明奈がいない事実が分からなかった。
お義姉ちゃんも、クラスメイトもいるのに、
明奈だけがいなかった。
あの声は、誰だったのだろう?
あの溢れ出た気持ちは、なんだったの
だろう?
あれから6年の時が経った。
あの後、私のあの気持ちと、声の正体が
分かった。
私は、「愛殺病」という奇病だった。
愛した人を殺してしまう病、だそうだ。
病因はまだ解明されていないらしい。
もう、私は。
誰かを傷つけたくなかった。
どうしても、私は人を愛してしまう。
好きになってしまう。
私は、いなくなるのが一番。
そうでしょ?明奈。
私一人の部屋。
小さいアパートの屋上。
今日、私は、ここでいなくなる。
ばいばい、ありがとう。
飛び降りようとしたその時。
屋上のドアが開いた。
「…え、なにやってるんですか…..?」
屋上のドアを開けた彼は、幸輝くんと言う名前らしい。年は私の一つ年下。偶然なことに、彼も飛び降りようと屋上に来たらしい。
彼といろいろな話をした。
互いの過去の話、死にたいと思ったきっかけ、私の奇病の話、も。
「あの…瑠那さん」
「..なんですか?」
「…付き合っちゃいません?」
「…幸輝さん、聞いてなかったんですか?
私の話」
愛殺病のことを知ってなお、そんなことを
言うなんて、自分から死ににいくのと同じだ。
「ちゃんと聞いてましたよ、」
「じゃあ、なんでそんなこと…」
「僕が隣にいます!誰でも、誰かの愛がなければ生きていけないし、僕は別に…正直、殺されてもいいですし。」
「…」
「…ありがとう、ございます。よろしくお願いします…..。」
こうして、いなくなって楽になる夜は、誰かに救われる夜になった…。
コメント
2件
めとちゃ楽しみや!! (めっちゃ楽しみや!!)