コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
僕は彼に幸せに生きて欲しかったのだと最近になって気づいた。
彼がワインを飲む仕草が好きだった。滅多に見せないふにゃりとした笑顔が好きだった。腹を括った時の鋭い目が好きだった。からかったときの怒った顔が好きだった。今思えば彼に途方も無い程の複雑な感情を抱いていたのだろう。勿論今も。
正直彼が生きていた頃の自分をぶん殴ってやりたい。僕がこの感情に気づいていれば少しは変わっていたのだろうか…?いや、結局のところ僕は僕だ。何も変わらず僕と同じ末路を辿ったに違い無い。
まぁもう後の祭りだ。そう思いながらマグカップを二つ用意してインスタントコーヒーを入れる。彼は灰になったのだから。彼を色々なところに撒いたのは僕だ。そうしたのにまだ受け入れられない自分が居る。まだ、彼が生きている様に感じるのはもう何度経験したか分からない。
あぁ、またやってしまった。考え事をしているときは特にそうだ。コーヒーを二つ用意する。ふとした時にからかいの言葉が出る。もうこれは習慣として根付いてしまっているから治すのは時間が掛かるだろう。
こうして今日も彼が居ない食卓について自分が作った味気ないご飯を食べていつも通りの生活をするのだ。何も変わらないように。彼が居たことを忘れないように。