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激しい戦いの最中、タクトは冷や汗を流しながら目の前のルシファーを見据えていた。これまで圧倒的な力で押してきたルシファーだが、何かが変わった。彼の笑みはより深く、不敵さが増していた。
「ようやく使う気になったか?」
タクトは言葉を絞り出す。
「そうだとも。」
ルシファーの声は深みを帯び、どこか楽しげだった。
「私の異能を見せてやろう。『道路交通法』という。」
タクトの表情が曇る。「……は?」
その異能の名は、あまりにも場違いに感じられた。
「さあ、ルールを教えてやろう!」
ルシファーが手を広げると、突如として戦場の空間が変化し始めた。地獄の荒野だった場所は、無数の標識と信号機、白線が引かれたアスファルトの道に一変した。
「なんだこれ…?」
タクトは周囲を見回しながら呟く。
「私の異能は、貴様をこの法の下に縛ることだ。」
ルシファーの声が空間全体に響き渡る。
「すべての行動はこの場に存在する交通ルールに従わねばならない。違反すれば――」
彼は微笑む。
「死だ。」
タクトが一歩を踏み出そうとした瞬間、突然、彼の前に大きな標識が現れる。そこにはこう書かれていた。
「歩行者優先」
「……どういうことだ?」
タクトが困惑していると、ルシファーが指を鳴らす。すると、道の向こうから無数の歩行者――いや、亡者たちが歩いてくる。タクトはその流れを邪魔しないように動かねばならない。
「道を塞ぐなよ。違反するとどうなるか、教えてやろうか?」
ルシファーは冷笑を浮かべる。
タクトは亡者たちを避けながら動き回るが、そのたびに新たな標識が現れる。
「一時停止」
「右折禁止」
「速度制限20km/h」
タクトは苛立ちながらも、それぞれのルールを遵守しながら進む。しかし、徐々にルシファーの異能が本領を発揮し始める。
タクトが次の行動に移ろうとした瞬間、信号機が突然赤に変わる。
「動くな。」
ルシファーの声が冷たく響く。
「くそ…!」
タクトは足を止めざるを得ない。しかし、その隙を突いてルシファーが闇の槍を放つ。タクトはギリギリで警告の異能を使い、なんとか攻撃を防ぐ。
「素晴らしい反応だ。」
ルシファーは楽しげに笑いながら、さらにルールを追加する。
「次はこれだ――駐車禁止だ。」
タクトの周囲には無数の標識が現れ、彼を追い詰めるように配置されていく。まるで出口のない迷路の中に閉じ込められたかのようだった。
「こんなふざけた異能で俺を倒せると思うな!」
タクトは叫びながら、新たな警告を構築する。
「Don’t follow the rules」
その警告は空間全体に響き渡り、ルシファーの異能を打ち消すかのように見えた。しかし、ルシファーは眉一つ動かさず言い放つ。
「私の異能は絶対だ。ルールを破る者には罰を与える。それが『道路交通法』だ。」
次の瞬間、空間全体が震え、タクトの体に重圧がかかる。
「くそ…!」
彼は苦しみながらも、新たな警告を作り出す。