彗華 様(ちゃん)のご依頼1
中原中也(文豪ストレイドッグス)×プロポーズ
start
「今夜空いてるか?」
彼氏の中也が突然そんな事を云ってきた。
彼とは知り合って五年、付き合って四年が経つ。同棲もしていて、職場では仲良しカップルとして地味に有名だったりする。
然して待ちに待った夜。私の仕事が長引いてしまって、ビル前で待ち合わせていた時間に遅れてしまった。
「ごめん!遅くなっちゃった」
「気にすんな。其 れより夜は冷えるから之羽織っとけ」
昼間が比較的暖かったから其の儘薄着だった私を気遣って、自身の外套を羽織らせてくれる中也。遅れてきた私を咎める事もせず、それどころか気遣ってくれるなんて、彼は心底優しい人だなぁと思う。
そういえば前に如何してそんなに優しいの?って聞いたら、「本当に好きな奴なら何でも許せちまう」なんて云っていたっけ。彼は恋人に尽くすタイプらしい。
「そういえば何処へ行くの?」
「其れは……内緒だ」
歩き始めた中也に聞いてみるけど、返ってきたのはあやふやな返事。さりげなく手を絡めてくれる処、私に触れる時は手袋を外しくれる処が大好きだ。
暫くの間、他愛もない話をしながら静かな通りを歩いた。夜でも人が居る都会の方から、少し離れたのどかな場所に来ている。海が見える丘がある公園だ。
「此処?」
「あぁ」
丘に登って立ち止まる中也に首を傾げる。確かに此処は海が一望出来て綺麗なスポットだが、何度か来た事があるからだ。深い意味はないのかな?
「今日は大事な話があるんだ」
「大事な話?…わあっ!?」
と、体がふわりと宙に浮く。思わず彼にしがみつくと、中也はくつくつと喉を鳴らして笑った。
「大丈夫だから、下見てみろ」
ぐんぐんと上へ上昇して、ある一定の高さでピタリと止まる。目を瞑っていた私の頭を撫でて優しく云う中也。
「!、わあ…!」
恐る恐る目を開けると、其処には横浜の夜景が広がっていた。建物や車の明かりが、まるで星のようにキラキラと瞬いている。迚も、迚も綺麗だ。
「すごい…綺麗、」
「〇〇」
ふと名前を呼ばれて彼の方を向く。私を見る目は真剣そのもので、此方まで緊張してしまい、コクリと唾を飲んだ。
「俺はこんな仕事だし何時死ぬか判らねぇ。他の男よりお前の事を幸せに出来るとも断言は出来ない。だが、誰よりも手前を愛してるってのは云い切れる 」
中也の手が私の頬を撫で、手を握る。其の青い瞳は何か愛おしいものを見る様な、其れは其れは優しいものだった。
「俺と結婚してくれ」
これは、私と彼が恋人から夫婦になった或る夜の話。
コメント
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きゃぁぁぁぁぁッ!!え、尊いッ!!手袋を外してからとか、プロポーズの仕方とか、もう最高過ぎますッ!!