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がやがやと音が聞こえ始める。それはとてもぼんやりしていて上手く聞き取れない。でもヒトのような音。ああ、この声をボクは知ってる。きっと世界一な、優しくて心地いい声。鈴の音がチリンと聞こえる。この音も知ってる。まるで本当の人間のように接してくれていたヒトがよく付けていた鈴だ。

「そろそろ起きる時間だよ。」

誰かが話しかける。この声も知ってる。皆を助けてくれたヒトの声だ。重い重い瞼をゆっくり上げる。瞼を開ければ、マスターが目の前に居て視線を合わせるためにしゃがんでいる。マスターはしゃがむと僕の頭に手を乗せ、撫でる。

マリア「おはよう、このやんちゃ坊主め」

そう言って笑顔を浮かべる。それが酷く安心で、また会えたことが嬉しくて、僕は抱きついた。

マリア「きゃっ!?もう…」

マリアはしょうがないわねとでも言うような表情を浮かべアカネを撫でる。

マリア「2人とも、手伝ってくれてありがとう…ってノアは?」

マリアが後ろを振り返ると、そこには白衣を来たベツレヘムだけが立っていた。

ベツレヘム「さっき、どこかに走ってちゃった。」

マリア「あら…ベツレヘムだけでもありがとう」

ベツレヘム「どういたしまして!アカネ君のパーツをいじったのはかなり久しぶりだったけど、腕が訛ってなかったみたいで良かった!」

マリア「あ、アリィちゃん達に上手くいったって伝えなきゃね。」

ベツレヘム「危なくて追い出しちゃったからね…。私伝えてくるよ。」

マリア「ええ、お願い。」

ベツレヘムが部屋から出ると、マリアはアカネと面と向かって言う。

マリア「おかえりなさい。」

アカネ「ただいま…!」

そうアカネは返した。


研究所の外、ノアはただ一点を目指して外を歩く。

カイオス「ノア…?」

ノア「丁度良かった。君に用事があって…」

カイオス「取引の話か?ってことはアカネは…」

ノア「そっちは上手くいったよ。安心して。」

カイオス「じゃあ対価を払おう。お前が要求したのは、俺の今までの記憶全部…だったよな?」

ノア「うん。別に記憶喪失になる訳じゃないから安心して。」

カイオス「正直、価値があるとは思えないんだが…なぁ今からでも釣り合うものに…」

カイオスの話は遮るように、ノアはカイオスの両肩を掴む。

ノア「お釣りが来るレベルで釣り合うから!!君達にとっては価値がなくてもボクからすると、とんでもない研究材料だから!!だって」

ノアは声を落としカイオスに囁く。

ノア「滅びた国の記憶を持ってるんだよ?ボクにとっては、何よりも甘い蜜だよ。」

カイオスはノアの情熱に押し負ける。

カイオス「お、おう…。限界だろうに急いで来たのはそういう事か…。」

ノア「限界だからこそだよ!お願い!!」

ノアは両手を合わせ、カイオスに頼み込む。

カイオス「お願いも何も、頼んだことはしてもらったんだからしっかり払う。等価交換だ。どれくらい時間がかかるんだ?」

ノア「そんなにはかからないよ。」

カイオス「分かった。好きなタイミングでやってくれ。」

ノア「じゃあちょっと失礼しまーす。」

ノアはそう言うと、カイオスの額に手を当てる。

カイオス(脳みそでも見てるのか?これ)

ノア「よし終わり!今後の参考にさせてもらうよ!」

カイオス「役に立てたようで何より…しかし実感が湧かないな…。」

ノア「あっそうだ。」

ノアは何か思いつくと、カイオスに片手を差し出す。

カイオス「…?」

ノアがもう片方の手で力を込めると、それは水のと花の入った金魚鉢になった。

カイオス「ヴェネトス…!?絶滅したはずじゃ…!」

ノア「ヴェネトスという花はもう確かに存在しない。これは君の記憶を元に作ったあの炎と同じ”再現魔法”だよ。水中でしか咲かない花だなんて、ロマンチックでボクも好きだなぁ。」

カイオス「なんで…」

ノア「君の勇気は評価されるべきだ。貰いすぎだと思ってるなら気にしないで。ボクも君に恩があるんだから。」

カイオス「何もした覚えは無いが…」

ノア「君は”フェニックス”のまだ正式なメンバーだ。それでも、連絡せずボクに自由をくれてるからね。」

カイオス「それは…」

ノア「ボク達似た者同士だね。どっちも、見つかればきっと殺される。でも安心して。ボクは言うつもりは無いから、だからフェニックスから抜ける必要は無いよ。」

カイオス「そこまで見たのか…。賞金でも貰えそうなのにな。」

ノア「…だってボクはアヴィニア人だから。」

ノアはそう言って寂しそうな表情を浮かべる。

ノア「ヴェネトスがまた咲くことがあれば教えてね。君の研究応援してる。」

カイオス「ああ。俺が生きているうちに咲かせてみせるよ。」

ノア「それは楽しみだね。」

カイオス「お前はどうするんだこれから。」

ノア「?」

カイオス「俺の頼みのせいで、生命維持もギリギリな程に魔力が減っちまったし…」

ノア「ふふっ元からギリギリだよ。ボクが自分から望んだんだ。気にしないで。でも暫くは、アリィ達にくっついて行くかな。あの子のそばにいれば、時間はかかっても魔力の回復が出来るし。それと…少し気になることが出来て。」

ノアはそう言って目を伏せる。

カイオス「そうか。何から何まで助かった。」

ノアからの返事はない。

カイオス「ノア?」

カイオスがノアの方へ体を向ける。

ポルポル「ギ?」

カイオス「…そうか。休眠状態に入ったか。」

カイオスはポルポルを抱き上げ、研究所の入口まで歩みを進める。

カイオス「俺も応援してるよ。お前の復讐が成功に終わることを。」

ポルポル「ギー?」


アリィ「本当に良かったぁ!!」

アリィがアカネに抱きつく。

アカネ「あの、喜んでくれるのは有難いんですが、あの、ちょ、このひっつき虫どこでくっつけてきたんですか!?」

アリィ「四葉のクローバー探してたらいつの間にかこんなことに」

ジーク「…ゴミが増えるから1回落としてきなさい。」

アリィ「はーい」

アリィが部屋から出ると、ジークはアリィから落ちたくっつき虫を拾う。

ジーク「ゴミを増やして悪いな。アイツも悪気はないんだ、ちゃんと回収はするから…」

マリア「大丈夫よ〜。アカネも怒ってるわけじゃないし。」

アカネ「でも、クローバー探しなんて急に…」

ジーク「口止めされてるから俺は言えないぞ。」

アカネ「残念です…」

アリィ「落としてきた!」

ベツレヘム「おかえりなさーい。」

アリィは再び扉を開け部屋に入る。

アリィ「ジーク!ポルポル見つかった!!」

ジーク「本当か?」

アリィ「ほら!」

そう言ってアリィはポルポルと、ポルポルを抱えているカイオスを部屋に通す。ジークはポルポルを指でつつく。

ジーク「なぁこれ生きてるか?反応無いが…」

アリィ「ああそれ多分寝てる。」

ジーク「ねっ…!?」

アカネ「め、目を開けたまま寝ている…それも全開…」

マリア「…私も練習すれば出来るかしら…」

ベツレヘム「ちょっとこれ以上変なこと覚えないでよマリア…。」

アリィ「さっきねカイオスさんが、外に居たから拾ってくれたらしいの!ここまで追いかけてきてくれたのかも…。また会えてよかった!」

アリィはそういうと、カイオスの腕からポルポルを持ち上げ、くるりと回って喜ぶ。

ジーク「……良かったな。」

アリィ「うん!」

アカネ「まるでぬいぐるみみたいな見た目ですけど、これは一体…」

ジーク「悪魔だよ。」

アカネ「えっ!?」

ジーク「最初は俺も反対してたんだが、敵意が無さそうで便利だってことでな。おかげで肩こり知らずになれたよ。」

アカネ「?」

アリィははっとした顔をして、おもむろにポルポルを上下に振る。

ジーク「そんなことしたら起きるぞ。いいのか?」

アリィ「違う荷物!私達お金とか持てる分は持ってるけど、他の荷物!ここだと必要がないから忘れてた!!も、もし出てこなかったら…」

ジークも遅れてはっとした顔をする。

ジーク「そうじゃんやっば…」

アリィ「神様、ポルポル様〜!!お願い、荷物出てきてー!!」

ポルポルは今日もお腹が空いている

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