崖っぷち探偵と謎の少女と記憶の迷宮

「おーい平真。今日も依頼追加だ」

　事務所の扉を開け、右目に泣き黒子がある女性が入ってくる。それを出迎えるのは大柄な男。

「はぁ？　また！？　今週だけで何件目だよ！」

「えぇー！　そんな事言うなよ」

　その気怠げな雰囲気の女性は、ラフに着こなした探偵服のネクタイを緩めながら、ソファに背中から倒れ込む。

「あー、疲れた。大将！とりあえずビール！」

「誰が大将だ！　ここは居酒屋じゃねーよ！」

「えぇー、そんなぁ……。注文した唐揚げと玉子焼きは？」

「いつ頼んだんだよ……。うちにあるのは水とパンの耳だけだよ」

「は？　この間、依頼料入ったよな？」

「あんたが昨日ギャンブルで擦ったんだろ！」

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