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「俺についていく?だめだ。」
思いの外、あっさりと断られ、呆然とする。まあ、正直断られるのは想定内だった。しかしこんなにもあっさりと断られるとは、
「第一な、俺等の組織犬神に入るには厳しい試験に合格しねーといけねえんだ」
犬神ーそれは後から聞いた噺だが、世界中にある異世界からの扉を閉め、化け物を滅する、その組織を犬神というらしい。分かっている。大した強さを持たない俺がそんなエリート集団に割って入れるわけがない。
「それでも入る覚悟があるか」
……はい?と、思わず聞き返してしまった。もとより、このような生活よりも生きる可能性があるのなら当たり前にそっちにかけるしか、俺の生きる可能性はない。希望に賭けるしかー
「その試験!私も受けたいです!!」
手を挙げたのはリチナだった。この言葉にはさすがのカムイも驚いたらしく目を見開く。カジがすかさず止めに入る。
「だめだよ!!危険すぎる!」
「もう危険はお互い様でしょ!」
うぐっ…という言葉を最後にカジが黙る。まあ、確かにリチナの方が年は一つ上だ。だからといって、俺が行かないわけにはならないし、リチナを行かせる理由もない。どうしたものか…と、悩んでいると、カムイが口を開く。
「お前ら…俺の継ぐ子になるか?」
継ぐ子…それはノルウェーでは有名な、弟子を取る制度だ。しかし…法律では禁止されている。
「大丈夫だ。犬神の権利で通らせる。」
二人が顔を輝かせる。これで、苦しい生活から逃れられるわけではないのかも…いや、ない。しかしわずかに、ほんのわずかに希望の光がカジ、そしてリチナの眼前に広がった気がした。
「よし、それでは犬神の仕事内容を伝える。」
カムイから聞いた噺は正直信じられないものばかりだった。世界中に異世界に繋がる扉があること。そこから、ダークミニオンというモンスター達がいるということ、そして、その扉を閉め、モンスターを狩るのが犬神の仕事だと。
「信じられないよな…でも、覚悟はしろよ」
「はい!!」
ー早朝ー
鶏のククノマルが朝の合図を告げる。これが、ククノマルの声を聞く最後の声かもしれない。だが、生き残るためだったら全てを捧げる。小屋の扉から数歩歩いて15年間住み続けた小屋に向かって礼をする。顔を上げると、丁度リチナとカムイがやってきた。
「あいさつは済んだか」
少し切ない、しかし優しさを帯びたカムイの声が響く。その切なさを感じ取り、少し瞳が潤んでしまう。しかし奥歯をかみしめ、それを堪える。隣のリチナを見ると 、リチナも同じような顔になっていたが、俺よりも顔がくしゃくしゃだ。
俺よりも前に泣いたのだろう。正直彼女までついてくるのは反対だった。
彼女にも危険が及んでしまうかもしれないし、なにより彼女に会えないことよりいなくなってしまう方が怖い。そんな追憶も遮り、午前5時、中央区へと3人は出発した。
30分ほど野道を進んだだろうか。太陽が少しずつ明るくなってきて、道を照らしていく。中央区まではおよそ徒歩で6時間。およそ半日の道のりになるだろう。
実際、中央区にいったのは、親の監獄に面会に行くとき、許可証をもらった一回のみだ。まあ…その時は親に罵倒されみすみす逃げ帰ったのだが…。しかし中央区の煌めきだけは心に残っていた。
中央区で生活しているのは、犬神と個人の剣士、または三級貴族から一級貴族の貴族階級のもののみだ。
それほどまでに中央区は神聖な町である。
「止まれ」
カムイの声に思考を遮られ、立ち止まる。もう道の先はほとんど見える。茂みに何かがいる。狼ーいや、犬型のダークミニオン!!
するとカムイがカジに剣を捧ぐ。
ーえ?という顔をするが、カムイの瞳に一切の迷いはなかった。切れ。その一言しかカジの頭の中にしか言葉はなかった。カムイがしていた構えとは少し違うが剣を構える。すると、茂みからミニオンも出てくる。立ち上がると、八尺はある。狼というより、もうこれは人狼だ。
「千華蕃山!!」
カジが放った一撃は、人狼を貫き、首から腰まで斜めに切り裂いた。少し鈍い咆哮が響き、大きな巨体が後ろに倒れ、地ならしが起こる。
「うん合格だ」
カムイが出てくる。息が切れそうだが、なんとか笑顔をつくる。しかし、あまりいい気はしない。これが戦い…そして、
生き残る術。
男は実感した。生き残るには、戦うしかない。一つでも多く、骸を並べろ。
2話
童は戦に目覚める
コメント
2件
ありがとうございます!
トビラトジ第2話来たー!😇オリジナルでこんなにおもろいって何なんですかー😭