テラーノベル
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本編ラスト。
センターに二人が残るフォーメーション。
照明は正面。
カメラも、逃げ場がない角度。
(……ここ)
柔太朗がそう察した瞬間、
はやちゃんが、一歩踏み出した。
ハグ。
正面から、しっかり。
腕が回るのが、はっきり見える。
会場が、ざわっと揺れる。
(……来た)
柔太朗は、驚かない。
逃げない。
約束を、思い出す。
次の瞬間――
キス。
短い。
でも、誰の目にもはっきり。
一拍の静寂。
それから、割れるような歓声。
悲鳴。
叫び。
混ざるざわめき。
二人はすぐ離れて、
何事もなかったように次の挨拶へ。
「ありがとうございました!」
完璧な締め。
ステージを降りる直前、
一瞬だけ目が合う。
――選んだな。
――うん。
その夜。
楽屋に戻る頃には、
もうスマホが鳴り止まない。
《今の見た????》
《ハグからのキス、ガチで見えた》
《演出???でも距離感……》
《公式が最大手すぎる》
トレンド入り。
切り抜き動画。
スロー再生。
はやちゃんは、
静かにスマホを伏せた。
(……想定内)
横を見ると、
柔太朗は少しだけ緊張した顔。
「……荒れてる?」
「うん」
正直に言う。
「でも」
一拍。
「後悔は?」
柔太朗は、少し考えてから首を振った。
「ない」
「逃げなかったし」
「はやちゃんも、逃げなかった」
その言葉に、
はやちゃんの肩が、ほんの少し緩む。
「じゃあ、いい」
「……対応、どうする?」
「いつも通り」
「演出として、プロとして」
「それ以上は、言わない」
柔太朗は、静かに頷いた。
「俺も」
ネットは騒ぐ。
憶測は広がる。
でも、二人の中では、
もう答えは決まっていた。
見える場所で、選んだ。
それだけ。
夜更け、
はやちゃんが小さく言う。
「……主導権、取られたな」
柔太朗は、少しだけ笑う。
「でも」
「ハグから行ったのは、はやちゃん」
「そこは、譲らない」
はやちゃんも、笑った。
騒がれる夜。
でも二人は、静かだった。
選んだのは、
炎上じゃなくて――
覚悟だったから。
コメント
2件
書き方がうますぎます、、 タイプの物語です、!! ありがとうございます!