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「ロボットの披露ができなくなったの?」
萌奈と蒼真が三年生の文化祭。
ロボ研では一年かけて作成してきたロボットがあったが、急遽、行われるバザーの控室として部室を明け渡すことになったのだ。
「急に決定したらしい。ここは当日、バザー関連の控室になるから展示だけにしてほしいって」
蒼真が力なく部員にそう伝えた。
「こんなことってありますか? みんなで一年間かけて作り上げたものが披露できないなんて…」
二年生の尾身くんが半泣きになってつぶやいた。あれからロボ研は入部者を増やして、現在十五名の所帯となっていた。もちろん部長は三年の鳴海蒼真だった。
「先生にはここ三日間、頑張って交渉してきたけど、どうしても部屋が足りないからと断れらた。俺の力不足だ。みんな、すまない」
蒼真は部員に向かって頭を下げた。
「鳴海くんが悪いんじゃないから、頭上げてよ」
萌奈が蒼真を気遣った。
「…ありがとう」
顔を上げた蒼真に覇気はなかった。萌奈は蒼真が部員に報告するまで先生に交渉を頑張ってくれていたことを知っていた。だからこそ、蒼真の憔悴した顔をみると胸が痛んだ。
「図工室が使えないことはわかった。だったら、ほかのスペースを探して借りるのはどう?」
萌奈が提案すると他の部員だちも「それいいかも」と賛同しだした。
「でも、文化祭当日は控室や道具置き場でほとんどの部屋が使われる。余っている部屋は…ないと思う」
「諦めないで探しましょう」
萌奈がぐっと握りこぶしを作って蒼真に言った。
「そうだな…。もう少し時間があるからギリギリまで探してみよう」
この日はこれで部活が終わりになった。
「藤川、帰ろう」
蒼真が部室の鍵の返却を終えて昇降口でまつ萌奈に声をかけた。萌奈は廊下に飾られている校内の案内図を真剣な表情で眺めていた。
「怖い目で何を見ているの?」
蒼真は萌奈の隣に並んだ。
「鳴海くん。見て。ここのコンコース空いているでしょう。ここを借りるのはどうかしら?」
そういって壁にかかっている校内図を指さした。
「いいスペースだね。でも、ここは屋外だから雨が降ったらロボットは出せないよ」
冷静な蒼真が言った。
「そっかー…」
萌奈が落胆する。そして再び指で顎を抑え真剣な目で考え始めた。
「当日、絶対に使わない部屋ってあるかな?」
「うーん”給食室”とか?」
「そうね。でも衛生管理上、私たちは借りることはできない」
「…たしか防犯上、図書室と音楽室は施錠されるはずだ」
「じゃあそこを借りれば?」
「それは難しいよ。物がなくならないように施錠されるんだから。僕らが使わせてはもらえないだろう」
「そっか…でも待って…」
萌奈が目を皿にして校内図を見つめた。
「三階の東棟の突き当りにある高学年図書室と音楽室…。当日、この部屋が施錠される。なら二部屋に囲まれている前の廊下はがら空きよね?」
「そういうことになるね」
「だったらこの廊下を貸してもらおうよっ!」
「えっ! ああ…そっか。確かにスペースにも問題ない」
「ねっ、さっそく先生に交渉してみようっ」
興奮した萌奈は蒼真の腕を掴んで、職員室に向かうのだった。
「先生っ、是非、三階東棟の廊下をロボ研に貸してくださいっ!」
萌奈が懸命に顧問にお願いをする姿を、蒼真は萌奈の隣でじっと見ていた。こんなに熱い情熱を持った子だったのかと、蒼真は萌奈の新たな一面にドキドキしていた。
「鳴海は部長だろ。本当にそこでいいのか?」
「はい! 披露ができる場所があるなら是非、貸してほしいです!」
「そうか…。わかった。校長先生に報告して承認もらっておくよ」
顧問は二人の熱意に押されてそう言ってくれた。
帰り道。
「藤川!やったな!」
蒼真が腕を上げてハイタッチの仕草を作り、それに萌奈が一瞬、照れる。しかし、萌奈もすぐに手を伸ばし、二人でパチンっと手のひらを弾かせた。
「よかった。これで実演できればロボットの魅力をみんなに伝えることができるね」
萌奈が最高な笑顔を作った。
「ありがとう。藤川が真剣に考えてくれたおかげだよ」
「私はこういうことしかできないから…役に立てて嬉しい」
萌奈が晴れやかな表情でそういった。
「藤川の知らない一面が見れた」
「ん?どんな」
「意見は曲げずにぶつけるところ。熱い思いを持っているところ」
「はは、そうだよ。結構、熱いかも。我聞を叱るときなんて体温が二度くらい上がっているよ」
萌奈は気分よく笑った。
その顔を見ながら蒼真が小さくつぶやく。
「…かわいい…だけじゃない…」
「ん? なに?」
「…なんでもない」
蒼真の頬がほんのり赤いのは、沈む夕日に照らされているからだけではなかった。