コメント
3件
Your work is very interesting.
Hello
コメントくれたら幸いです!!
ありがとう。このコトバは僕に温かみをくれる。
ゴメンね。このコトバは私の思い出になる。
さようなら。このコトバはアタシにホントの愛を教えてくれた。
大好き。このコトバは貴方に愛を証明することができた。
嫌い。このコトバは私をずっと苦しませた。
言葉は何処に行ってもある、そしてそこには感情が生まれる。
言葉は感情を表すために生まれてきた。
この物語は言葉とともに生きる現代人を描いた物語である。
ある早朝、薄暗がりでカーテンの隙間から太陽の光が私を起こすように照っていた。少し散らかった部屋、きちんとしわを取られた黒のスーツ、眠そうに大きなあくびをする私。私の朝が始まる。朝は決まったバタートースト。トーストをカリカリになるまで焼いて、その上にバターを不時着させる。そのバターはこの世にしがみつく幽霊のようにゆっくりと溶けていく。私はトーストが嫌がる程にかぶりつく。“おいしい”心のなかで笑みがこぼれた。さらっとつけたテレビを見ているともう出勤の時間が迫っていることがわかる。
「わ、時間ヤバ。」 シワを取ったスーツを着て、昨日のうちに用意しておいた仕事用鞄を持ち、髪はいつもどうりのポニーテール。いつもの満員電車に乗って、いつもの“声帯精神”事務所につく。
そう。私が働いているのは声が出なくなった人のための病院?だ。病院と言っても病院らしきことはしないけど。
「ちょっと、10分も遅刻してるよ〜?」うちの事務所の社長が呟いていた。
「はいはい、10分だけでしょ〜?」社長と同じ口調で言い訳をしてみる。
「来てあげただけマシですよ、ここ働いてるの私くらいだし。給料も仕事のわりには少ないし。」ほんとその通りだ、と自分の中で うんうん と頷き。
「仕方ないじゃーん、この仕事だって一応公務員なのに、国がお給料出してくれないんだもーん。」子どもがだだをこねるように言った。
「そうですか。」元々諦めているのがわかるような返事を返した。
社長の胸付近には“木村 拓郎”という社長の名札がついてあった。やっぱりこの名前キムタクにしか考えれない。この名前にしようって親御さんもよく思ったな、私ならキムタクしか頭が考えられなくなってこの名前嫌いになりそう。
「社長はなんで“拓郎”になったんですか?」思ったことを口にしてしまった。
「え゛、そんなの親がキムタクにしたかったんじゃない?」社長は驚いたように言った。
「なにそれ、変なの。」
「聞いてきてひどいな〜」彼はくす、と笑った。
「じゃー、米田 夢っていう名前の由来は?」少しびくついた。だって、私の名前の由来なんて簡単だ。夢を待ってほしいってだけ…しょうもなさすぎる。
「そんなの夢をもってほしいからとかでしょ、」捨てるように言葉を話した。
「米田くんの由来はいいね。夢を持つなんて、ロマンチックじゃないか。」以外な反応が帰ってきて、少し戸惑った。
なんだか照れくさくて何もいえなかった。
「さ、そろそろ仕事はじめよっか。」
「はい!今日はどこでしたっけ、」
「今日は、岡田一家の“華”ちゃん」
「えっと、中野区ですね。」1時間半…遠。この事務所は埼玉県さいたま市にあるから遠いのである。
「ま、僕の車で行けば大丈夫だよ。」
私達は1時間半もかけて岡田さん一家に向かった。
「お〜、つきましたね!」大きい家だな、と思うと。
「大きいお家だね。」社長と思ってることが一緒だったのがなんだかもどかしくなってしまった。
「は、はい!早速訪問しましょう!」私がインターホンを鳴らした。
どたどたと急いでいるのがわかるような物音を響かした。
「は〜い!お待ちしておりしました。」二度も三度もお辞儀するお腹が大きくなった母親の姿が見れた。母親の横でうずくまっている5歳くらいの女の子の姿も見えた。緊張しているような瞳をこちらに向けた。
「こんにちわ。私達、声帯精神科を担当しております。米田と社長の…」
「木村と申します。」社長が私の説明中に割り込んで来ては、お辞儀をした。
「ご依頼されているのは、“華ちゃん”でよろしかったですか?」私が彼女の名を言うと私に視線を向けた。
社長が“華ちゃんの”前で片膝をつき、こう言った。
「こんにちは。僕は木村だよ」“華ちゃん”は期待に応えようとしないで、お母さんに強くしがみついた。
「華、この人は悪い人じゃないのよ。華の声を戻してくれるいい人なの。」お母さんがそう言うと“華ちゃん”は少し安心した顔をし、社長と私にそれぞれ一回ずつぺことお辞儀をした。
「では、中へどうぞ。」お母さんがそう言うと、“華ちゃん”は家の中に掛けていった。そして、私達もお家の中にお邪魔した。
リビングまで入り、お母さんが椅子に座るように招くと、社長はせっせと仕事用ファイルを取り出した。
「早速ですが、華ちゃんについてお話伺ってもいいでしょうか。」母親の瞳を見て伝えた。
やっぱり、事務所と雰囲気違うな5年この仕事やってるとどれがホントの社長かわからなくなっちゃうな。なんて思っていると社長は私に視線を送り、私に指示を出した。
「華ちゃん、お母さん大事なお話があるから、お姉さんと遊ぼうか。」
華ちゃんはキラキラした瞳で大きく頷いた。
ここ5年、いろいろな患者を見てきたけど一番声の負傷が多いのは10〜0歳の幼児だ。声の負傷の原因の一つがひどいストレスとショック。10歳までのうちに思ってることを親しい人間に話さなかったり、溜め込んでしまうと心が持たなくなって自分で自分を殺してしまう。そして、その結果が声の負傷に症状が現れるんだろう。特にこの華ちゃんは表情をあまり表には出さない性格。ま、社長はこんなことよりもっと見抜けてるんだろうけどね。
「華ちゃんはいつから声が出なくなったんですか?」本格的な話をするうえで大事なのは相手に“僕は真剣です。”と伝えること。のちに米田くんにも伝えていかないと。でも、本当にこれをしなきゃ仕事をしてる感じがしない。
「えっと…、一週間程前です。」母親は言った。
「なるほど。かなり最近なんですね。」記録として資料にBの鉛筆で書いていく。
「ちなみに華ちゃんの声が出なくなった原因は思いつきますか?」
「一つだけ…あります。」
「教えていただけます?」
「はい。 華は養子なんです。華が家に来たときは出産できないとわかっていたので、出産は諦めていたのですが、この前医者に行ったとき子宮を交換してくれる方がいるということで、交換させていただいて…子どもができました。」母親は自分の大きくなったお腹を撫でた。あのお腹の大きさからして出産5ヶ月っていうところだ。小さい子どもが母親のお腹をぱっと見て、お母さんのお腹大きくなったな。と感じるくらいの大きさだ。
「それが原因かもしれません。ちなみに華ちゃんは自分が養子っていうこと知っておられるんですか?」
「華には養子っていうことをずいぶん前から伝えてます。」
「わかりました。」僕は華ちゃんの方を見た。
「少し華ちゃんと二人で話させていただいても?」僕は母親の顔を見た。
「どうぞ。」
「華ちゃん、ちょっと僕と話そうか。」社長は華ちゃんの前まで来て目線を合わせるようにしゃがんだ。
華ちゃんは少し心配気に頷いた。社長は私に微笑み、社長が書いたであろう資料を私に渡した。
ここで第一話は終わります。この物語はフィクションです。