「あんたなんか最初っからいなければ
良かった…」
風を切る音がした。
自分の右の頬にじんわりと痛みを感じる。
…頬を、切られた。
「…な、瑠那っ!」
「んぇ…ふぇ?」
目の前に居たのは私の義姉、由香だ。
「..顔色悪いけど大丈夫?」
「あー…悪い夢は見た」
昔親に虐待されていたことはあるが…
昔の話だ。わざわざお義姉ちゃんに話す話
でもない。
「体調悪くなったら言ってね?」
「はーい」
いつも義姉には今日の予定みたいなものを
報告している。
今日はなにかあっただろうか…
…思い出した!
「お義姉ちゃん~」
「なに?」
「今日家に友達呼んで遊ぶね~」
「あ、明奈ちゃん?」
明奈は今いるこの家の家族になってからの
友達だ。まぁ…友達と言えば明奈ぐらいしか
いない。
「そうそう、明奈」
ふと、家のインターホンが鳴る
「瑠那ー!明奈ちゃんだよー!」
「今行くー!」
「瑠那ぁぁぁぁぁあ!」
「ん、んぇ?」
いきなり明奈に抱きつかれる。…明奈が
太っているとかじゃないが、重い。
「明奈、歩けないからとりま離れよ?」
「ん~!冷たい!」
「..私、彼氏ちゃうよ?」
冷たいとか言いながら明奈は離れてくれた。
「家入って~」
「おけ~」
「え、瑠那強っ!」
ここは私の部屋。二人で戦闘系のゲームを
している。明奈には私が結構強く思える
らしく、むくれている。
「…私、そんな強いかな?明奈が弱い
だけじゃ…」
「お黙りぃ!」
苛ついたらしく、明奈に遮られる。
「ねぇ、瑠那、スピードやらない?それなら私も負けないし」
「いいよ~」
本棚の隅からトランプを取ってくる。
「明奈、赤と黒どっちがいい?」
「ん…赤!」
どんどん明奈がカードを出していき…
結果、明奈の勝ちだった。
「っしゃ~!」
「よかったね~」
いつの間にか、遊びすぎて居眠りを
していた。
明奈は起きていなくて、寝息を立てて
寝ている。
声が聞こえた。お義姉ちゃんでも、明奈でも
ない声だった。
『殺せ』
「…え、?」
『殺せ』
「….?」
いきなり、視界が暗くなる。なにも
考えられない。ただ、そんな自分の思考の中で、鮮明なものがあった。
憎い。嫌い。殺したい。
そんな気持ちなんてさっきまで無かったはずなのに、そんな気持ちが生まれた。
目を覚ました。
私の視界の先にあったのは、明奈の幸せそうな寝顔では無かった。
その代わりにあったのは。
明奈の血で貼りついた髪と、血のついたナイフ、
だった。
コメント
2件
面白いです!続編期待してます!!