「お前の祖母、サリアについて俺から話したいことがある」
祖母、か…。おばあちゃんが亡くなってからもう9年経つ。
「先に言っとく。俺の本当の名前は“シウル”だ。と言ってもまだお前に名を名乗ってなかったからな。シウルで覚えてくれて構わない」
何だって…、本当に俺の予想していた通りだったというのか…?昔聞いた祖母サリアから出た『シウルは世界で1番好きな人』というのは、目の前にいるこの男だったんだ。
「そうか…」
「…こっから話は長くなる」
────何十年も前の話。
これはサリアがまだ15の時だった。
サリアは元々アリンと同じ世界の者ではなかった。そして、自分の生まれたこの地位を恨み、憎み、魔法を暴走させていた。
そんな彼女に安らぎは突如現れた。
真夜中、白馬を走らせる男。その姿は月や星以上の綺麗さだと、彼女サリアは一目惚れをした。
それから、彼女の魔法の暴走は程なくして沈んだが、同じ身内同士で対立が起きてしまった。
サリアの肩を持つものとサリアを抹殺しようとするこの2つの対立だった。
サリアは1歳の頃には魔法の才能を開花させ、4歳半で誰よりも強い魔法使いとなった。
“聖罪の魔族”と呼ばれた選ばれし、3人の魔法使いから誕生した史上最悪でありながら史上最強の家系。その中で生まれたサリアは誰よりも強い1番の力を手に入れたのだった。
話は戻り、彼女は毎晩飽きずにひたすら外を眺めては彼を探した。そしてついにまた現れた時、彼女は思わず呼んだ。『あの!!』そう言うと彼は振り向き、彼女の神秘的な美しさを放つ姿に彼もまた一目惚れしたのだった───。
そこからの話は早く、彼が国王の息子であると知った彼女はそれを怖いともなんとも思わず、それでもいい、と言った後、彼は誰もいない場所で2人でいようと彼女に言った。
それから2人は毎晩のように“あの茂み”で密会をした。時を過ごした。かけがえのない思い出が2人の中で増えていく。
そんな時、彼シウルに突然お見合いの話と即位についての話が入り込んで来た。
お見合いは要らないと即答をしたが、次々と来るその話はもう手には負えないほどとなっていた。
そして、即位については国王、父の難病による悪化のせいでいつ亡くなってもおかしくない状況となり1日中多忙な日が続いた。即位のための大事な資料や国の方針、作り、全てのことを頭に入れなければならなかったからだ。
そんな中、彼女サリアは1人寂しくあの茂みで時を過ごしていた。ただひたすらに淋しいという感情だけが募っていく。
彼は1日でも早く彼女に会えるよう一生懸命に毎日を頑張っていたが、予定より早く父、国王が死んだことにより茂みになんかいけない状態となってしまった────。
そして、数ヶ月後サリアのもとに届いたのが
あの手紙だった。
手紙…(第7話 2つ目のシウル 参照)