【企画】増殖プログラム

寝室から出てきた俺を、佐久間くんとふっかさんが不安そうに見る。俺はパソコンに向かい、送ってもらったコードを打ち込んだ。

たった3行くらいのコード。これで、1人の阿部ちゃんが消えてなくなるのだと思うと確信はあったのにエンターキーを押す手が震えた。

画面に表示される『リセットプログラム起動』の文字。25%、60%、86%、99%……

『完了』

特に何も変わった事はなかった。

完了したら、パソコンは落としていいと言われていたので指示通りにする。

弾かれたように佐久間くんが寝室を見に行き、小さく聞こえた『えっ』という声に俺とふっかさんも寝室へ駆け込んだ。

🖤「なんで」

そこには、抜け殻になった2着の服だけが残っていた。

1週間活動休止という事にしてもらって、俺は寝食もままならず部屋で泣く日々を過ごした。

どうして2人ともいなくなってしまったのか、件の人もわからないと言っていた。リセットプログラムを試作していた段階では、2つ複製されても1つ選んだほうだけを消す事ができていたと。

様々な事情から守るために、阿部ちゃんの事は伏せられた。ちょうど撮影などもなかったし、動画は他のメンバーが交代すれば良かったので何とか誤魔化しながら持ち堪えた。

でもこんな日がいつまで続くんだろう。

💙「めめ、来たよ」

しょっぴーが様子を見に来てくれた。

洗濯を回し、他のメンバーが持ってきたゼリー飲料なんかのゴミを拾って、部屋を整えているのをぼんやり見る。

💙「水買ってきたぞ。ここ置いとくから」

🖤「うん」

💙「阿部ちゃん、絶対帰ってくるって。お前が信じてやらなきゃどうすんだよ」

🖤「うん……」

わかっているけど返事ができない。

しょっぴーの言葉も水の中にいるみたいにぼんやり聞こえる。

💙「なぁ、スマホ鳴ってる」

🖤「しょっぴー出て」

💙「あーもう」