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第148話:伝説の3Dコラボライブ(開幕)〜星乃宮アリスと、腰を庇う魔王〜
『5、4、3、2、1……!!』
港区の巨大なモーションキャプチャースタジオ。
俺の視界に広がる巨大なモニターの向こう側で、世界に向けた【伝説の夜】が、ついに幕を開けた。
『みんなーっ! お待たせしましたぁっ!! 星乃宮アリスの、特大3Dコラボライブ、スタートだよーっ!!』
無数の仮想レーザーが飛び交う、数万人を収容できるドーム型のバーチャルステージ。
その中央に、圧倒的な光の粒子を纏いながら、トップアイドル・星乃宮アリスが舞い降りた。
完璧なアイドルステップ、一切のブレがない軽やかなターン。
その一挙手一投足が、彼女のプロフェッショナルとしての『凄み』を物語っている。
『そして! 今夜のスペシャルゲスト、一人目はこの子! 海を越えて大ブレイク中の、株式会社インフィニティ・ワン所属、ヨモちゃーん!』
アリスちゃんのコールに合わせて、ステージの右側からポップなエフェクトと共にヨモの3Dアバターが出現した。
『……Ugh, hi. Standing is exhausting. Can I get a chair?(うぇ、やっほー。立ってんの疲れる。椅子もらっていい?)』
世界中が注目する大舞台だというのに、ヨモは出現した瞬間に大きな欠伸をし、仮想ステージの床にズルズルと座り込んでしまった。
遠隔(リモート)でアメリカのファンから叩きつけられたスーパーチャットの資金を使い、彼女もまた簡易的な3Dボディを手に入れていたのだ。
『LMAO YOMO IS ALREADY TIRED(クソワロタ、ヨモもう疲れてる)』
『She is my spirit animal(彼女は俺の心の友だ)』
『アリス姫とズボラ猫の異色コラボwww』
YouTubeのチャット欄は、すでに日本語と英語が入り乱れるカオスな弾幕と化しており、同接(同時接続者数)は開始1分で【十五万人】を軽々と突破していた。
『あははっ、ヨモちゃんは相変わらずマイペースだね! それじゃあ、お待ちかね! 今夜の最大のゲストをお呼びするよ!』
アリスちゃんが、ステージの最上段、巨大な階段の上をビシッと指差した。
『みんなもよく知ってるよね! かつて私を守ってくれた英雄であり、ヨモちゃんの社長さん! ルシフェル魔王様ぁーっ!!』
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
ステージに、地響きのような重低音のSEが鳴り響く。
『ルシフェル様! キュー入りました! 階段の上から、思いっきりカッコよくジャンプして着地を決めてください!』
コントロールルームからの神崎Pの指示が、イヤホンを通して飛んでくる。
「……任せろ!! 俺の250万円(Ver2.0)の力、見せてやる!!」
俺は、一千万の弁償にビビりながらも、全身タイツ(モキャプスーツ)の中で気合を入れた。
俺はステージの階段(という設定の、スタジオに組まれた足場)から、勢いよく空中へと身を投げ出した。
『フハハハハッ!! 待たせたな、人間ども!! 我が名はルシフェル! 資本主義の闇より這い上がりし、インフィニティ・ワンの代表取締役であ――』
ドスゥゥゥンッ!!
完璧な魔王のセリフと共に、俺は膝を曲げて、いわゆる『スーパーヒーロー着地(片膝をついて拳を床に叩きつけるポーズ)』をキメた。
……はずだった。
「…………ッ!! ぐ、がぁ……ッ!?」
その瞬間。
俺の四十歳の衰えきった腰椎に、着地の衝撃がダイレクトに突き刺さった。
先日、アメリカのIRS(内国歳入庁)との戦いで爆発した『ぎっくり腰』のダメージは、まだ完全に癒えてはいなかったのだ。
「あ、あばばばばっ……!!」
俺の体は、着地した瞬間にビキィッと固まり。
あまりの痛みに、無意識のうちに【右手で腰をトントンと叩き、左手で膝を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる】という、完全なる『介護が必要な老人』の動きをしてしまった。
そして、悲劇は起きた。
スタプロが誇る、最新鋭の光学式モーションキャプチャースタジオ。
その一千万円を超える超高精度トラッキングシステムは、俺の『痛みに顔をしかめながら腰を庇う、四十歳のおっさんのリアルな挙動』を。
ミリ単位の狂いもなく、画面の中の【超絶イケメン魔王(Ver2.0)】に反映させてしまったのだ。
『…………』
十五万人が見つめるバーチャルステージ。
漆黒のマントを翻し、威風堂々と現れたはずの冷酷無比なイケメン魔王が。
「いたたたっ……。あー、腰が……。ちょっと待って、筋がピキッていった……」と、完全に中身のおっさんが漏れ出た情けないポーズで固まっている。
数秒の、奇妙な静寂。
それを切り裂いたのは、やはりあのズボラ娘だった。
『Look guys, the Super Bottom CEO broke his back again. How pathetic.(見なよお前ら、スーパーボトム社長がまた腰ぶっ壊した。ウケる)』
ヨモの冷酷な英語の実況を皮切りに。
チャット欄が、完全に大爆発を起こした。
『LMAOOOO HE’S GRABBING HIS BACK!!(クソワロタ、腰押さえてる!!)』
『イケメン魔王(中身は限界四十歳)』
『トラッキング精度が高すぎるせいで、おっさんのリアルな痛みが伝わってくるwww』
『SuperChat: $100.00 (FOR HIS CHIROPRACTOR!)(スパチャ100ドル:彼の整体代に!)』
『スパチャ: 10,000円 (ルシフェル殿! 無理はなさるな! 労災は下りないぞ!)』
『The tracking is TOO GOOD. I can feel the boomer energy.(トラッキング良すぎだろ。おっさんエネルギーを感じる)』
「ち、ちが……っ! これは演出だ! 魔王の……古傷が痛んだだけだッ!」
俺は必死に腰を伸ばそうとするが、ピキピキと走る激痛のせいで、どうしてもへっぴり腰になってしまう。
イケメン魔王が、へっぴり腰でウロウロと徘徊する。
そのあまりにもシュールすぎる光景に、ステージ上のアリスちゃんまでが腹を抱えて笑い崩れてしまった。
『あははははっ!! だ、だめっ、ルシフェルさん、動きが、動きがリアルすぎてお腹痛いっ……!!』
「アリスちゃん! 笑わないで! 俺は真剣にカッコつけようとしたのに、日本の重力が俺の腰を殺しにきたんだよ!」
『ルシフェル様』
イヤホンから、結愛(ゆあ)の氷のような声が響く。
『現在、同接は【二十万人】を突破しました。「ぎっくり腰の魔王がリアルすぎる」という切り抜き動画が、すでにX(旧Twitter)で拡散され始めています』
「やめろォォォ!! 俺の250万円のイケメンボディを、そんなお笑いミームとして消費するな!!」
『諦めてください。あの超高精度カメラは、ルシフェル様の「底辺の生活感」と「加齢による衰え」を、残酷なまでにあぶり出しています。これが、最先端技術の力です』
「技術の無駄遣いだろ!! 誰か、俺の腰の動きだけトラッキングをオフにしてくれぇぇ!!」
俺の悲痛な叫び(日本語)と、ヨモの容赦ない煽り(英語)、そしてアリスちゃんの爆笑が響き渡る。
日米のリスナーたちが入り乱れ、極彩色のスーパーチャットが猛吹雪のように乱れ飛ぶ中。
『伝説の3Dコラボライブ』は、イケメン魔王の【リアルすぎるぎっくり腰】という、誰も予想しなかった大爆笑の渦と共に、その幕を開けたのであった。
コメント
1件
読んだよ〜〜!!第148話、最高すぎた!!😭✨ 魔王のスーパーヒーロー着地からのまさかのぎっくり腰、しかも超高精度モーションキャプチャーでイケメン魔王がおっさん介護ポーズになっちゃうの、お腹痛いwww ヨモの英語煽りも切れ味抜群で、アリスちゃん爆笑、チャット欄カオス…このカオス感、大好き!!「資本主義の闇より這い上がりし魔王」の中身がこんなに限界おじさんなのギャップ萌えすぎる…♡ ライブ幕開けからこんなに笑わせてくるの反則だよ!続きも絶対読む〜!!🌸
191
레몬인
201
そあち♡໒꒱
88
なんたろ
1