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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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倒れる僕の身体を、ラズールがしっかりと受け止めた。

僕が口を開く前に「だからバカだと言ったのですよ」と冷たい声が落ちてくる。

「辛いのではないですか?今から俺があなたに体力回復の魔法を使いますが、今日はこのまま休んでください。夕餉は後で持ってきてもらいますから。明日のために、二人ともゆっくりと休んでください。よろしいですね?」

「…うん、ごめんね」

ふ…と笑う気配がして、ゆっくりと目を上に向ける。

ラズールはもう怒ってはいなくて、優しい目で僕を見ていた。

「俺も言いすぎました。申し訳ありません。あなたのことになると、感情が抑えきれなくなってしまう。気をつけます」

「ううん…いつも心配してくれてありがとう」

「当然ですよ」

目を細めたラズールが、僕の頭を抱き寄せる。そして静かに呪文の言葉を口にする。

ラズールの低めの声が、耳に心地いい。少しずつめまいや気持ち悪さがおさまって、自分の足で立てるようになってきた。

しばらくして魔法をかけ終えると、ラズールが僕から離れて早くベッドに入れと言う。

「もう大丈夫だけど…」

「ダメです。油断してはなりません。明日の式の最中に、倒れてもいいのですか?」

「それは困るけど」

「では寝ていてください。あなた達の状況を、ラシェット様に伝えてきます」

「僕も行こうか?」

「フィル様!」

「だって」

「んんっ…」

突然、リアムが唸って目を覚ました。

上半身を起こして両手を伸ばし、不思議そうに僕とラズールを見ている。

僕は急いでベッドに飛びついた。

「リアムっ、よかった…大丈夫なの?」

「…なにが?あ、俺、フィーに魔法をかけてる途中で眠ってしまったのか…。フィーこそ大丈夫か?」

「うん…僕は元気だよ。リアムのおかげ…」

「元気ではないでしょうが」

「え?」とリアムが驚いて、僕とラズールを交互に見る。

余計なことを言わないでとラズールを睨むけど、ラズールは僕を無視して話しを続けた。

「リアム様、フィル様に治癒魔法をかけてくださったそうで、ありがとうございます。しかし限度いうものがあります。あなたは魔力を使い過ぎました。そのせいで深く眠ってしまわれた。自分のせいだと責任を感じたフィル様が、今度はあなたに魔法をかけました」

「ラズール、もう黙って」

「いいえ、黙りません。それに愛する方に隠しごとをしてはなりません。そうですよね?リアム様」

「ああ、そうだ。全て話してくれ」

「かしこまりました」

ラズールへと手を伸ばした僕の身体が、ベッドに引き込まれる。

リアムが僕を抱き寄せたのだ。

「フィー、おまえが何をしたか、だいたいの見当はつく。別に怒ったりしないから大人しくしててくれ」

「……うん」

僕が素直に頷くと、リアムが頬にキスをした。

こちらを見ているラズールが、険悪な顔をしている。あまり感情を表に出さないのに、気に食わないことだけは、すぐに顔に出すんだ。特にリアムに対しては顕著だ。

ラズールは大きなため息をつくと、少し顎を上げて口を開いた。

「フィル様は、あなたに体力回復の魔法をかけたのです。あなたが中々目を覚まさないからと膨大な量を。フィル様は、あなたに腕を斬られたあの時から、体力も魔力も落ちてます。それなのに魔法を使ったことで、俺が戻ってきた時には倒れる寸前でした」

「…え?フィー!大丈夫なのかっ…」

「ご心配には及びません。俺がフィル様に体力回復の魔法をかけましたので。しかし今日はもう無理はなさらず、安静にしていただきたい。フィル様もリアム様も。夕餉も部屋へ運んでもらうよう、頼んできます」

「そうか。伯父上に…」

「ラシェット様にも俺が話してきます。お二人は、明日のために休んでいてください。特にリアム様…フィル様が疲れることは、決してなさらぬよう願いますよ」

「……わかってる」

ラズールの圧がすごい。とても怖い顔で見下ろしてくる。

僕には何のことを言ってるのかわからなかったけど、リアムはわかったのか渋々頷いてラズールから目をそらした。

「ラズール、ラシェットさんによく謝っておいてね」

「はい。彼はお優しいので大丈夫ですよ」

「うん…でもいろいろと話したかったのに」

「明日の式の後に、ゆっくりと話せますよ」

「そうだね」

僕が笑うと、ようやくラズールも微笑んで、僕の髪を撫でた。

昔から何かあると撫でてくれるラズールの手が好きだった。いつか僕もラズールと同じ大きな手になるかなと期待したけど、全然追いついない。身長も手も足も、ラズールより小さいままだ。あと数年すれば追いついたのだろうか。

「やはりお疲れのようですね。フィル様の好きな甘いものも用意してもらいましょうか」

「…うん、お願い」

ラズールが頷きベッドから離れる。部屋を出る前に振り返り心配そうに僕を見て、静かに扉を閉めた。

パタンと扉が閉まる音と同時に、強く抱きしめられる。

僕は顔だけ後ろに向けて、リアムの金髪に触れる。

「どうしたの?まだ眠い?」

「違う…。フィー、ごめんな。謝っても仕方のないことだけど、ごめん」

「なにが?」

「おまえの腕を斬ったこと。そのせいで体力と魔力が落ちたこと」

ああ、リアムには知られたくなかったんだけどな。でも隠しごとはしないと決めたから、いつかは話さなくてはならないことだった。

僕は前を向いてリアムきもたれ、身体に巻きつくリアムの手を右手で掴むと、僕の左腕に触れさせた。

銀の王子は金の王子の隣で輝く

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