テラーノベル
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午後6時、3名が中央区の門へ現着した。
門といっても、すぐそこは街だ。左は食料店。アラビア風の衣装を身にまとった女が、男たちを口説き、悪趣味なカエルの唐揚げや、イモリの串焼き。さらにはこの近海、マリングレイス宝海で採れる伝説の魚、黒虹の主の刺身までもが売ってある。どれも村にはない商品で、食べたことはもちろん、見たこともない。右に首を向けると、そこには雑貨用具店が集合していた。ラサニエーラ鉱山で採れるラサンド鉱石で作られたアクセサリー、ピアス。さらには剣まで。これはカムイに聞いた話だが、カムイの剣はこの西の山ラサニエーラ鉱山の石と東の山のサントロイス山岳の石を削り合わせて100年かけて作られたものだという。
門の前ではロバや馬が、商人達を運んでいる。街の空には、空素術を使ったオレンジ色のランタンが飛んでいる。蒼い空とも相まって、街は幻想的に彩られている。と、街に見とれている間に、カムイ達を………見失った。
「………やってしまったー!!」
中央区の、しかもこんなに目立つ場所で一人になってしまった。どうすればいいだろうか。生憎今は無一文だ。しかもカジに知らない人に話しかける…というコミュ力はあるわけがない。絶望しかけていたその時ー、
「あの…大丈夫ですか?」
天使のような声に反応し、顔を上げると、金髪に、青色の瞳をして、髪を腰まで伸ばしたまさに天使のような女の人が立っていた。
その美しさにしばらく沈黙していると、少女の方から声を掛ける。
「あ…、大丈夫でしたか?お困りのようでしたので」
「あ…いや……全然大助かりです」
気のせいか、周りがざわついている気がする。この少女が美人だからだろうか。
少女と話し、中央区のど真ん中、中央セントラル泉の宮廷前まで案内してもらうことにした。
「私の名はサラフィナです。」
「カジです…」
そうして二人は宮廷へと足を進めた。
一方、リチナは焦っていた。後ろをみると、カジの姿はなく、どこかに行ってしまっていた。どこかに連れ去られていたらどうしよう……!と、いう心配をよそに、カムイが言った。
「とりあえず宮廷に行こう。なにか情報が得られるかもしれない。それに今回ここに来た理由は…」
「第十二代国王サラフィナに継子継承状をもらうためだからな」
しばらく道を歩くと、一気に視界が開けてきた。今までの街の煌めきとは比べ物にならないほどの輝き。見上げるほどの巨大な城。入り口には金色の獅子。これが、中央区、そしてノルウェーが誇る城。グランツェヅル城だ。
「すごい……」
サラフィナが言う。
「お城。入られますか?」
…野生育ちのカジには城に入る気は毛頭なかった。いや、意味が分からなかった。
「あ、申し遅れました。私第十二代国王サラフィナ・リーブ・ウィーンと申します。」
「こ…国王!?」
まさかの返答にカジは戸惑った。その戸惑いを感じ取ったか如く、城の門が開いた。すると、中から銀髪とピンク色の髪の騎士二人が出てきた。
「国王!探しましたっす!」
ピンク色の髪の騎士は思った通りチャラいような口調だ。しかし、つけている鎧は誰が見てもわかる一級品だ。しかも剣はおそらく神器だろう。すると、銀髪の騎士が口を開いた。
「そちらはどなたですか?」
「中央区の迷い人です。カムイさんの匂いがしました」
「!?カムイのこと、知ってるんすか?」
「ええ、彼の弟子でしたから」
数秒の沈黙の後にええーっ!!という声が宮廷に響いた。
長い廊下を歩き、部屋に入ると、すでにカムイとリチナがすでに部屋にいた。そして、もう一人青髪の騎士が立っていた。
「探したぞ…」
「全くおっちょこちょいね。」
謝罪をして、サラフィナと共に席に座る。
「お久しぶりです、師匠」
「ああ……さっそくだが、継子継承状を…」
と、いいかけたところ、城にサイレンが鳴り響いた!すると、青髪の騎士が叫ぶ!
「襲撃です!裏庭庭園に5名!」
カムイと共に裏庭に急ぐ!
裏庭に行くと、すでに何人か兵士がやられており、4匹のクマ型のダークミニオンと真ん中に黒ローブの男が立っていた。異様に曲がったナイフに毒を塗ってある。明らかに危険だ。
「俺があいつをやる。お前と騎士たちはクマ型の相手をしろ!」
こくりとカジが頷く。サラフィナから騎士の名は聞いている。ピンク色の髪の毛がミミズク。銀髪がプロング。青髪はサラフィナの弟。ザラインというらしい。
ミミズクが口を開く。
「カジくん!俺等は熟練の騎士!ダークミニオンの相手も何回かしてきた!そりゃ犬神の相手にはならへんけど、君は目の前のクマに集中せえや!」
構えを作って叫ぶ。
「了解!!」
#3王国の出会い
コメント
1件
いつも思うけど、何でオリジナルなのに面白いんだよ〜😇