血の繋がった両親でさえ愛してくれなかったのに、運命の番に愛されるわけない
だけど、運命の番に出逢いたくて母親の借金を背負って、上京した
今は、アルバイトをしながら生活を繋いでいる状態
居酒屋のバイト、コンビニバイト、スーパーのバイト、会社の清掃バイトの4つを掛け持ちしている
今日は清掃バイト、帰ってからコンビニバイトに行って「はぁ…」
「どうしたの?千紘くん」とバイトの先輩である、女性の加藤さんが心配しながら聞いてきた
「あ、ええっと考え事してて…」
「若いうちは考え事して、沢山頑張る!それに尽きるわ!まだあたしも50代だけど!孫見るまでは死ねないって思ってるし!!頑張るわよ!!!」と背中を押された
加藤さんも頑張ってるし、僕も頑張らないと!
「あぁ!そういえば千紘くんって、アルファに会いたくて上京して来たんじゃなかったけ?」
「はい…でも、普通に過ごしてたってアルファに会えないんですね。一度もまだアルファに出会いがないですね…アルファと会えないまま、ずっとアルバイト生活って感じになりそうです」と言うと「じゃあ!千紘くんにプレゼントするわ!バイト頑張ってくれてるし、たまにのご褒美ね!」と言って持ち場に戻って行った
なんだったんだろう…?と思いつつも、清掃バイトが終わり片付けをしていた時、加藤さんからこれっと渡された
渡されたものは豪華な包み紙?商品券とかが入ってそうなものを渡された
「なんですか?これ」
「私!まだ、若い子たちに負けたくないから高級エステ行ってるんだけどね!入会の時に応募してって言われて当たったのがそれ!私じゃあ使えないのよ!ほら、中身見て」と言われて中身を開けるとアルファとオメガ限定のパーティーの招待券だった
「オメガの診断書があれば入らせて貰えるらしいから!ぜひ行ってみて!まぁ、ろくなアルファだったとしても、高級なディナーがあるはずだから、腹いっぱい食べてきな!」と言われた
腹いっぱい…借金があってここ数日間はもやし生活だった、たとえ、運命の番がいなくとも、行ってみる価値はある!
「加藤さん、ありがとうございます!行ってみます!」
「行っておいで!あ、あとちゃんとドレスコードはしっかりしていきなさいよ~まぁ、私の行ってるエステもアルファ様御用達みたいな感じだから、ちゃんと身なりのしっかりした人が行く感じだし!って、時間ヤバっ!じゃあ、またね!」と言って帰って行ってしまった
ドレスコードとはなんだろう?スーツとかってことかな?
でも、スーツは持ってない。大きめのスーパーとかに売ってないかなぁ…でも、お金かかっちゃうし
それでも、見た目だけはしっかりしていこう。と思い近くにある大きめのスーパーに行って1番安いスーツを買い、パーティーの日になった
受け付けの人にオメガの証明書とパーティー券を渡したら通してくれて部屋に案内された
天井には、キラキラ輝くシャンデリアに金を基調とした豪華な広い部屋だった
「うわぁ~」
この世とは思えないほど綺麗だなぁ~なんか、異世界に来たみたい!貴族に転生したみたいな?
でも…みんな綺麗なスーツに豪華なドレスを身にまとっていて、僕の存在は浮いていた
帰りたくなったけど、ご飯を食べるまでは帰れない!と元々心に決めていたので、ご飯を探しに行くけど、ウェイトレスの人が銀のおぼんにワインやシャンパンを持ってるだけだった
昨日からご飯抜きにしてきたのに…
「はぁ…」とため息を着いた途端会場の電気が全部消えてステージの真ん中にスポットライトが当たった。だけど、ご飯を食べれない悲しさでその事にさえ、興味が湧かなくなり、下を向いていると、綺麗な心地よい男性の声が耳に入った
誰だろう?と思って顔を上げてみるとステージの方を見るとかっこいい美形の男性の方が立っていた
心臓の鼓動が早くなって、あの人にしか目がいかなくなる
『運命の番』
あの人を見た時、頭の中にその文字が思い浮かんだ
だけど、こんな凄い綺麗で華やかなパーティーに呼ばれて、ステージに立つことはよっぽどすごい人なんだろう…
だから、こんな僕が会ってしまったら、あの人の人生の邪魔になってしまう
もしかしたら、もう…婚約者とか、番がいるかもしれないし…そう思ったら、近づけなくなった
帰ろう…。そう思ったけど、どうしても足が動かなかった
あの人と喋ってみたい
喋らなくても…近くで見て直ぐに帰ればいい。そう思ったら、今まで動かなかった足が動かせれた
人混みを抜けていって気づかれない程度にステージの少し前に来た
そして、挨拶が終わってステージから降りてくる時、その人には大勢のオメガが群がってしまった
しかも、そのオメガ達はみんな可愛くて高そうな装飾品を身にまとい、品があって、とっても綺麗だった
やっぱり、こういう人達がアルファと付き合えるんだ。平民以下の僕は付き合えない
今まで、何回も何十回も名家のお金持ちだったらとか、もっと可愛かったら、もっと美人だったらとか思ってたけど、僕には変われない
帰ろう…会わなかったことにすれば誰も僕も傷つかない
そう思った時、綺麗な音色が流れ始めた
辺りを見渡すとどうやらダンスを始めるらしい
僕はダンスなんか踊れないので、関係ないと思って出口へと向かったら、目の前から1人のアルファの男性に声をかけられた
髪色が金髪に近い色で、いかにもチャラそうな男だった
「ねぇねぇ、帰るの?俺と一緒にダンスしない?」
「いや…ダンスは踊れなくて…」
「いいから!ダンスしよ~俺がエスコートとやらをやってやるぜ!」とウィンクしてきた
それでも「ごめんなさい…」と断ると
「あぁ?俺様がダンスを誘ってやったのに、ブスのくせに!生意気な!」と僕のことを罵り始めた
「ブス!ブス!ブス!だからお前はブスなんじゃねぇの?wwwwww」と笑われて僕は下を向くしかなかった
でも、事実だから否定もできないでいると肩を引き寄せられた
誰だろうと思って顔を上げると、運命の番の彼だった
「彼は私のダンスの相手だ。君に傷つかないように断ったのに、どうして、そんなに彼を責めるんだ」とチャラ男に言うと
「と、東城!ひ…ひぃ…」と言って腰抜かして、急いで出口へと向かって行った
「あっ…ありがとうございます」と言って頭を下げた
「ちゃんと、お礼はします!このご恩は一生忘れません、本当にありがとうござ…」と言いかけたところで「礼なんかいい、それよりダンスが始まってしまう」
え?あれって本当に踊るってこと…だったの…?
本当は踊りたいけど…僕は踊れないし…
「断った口実とかじゃなく、本当に踊れないんです…ごめんなさい…」
「そうか…とっても残念だな…。・・・でも、俺に身を任せて踊るってのはダメか?」
「ダメじゃないです…」
「じゃあ…」
「でも、それでも…僕は踊れません」
どれだけエスコートされたって、無理だ。体育の成績なんか最低評価だったし、昔から運動音痴だって笑われてきた
そんな笑いものと組んだら、笑われてしまう、オメガのせいで恥をかいたなんて酷すぎる
「本当にごめんなさい、せっかく誘っていただいたのに、それに、助けてくれたのに…ごめんなさい」
「何があったかは分からないが、たまには誰かに身を任せてもいいんじゃないか?」
それ聞いた瞬間、肩の重荷が外れた気がした
一人で生きていくってことが当たり前だったから、初めて誰かにそんなことを言われた
この人なら、一緒に笑われても許してくれるのかな…
「少しでも、踊りたいって気持ちがあるなら手を取って」と言って大きな手のひらを差し出してきた
1度迷って手を引っ込めた
ダメだってわかってる。釣り合わないってわかってる。でも、今だけは…今だけはこのわがままを許してくださいと心の中で言ってもう一度手を出して、掴んだ
それから、引っ張られるようにしてダンスの場所に行くと、一瞬にして静かになった
やっぱり、何かやらかしてしまったと思って、下を向いて下唇を噛み締める
場違いだったよね…。
「そんな顔をするな、ただ皆、驚いているだけだ」
何に対して驚いているんだろう…?と疑問に思ったところで曲が始まった
あたふたしている僕に、優しく「ただ、上を向いていればいい」と言ってされるがままだったけど、何故かダンスを踊れているような気がした
幸せな瞬間ってこういうことを言うのかな…
今まで人生で一番時間が過ぎるのが早かった
ダンスが終わってしまった
あぁ、もう終わってしまったんだ
僕はもう、喋る口実も会う口実も無くなった
「助けてもらえて、こんな素敵なダンスも踊らせて貰って、本当にありがとうございます。ちゃんとお礼はします」と言って頭を下げて、出口へ向かおうと振り向いた時、腕を掴まれて引き寄せられた
「まだ、名前聞いてない」
「あっ、ええっと…教えられるような名前では…」
「教えて欲しい」
「双葉千紘(ふたば ちひろ)です」と言うと強引に顎をクイッと持ち上げられた後、必然的に目を見てしまった
そしてボソッと『運命の番』と呟かれた
あぁ…ダメなのに…
見ないようにしてたのに…
逃げようと思ったらギュッともう一度抱きしめられた
そして、だんだん匂いは濃くなっていき、アルファの匂いに耐性のない僕は、一瞬にして完全にヒート状態になってしまい、体が耐えきれなくなって、気絶するように眠ってしまった
コメント
6件
白井さんの話はいつも面白くて好きです!(o^∀^o) 続きが気になります!(*^-^)
お読みいただき、ありがとうございます!あらすじは、夜ぐらいに更新します〜 皆様からのいいね、コメントお待ちしております(*ˊ˘ˋ*)。♪:*°