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「リアム、触ってみて」

「うん…もう痛くはないのか?」

「全く。でも少し痺れが残ってるんだ」

「ごめ…いてっ」

リアムの腕をパシッと叩く。謝られると悲しくなるから嫌だ。

「もう謝らないで。僕は怒ってないし後悔もしてない。少し痺れてるけど普段の暮らしに支障はない。それに剣だって握れるんだよ。リアムやゼノ達が早く治癒してくれたおかげだから」

「しかし俺はあの時の俺を許せない。記憶を失っていたからだとしても、許せない…」

「じゃあリアムはそれでいいよ。でも僕は許してるからね。だから次謝ったら口聞かないからね」

「それは…困る」

「僕を怒らせると怖いんだから」

「それは…見てみたい気もする」

「ふふっ、変なリアム」

リアムが何度も僕の左腕を撫でる。

切断された箇所は、うすく赤い線が残っている。あの状態で、よくここまで治ったなと僕は感心したんだ。だからもう、リアムやあの場にいた人達は、気にしないでくれるといいな。

「フィーは優しいな。辛い環境で育っただろうに、素直で優しい。大好きだよ」

「僕もリアムが大好きだよ。それに今の僕があるのはラズールのおかげ。だからラズールにも優しくしてあげてね」

「いや…アイツが俺に冷たいんだろ。いつもすごい目で睨んでくるぞ」

「見た目は怖いけど、優しいんだよ?」

「いや…おまえにだけだと思うが…」

こうやって、ゆったりとリアムと過ごせることが幸せだ。周りに祝ってもらえて、結婚式を挙げられるなんて思ってもみなかった。僕は本当に幸せ者だ。

目を閉じて幸せを感じていると、頬にキスをされた。

「眠い?少し休むか?」

「ううん、起きてる。もうすぐ料理が運ばれてくるだろうし。ねぇリアム。僕は今、とても幸せなんだ」

「そうだな。俺もだよ」

「明日はもっと幸せになるね」

「ああ。明日は今日よりも、明後日は明日よりも幸せになる」

「それって最高だね」

「俺はフィーに出会えたことが、最高に幸せだ」

「僕もだよ。呪われていたから、あの時リアムに出会えた。大変なことがあったけど、それらがあったから、今こうして傍にいられる。僕やリアムに関わる全ての人にも、感謝している」

リアムから返事がない。

不思議に思って振り向くと、とても真剣な目で僕を見ている。

「僕、変なこと言った?」

「言った…いや、違う。おまえはすごいな。俺は…感動してるんだ」

「ふーん?よくわからないけど、惚れ直した?」

「惚れ直した」

「ふふっ、ありがとう」

「俺の方こそありがとう。好きになってくれて」

「リアムが素敵だからだよ」

「まあ、そうだな」

「わあ、自分で言った」

「ははっ!」

楽しい。リアムといると、すごく楽しい。

ずっとずっと、今が続いてほしい。

母上、あなたは僕に何も与えてくれなかった。せめて一つだけ、お願いしてもいいですか?

どうか、僕にかけられた呪いをといて。

にぎやかな鳥の鳴き声で、目を覚ました。

薄いカーテンが引かれた窓の外が明るい。

一瞬、どこにいるのかわからなくて戸惑い、そういえばリアムの伯父様の城に来ていたと気づく。

そして今日は、僕とリアムの結婚式だ。|急遽《きゅうきょ》決まって、この城の人達が準備してくれた。

昨日の夕餉の後に使用人の女の人が来て、疲れてるところを申しわけありませんと謝られながら、衣装を合わせた。彼女は使用人頭でノラと名乗った。

ろくな準備期間もなく式を挙げようと決めたのはこちらだ。謝られるなんてとんでもない。

「僕の方こそ無理なことを頼んでしまってごめんなさい」と謝ると、ノラは「とんでもありません」と笑った。

「このような華やかでおめでたいことは久しぶりですので、皆、喜んで準備してるのですよ。ラシェット様も、とても楽しみにしてらっしゃいます。本来ならリアム様は、王城で式を挙げられるはず。それがこの城で挙げていただけるのですから、準備を手伝えることが、とても光栄で幸せです」

「そう言ってもらえると嬉しいです。ありがとう」

ノラが、優しく僕の手を撫でて首を振る。

「あなたは見た目だけでなく、心もお美しい方ですね。私のような使用人にも気を使われ、感謝の言葉を口にされる。さすがリアム様が選ばれたお方です」

「当然だ。俺は人を見る目がある。フィーほど優しく可愛い人はいない」

すでに衣装を合わせ終わっていたリアムが、腕を組んで自信ありげに言う。

ノラが何度も頷き「そうでございますね」と笑う。

「フィル様、明日はおめでたい日ですので、こちらの白地に銀糸で|刺繍《ししゅう》がされた服にしましょう。しかしその美しい銀髪は、暗めの衣装でも映えるでしょうね」

「あー…、国では、黒地や紺に銀の刺繍が入ったド…服を着ていました」

「まあ!それはさぞ美しかったでしょうね。お作りしますので、いつか着てくださいますか?」

「いいですよ。でも期待にこたえられるかどうか…」

「大丈夫だ。俺は見たことあるが、かなり美しかった」

「リアム様がそう仰られるのなら、ぜひとも早くお作りしなければ。せっかくですのでリアム様とお揃いでお作りしましょう」

「ああ、それはいいな。ぜひそうしてくれ」

「かしこまりました。フィル様、これで終わります。今夜はよくお休みになってください。では失礼します」

「ありがとう。おやすみなさい」

ノラが、微笑みながら深く頭を下げ、衣装を抱えて出て行った。

部屋に静寂がおとずれる。

リアムと目が合った僕は、明日のことを考えて恥ずかしくなり目を伏せた。

銀の王子は金の王子の隣で輝く

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