テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
午後11時45分。
誰もいないはずの市立動物園の管理棟で、小さな警報音が鳴った。
「またか……」
夜間警備員の野島はため息をついて、防犯モニターを確認する。
映し出されたのは、パンダ舎。
白と黒のコントラストが美しい、人気者のメスパンダ「メイリン」。
だが、モニターには彼女の姿がない。
「……檻の中に、いない?」
野島は急いで懐中電灯を手に取り、夜の園内へと向かった。
パンダ舎に到着すると、扉は内側から開けられていた。
檻の中には、白い毛の塊だけが落ちている。
「まさか……連れ去られたのか?」
足元には、何かを引きずったような跡と、パンダの足跡に似ているが微妙に大きい足跡が残されていた。
その跡は、動物園の外――市街地へと続いている。