戦場は静寂に包まれていた。加藤の消滅という犠牲により、少女の攻撃は一時的に止まったものの、雅也は全身に傷を負い、その場に膝をついていた。
突然、遠くから聞きなれた音が響く――銃声だ。鋭く、冷たい音が戦場の空気を切り裂く。雅也はその方向を振り返り、目を疑った。
「……橘!?お前、生きとったんか!」
血まみれの戦場の中、橘が悠然と姿を現した。彼の手には、ついに見つけた愛銃「神鳴」が握られている。その銃身には異能の光が宿り、まるで生きているかのように脈動していた。
雅也が驚きに目を見開く中、橘は苦笑しながら呟く。
「まあな、死にかけたけど……黒潮団の黒瀬に命を一つ貸してもらった。あいつの命と引き換えやったけどな。」
その言葉に雅也は険しい表情を浮かべる。
「黒瀬って……お前の命を救うために死んだんか?」
橘は黙って頷く。その瞳には複雑な感情が渦巻いていたが、彼はそれを振り払うように神鳴を構える。
「俺がここに来た理由は一つや。これ以上お前を死なせるわけにはいかん。」
橘はゆっくりと少女の方を向いた。彼女の手に握られた異形の刃が再び光を放ち始める。
「……お前か。めちゃくちゃにしやがったのは。」
少女は怒りと悲しみを込めた視線で橘を睨む。
「黙れ!兄様の気持ちが分かるわけない!」
橘は少しだけ笑い、銃を持つ手を強く握りしめた。
「分からんよ。けど、これだけは分かっとる――命を道具みたいに使う奴を許すわけにはいかん。」
橘が引き金を引いた瞬間、銃口から放たれた弾丸は空間を裂きながら少女に迫った。彼の銃「神鳴」は単なる武器ではない。それはかつて彼が命を懸けて得た異能「絶対命中」を宿した武器だった。
少女の異能の刃が迎撃しようとするが、神鳴の弾丸はその攻撃をすり抜け、彼女の手元を正確に撃ち抜く。
「……!」
刃が彼女の手から滑り落ち、異能の光が消えていく。少女は呆然としたままその場に崩れ落ちた。
雅也が立ち上がり、橘の元に歩み寄る。
「……お前が帰ってくるとは思わんかったわ。ほんまに助かったで。」
橘は少し肩をすくめ、神鳴をホルスターに収める。
「俺がやらんと、誰がやるんや。それに――」
彼は雅也をじっと見つめる。
「お前がここで倒れるわけにはいかんやろ。まだ戦いは終わってへん。」
二人は静かに頷き合い、再び前を向いた。次なる戦場が、彼らを待っている。
加藤は起き上がり、ふと呟いた。
「な〜んだ、つまんなっ」
コメント
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橘…読めねぇ、笑(アホです)