にこれを作らせたんじゃないかな?」
「タヒをなくす…っていう考えは理解できないことも無いけど、私には刺さらないなぁ。」
「2つは、レイラーさんも言ってたけど…そのまま”呪い”」
「…資料を漁っているうちに、こんな記述を見つけたんだ。」
そう言って八幡宮は、資料のページを差し出す。
『タヒが救済ならば、生は呪いなのか?』
『それなら、彼を呪おう。それなら、彼を生きるというタヒに閉じ込めてしまおう。』
「…面白くない?」
「…生きるという、タヒ…」
「そうそう。」
「…仮説に留めているのにも、理由はあるよ。」
「…私があくまで”仮説”としているのは、これが先人がタヒぬ前に作られたのか、タヒんだ後に今の人類によって作られたものか分からないから。」
「…どこかに書かれてはいなかったんですか?」
レイラーは楽しそうな八幡宮に問う
八幡宮は少し考えて、つまらなそうな顔をした。
ため息ののち
「…これ、そもそも先人の言葉とも今の人類の言葉とも合致してるか怪しくて。」
そう言って立ち上がると、使用感のある冷蔵庫から緑茶を取り出す。
「ふぅ。」
それを1口飲むと、話を続けた。
「…いわゆる古文とかなんだろうけど、今の私じゃあこれは解読できないんだよね。」
数秒、沈黙が流れる。
「…私、やってみたい…」
レイラーは、つい言葉を漏らしてしまう。
八幡宮の顔は楽しそうなものに戻り、興味津々にレイラーの方に向き直る。
「やってくれるなら、ありがたい話でしかないなぁ。」
「私と違って聡明?なレイラーさんならできる!」
八幡宮はそう言って、古い書物を渡してくる。
レイラーはそれを開いてみると、確かに”未知の言語”のみがつらつらと並べられている。
「…これのほんの一部を、解読したんですか?」
「ふふ、そうだよ。」
「3ヶ月はまともな生活もせずこれを読んだかいがあったなぁ。」
レイラーは思う。
八幡宮は本当に”リィン・システム”に心底興味を持っている。
(…八幡宮さんのそれは、私の比じゃない。もはやこれは…狂愛で)
(…執着だ)
レイラーは、心底怯えた顔をした。
八幡宮はそれを気にすることもなく、ただ研究を続けていた。