📓『隣の席のノート』
「ねぇ、ノート、見せてもいい?」
放課後、隣の席の**陸(りく)**が声をかけてきた。
テスト前で、みんなノートの取り合い状態。
私は笑いながら、自分の国語のノートを渡した。
「ありがとう、助かるよ」
陸は丁寧にページをめくりながら、何かをじっと見ていた。
「これ……誰が書いたの?」
私は首をかしげた。
ノートのすみに、小さな字でこう書かれていた。
『ここにいる。』
もちろん、私が書いた覚えなんてない。
でも、その文字は、私の筆跡にそっくりだった。
次の日、陸は学校に来なかった。
机の上には、私のノートが置かれていた。
ページのすみには、また小さな文字。
『りくくん、見つけたよ。』
ノートを閉じようとした瞬間、
教室のスピーカーから「ガリッ」とノイズが走った。
そして、かすかに聞こえた――
私の声で。
『次は、あなたの番。』
【エピローグ】
数日後、掃除の時間。
後ろのロッカーの奥から、ほこりだらけの1冊のノートが見つかった。
名前の欄には、薄く消された文字。
うっすらと、こう読めた。
> 「りく」
先生が何気なくページを開くと、
そこにはびっしりと文字が並んでいた。
> 『ここにいる。』
『ここにいる。』
『ここにいる。』
すべて同じ字で、ページいっぱいに。
そして、最後のページ。
そこだけ違う筆跡で、たった一行。
> 『見せてくれてありがとう。次は先生のノートに書くね。』
先生は青ざめて、ノートを閉じた。
その手のひらには、黒いインクの跡がついていた。
まるで――
“誰かの指”が、そこを掴んでいたように。
コメント
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初見です🌸 面白い!! よい作家さんと出会えました✨️