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そんなときだった。
雰囲気をぶち壊すような一本の電話が来た。
「はい。声帯精神科の木村です。」
社長がいち早く気づき、電話を取った。
「こんにちは。私は声が出ません。」
柴田さんと同様、女性の機械音。決められたようなフレーズが淡々と話されていた。
「わかりました。では…〜〜〜。ーーー?」
今日の患者だろう。私は小さく柴田さんにお帰りすることを言って、準備を始めた。
「今日は長野。」
それだけだった。
電話を終えた社長が一息おいて。
長野…。長野か…。遠い。
「ま。頑張ろう。」
また私のことを察知したように話していた。
私ってよく顔に出てるのかな。
私達は社長の車に乗り、長野に向かった。
「長野なんて久しぶりですね。」
長野は社長と診察で一回来たことがある。
大体の診察が関東だけど、たまに大阪くらいの遠すぎる場所も頼まれることがある。
そんなときは近くの事務所に頼むんだけどね。
「だね。でも、なんか不可解なところがあるんだよね。」運転中の社長が呟いた。