テラーノベル
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落ちる
落ちる
落ちる
既に月はその体のほとんどを雲に隠し、すりガラスに差し込むかの様に曖昧な光を放っていた。
恐怖で高鳴る心臓とは裏腹に、僕の体はひどくゆっくりと落下しているかの様な錯覚を覚えた。
生暖かい灰の血は僕の頬を滑り、共に落ちていく。
死の迫っている音がした。
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ザッザッザッ
ゆっくりと瞼を開く。
ザッザッザッ
誰かが僕をおぶっている様だ。
比較的長く、白い髪、
灰だ。
彼の身長は僕よりも数センチ小さかったはずだ。
よく鍛えているのだろう、自分より大きな人間を1人おぶって走るのは相当辛いはずだ。
「灰……..」
「起きたか!?しっかり掴まれよ!!」
あれ?巨鳥はどこだ?
なぜ森の中を走っている?
「灰…..あの鳥はどこに行った?」
「壊されたんだよ!俺の腕も一緒にな!」
そう言われて思い出した。
しかし、灰の腕にはあの長い札が巻かれているだけで、変化が見られない。
「おい、怪我してな….」
突如左の木が爆散した。
いや、正確には根本の部分が貫かれた様に見えた。
異常に長い手によって。
「次は何に追われてんだよ!」
狼、雉と来て、次はなんだろうか。
「猩猩(しょうじょう)だ!!あいつらの腕は大体100メートルくらい伸びる!避けんのに必死だからあんま話しかけんなよ!」
風を切る様に灰は走る。
彼の腕のことが気がかりだが、今は話さないでおこう。
「チッ!!埒があかねぇ!」
灰は先程のものとは異なる木札を取り出した。
書いてある文字は読めないが、月明かりに照らされて、黄土色に反射している。
灰はその木札を横向きに咥えて強く噛んだ。
すると、それは大量の砂に姿を変え、猩猩たちの視界を奪った。
「なんだ….今の…」
木々のせいで、この森にはほぼ風が吹かない。
にも関わらず、大量の砂は宙を舞い、荒々しい波のように猩猩の行く手を阻む。
「ペッ!ペッ!クッソ、これ砂が口に入るんだよ」
灰はさらに速度を上げ、森の暗闇に進んでいく。
「どこまで逃げるんだ?」
灰は息を荒げながら答える。
「もうそろそろ山の頂上に着く、そこでお前に選択肢がある」
「…..選択肢?」
「そうだ」
「こんな状態だ、さっきの家には戻れないだろう。 あんな化け物たちに襲われ続ければ俺だってお前を守り続けれない」
そうだ、僕の家はさっきの狼に破壊されたのだ。
これからどうすれば良いのだろうか。
「だから、この顕世を捨てて潜世に来ないか?」
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