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乾いた音が聞こえると薄暗く電気がついた。どうやら完全に明るくなるまで時間がかかるようでチッチッと音を立てていた。
腹の底が見えない笑みを浮かべて、鈍く光る銀のプレートをサイドテーブルに置いた。スペインはロマーノの横に座り、頬にキスをした。まるで、恋人にするように。
「おん!親分やで、どないしたんロマーノ。元気ないやんか……よう寝れんかったん?」
「……はぁ……?」
「ごめんなぁ、ロマーノ。親分の家でお前の置いとけそうなとこ、此処しかなかってん。せやけどなぁ、ちゃんとロマーノが暮らせるように色々整備したんやで?」
ロマーノの手を取り、さらに重ねて包み込む。心底嬉しそうに、ロマーノの顔を覗き込んで。暗くてよく見えなかった部屋の全容が照明が明るくなってきたことでぼんやりと見えるようになってきた。ふと、顔を上げた。
「ひっ、ひぃ……」
ロマーノは思わず悲鳴を上げ後退りした。壁には生々しい血痕。扉は鉄製でおびただしい数の引っ掻き傷跡が付いていた。床には何か大きいものを引き摺った跡があり、何が置いてあったのか血痕から推測できてしまうから目を背けざるを得なかった。
「んー?あぁ、急だったもんやからあんまり掃除できひんくてな……堪忍したってや」
「……お、俺をどうするつもりだ」
「どうって、どうもしいひんよ、俺とこうやって一生一緒に暮らすんや……ふふっ楽しみやなぁロマーノ」
背中に手を回し、ロマーノを抱き寄せると愛おしそうに頬や首筋へキスを落とした。首筋へ唇が押しつけられるたび、いつ、その口が開いて首を噛みちぎられてしまうのではないかと気が気ではなかった。
「まぁ、とりあえずご飯食べへんと。あ、親分があーんしたろか?」
ナイフとフォークで切り分ける。楽しそうに笑うスペインが得体の知れない何かに見えて仕方がなかった。
「……いらない」
「……なんでや?せっかく作ったったのに」
「……何入ってるかわからないもん食えるわけないだろ」
スペインは少し考えるとトレーに乗っている料理を一口、自分の口の中へ放りこんだ。ゆっくりと咀嚼し、飲み込むと口唇を開けてニコッと微笑んで見せた。
「うまいよ?」
「……は?意味わかんな──」
「はい、あーん」
「んぐっ?!」
そのまま開いた口に料理を押し込みロマーノの口を手で塞いで吐き出させないようにした。
「ほら、食べたって、親分頑張ったんやで?料理あんまし得意やないのに……おいしいなぁ?」
「んぐぐっ」
「いいから、飲み込みや?」
仕方なく飲み込む。それを見たスペインは満足げに笑うとナプキンでロマーノの口拭いてやった。
「はい、お口開けてやー」
「……嫌ッ……んぐっ?!」
そうやってロマーノの口が開くたびにスペインはどんどん料理を口へ押し込んだ。
しばらくして、皿に乗った料理はすべてスペインの手によってロマーノ胃袋の中へ収まった。
「んじゃ、ロマ、親分食器あらってくるさかい、ちょっと待ってったてな……逃げようとしてもできひんから大人しくしてるんやで」
ベッドから降り銀のトレーを持って部屋を出て行った。重たい鉄のドワが閉まる音がして、また、薄暗い部屋の中に一人取り残された。