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#山中柔太朗
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佐野の高熱も下がり、無事に現場復帰を果たした数日後。
今度は、いつも冷静なナース、山中柔太朗に異変が起きていた。
昨夜からの当直、緊急搬送や急変患者の対応が重なり、柔太朗は前日の昼から丸一日以上、水以外ほぼ口にできていなかったのだ。
「山中さん、悪いけどこの点滴の準備お願いします」
「、っ了解です」
ナースステーションで指示を受けた柔太朗だったが、返事とは裏腹に、その立ち姿はすっかり軸を失っていた。
極度の栄養不足と低血糖。急激に脳のエネルギーが切れ、視界全体が白く明滅し始める。
「……ぁ、や、ばっ……」
「柔太朗……?」
隣にいた仁人が声をかけようとした、次の瞬間だった。
ガタタァンッ!!
糸が切れたように膝から崩れ落ちた柔太朗は、そのままナースステーションのカウンターに肩を強く打ち付け、派手に床へ倒れ込んだ。
「柔太朗!!」
書類が散らばる大きな音に、全員が跳び上がる。
真っ先駆け寄った仁人は、瞬時に柔太朗の脈と瞳孔を確認した。
「重度の低血糖ショック。 呼吸と脈拍は今のところ正常値」
「柔太朗?大丈夫?聴こえるかー?」
駆け寄ってきた勇斗が意識確認を行う。
仁人が太智と舜太に指示を飛ばそうとした時、勇斗の白衣のポケットから、スマホのアラーム音がなった。
「やべ、俺外来あるわ、」
「こういうのは俺より勇斗ほうがいい。外来は俺行くから、後任せた」
「おっけ!」
仁人からパスを受けた勇斗は、すぐさま柔太朗の長い体を軽々と腕の中に抱き上げた。
「太智、50%ブドウ糖液準備!舜太は経口補水ゼリーと温かいスープ、終わったら外来回ってくれ」
「「了解!!」」
勇斗は柔太朗を処置室のベッドへ運ぶと、手際よく静注の指示を出した。
点滴が入り始めると、青ざめていた柔太朗の唇に少しずつ赤みが戻ってくる。
勇斗は柔太朗の隣に腰掛け、ゆっくりと意識が浮上してくるのを待った。
「……ん………」
「……お、柔太朗。わかる?」
ゆっくりと目を開けた柔太朗の視界に入ってきたのは、心配そうに自分を覗き込む勇斗の顔だった。
「はや……ちゃ……? 僕……なんで……」
「派手に倒れたんだよ、お前。前日の昼から何も食べてなかったろ? 低血糖でお休み中だった」
「……っ、ごめ、……お、れ……」
申し訳なさそうに顔を背けようとする柔太朗の頭を、勇斗の大きな手が優しく撫でた。
「謝るなバカ。お前がいつも周りをケアしてくれてるから、みんな助かってんだろ。ただ自分の燃料補給まで忘れるのはダメ」
そう言って、佐野は準備させていたスープをすくって、柔太朗の目の前に差し出した。
「ほら、まずは一口。無理せずちょっとずつ食え」
「……自分で食べれるよ」
「いいから! 倒れた患者はおとなしくドクターの言うこと聞くの!」
半ば強引に、勇斗にスプーンを口元へ運ばれる柔太朗。
「こども扱いしてない?……美味しいけど」
と小さく不服そうにしつつも、温かいスープをゴクリと飲み込むと、胃からじわじわと温かさが広がっていくのがわかった。
「だろ?舜太特製のゼリーもあるぞ。焦らずゆっくり全部食えよ」
勇斗の包み込むような豪快で温かい優しさに、柔太朗の強張っていた肩の力がフッと抜けていく。普段はクールに業務をこなす柔太朗が、勇斗の前でだけは見せる素直な顔だった。
「……はやちゃん、ありがと、」
「おう! ちゃんと全部食ったら、今日はもうあがり!」
勇斗の太陽のような笑顔に見守られながら、柔太朗は一口ずつ、噛みしめるように温かい食事を口へ運んでいくのだった。
コメント
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ああもう、心臓がぎゅっとなりました……!普段クールな柔太朗が勇斗の前だけ見せる素直さ、たまらないです。スープを一口ずつ食べさせてもらう景色、胸がじんわり温かくなりました。「自分の燃料補給まで忘れるな」って台詞、最高に沁みますね。どのペアもそうですが、お互いの弱さを包み込める距離感がこの作品の魅力だなって改めて感じました🩺🌷