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ウルヴィ
第4章 息子の反乱
朝が訪れた。
最初の陽光が穏やかに周囲を照らし始め、鳥たちがさえずりを始める。
昨日の過酷な一日を乗り越えたベンは、ようやくソファの上で眠りについていた。周囲には彼が描きためた無数のスケッチが散らばっている。
目を覚ました時、彼の心は驚くほど静かだった。
安らいでいる。
落ち着いている。
「……めちゃくちゃな格好で寝ちまったな……でも、最高の夜だった」
数多くのスケッチを完成させたにもかかわらず、ベンは自分のブランドを立ち上げる気にはなっていなかった。
彼の目標は変わっていない。
身支度を整え、シリアルをかき込んだ後、彼は家を出た。
数秒後、その体が空中に舞い上がる。
決意を秘めた眼差しで、ベンは自分が何をすべきかをはっきりと理解していた。
「動かなければならない……今、すぐに」
――――――――
そこから数キロ離れたノンセウ島では、新たなブランドが第一歩を踏み出そうとしていた。
フェルナンド。
メリが創設したそのブランドは、広大なテラス付きの巨大なビルを構えていた。
内部では、従業員たちが休むことなく動き回り、開業の準備を進めている。
清掃はすでに完了している。
衣服は丁寧に畳まれ、靴と宝飾品は精密に配置されている。
細部に至るまで、一切の妥協はない。
その頃、メリは自室のオフィスにいた。
パソコンの前に座り、静かに画面を見つめる。
視線は画面から離れ、近くに置かれた一枚の写真へと移る。
ベンと自分の写真だった。
しばらくの間、彼女は微動だにしない。
扉が開く。
リソナが入ってきた。
「メリ、順調に進んでるわ」
彼女はすぐに言葉を切る。
「ごめんなさい、ノックしなかった」
メリは彼女の方を振り返る。
「私たち同士でそんな形式は要らないわ、リソナ。私はトップだけど、変わらないわよ」
そして本題に戻る。
「新人たちはどうなった?」
「一週間後に到着します。私の娘も一緒に」
リソナは続ける。
「世界中から最高の販売員と、もちろん最高の戦士たちを集めました」
その声には明らかな熱がこもっている。
「私たちならやれる。ラグジュアリー・クラブを勝ち取るわ、メリ!」
しかしメリは警戒を解かない。
「油断しないで。敵はフィッシアーノだけじゃないわ」
「ええ、でもフィッシアーノにはカモティと、あなたの息子のベンが……昨日の件を考えると……」
メリは即座に遮る。
「その話はしたくない」
表情が硬くなる。
「今夜、ベンに会ってフィッシアーノで働かないよう説得する。もし拒否されたら……それまでよ」
その眼差しは冷たく、かつ断固としている。
メリの決意は揺るがない。
――――――――
一方、メイは自宅でミナとマギーと過ごしていた。
しかし二人の存在にもかかわらず、彼女の思考は昨夜の出来事から離れない。
スマートフォンを握りしめ、ベンの番号を見つめながら決断できずにいる。
電話すべきだろうか。
会うべきだろうか。
なぜこんなにも気になってしまうのだろう。
彼女は心の中でため息をつく。
結局のところ、ベンは自分のしたいことをするだけだ。
ミナはすぐに彼女の不安に気づく。
悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
「可愛いすぎるわ、メイ! 電話してロマンチックなディナーでも誘っちゃいなさいよ。私たちは退散するから! アハハハハ!」
メイは即座に顔を赤らめる。
「変な勘違いしないで! ベンは友達よ。彼のおかげでタイトルを取れたの。借りがあるだけ!」
少し躊躇してから続ける。
「それに……」
突然、緊張が高まる。
メイは頭を抱えてから、自分が口にしたことを自覚する。
「あああっ!! 彼が自分で話すはずだったのに、全部言っちゃった!」
ミナは大笑いする。
「私たちはまるでお姉さんみたいなものよ。彼なら理解してくれるかもね、義理の姉妹たちを! アハハハ!」
しばらくは軽やかな会話が続く。
しかし雰囲気が変わる。
それまで黙っていたマギーが、ネイルとメイク道具をローテーブルに置き、口を開く。
「昨日の件に戻るけど、ベンがやっぱり父親のところで働くって決めたら、私はがっかりするわ」
メイは彼女の方を向く。
「ジョプリの意見に賛成なの? 彼が自分のブランドを立ち上げるべきだって」
「彼にはその器があると思う。ただ、両親との関係までは知らないわ。もしかしたら説得できるかもしれない」
その言葉にミナは即座に興奮する。
笑いさえ交えて。
「もしそうなったら、私すぐ採用してもらうわよ! メイ、あなたも一緒に来る?」
「わからない……母が今はフルタイムの医者になったから。もしかしたら手伝うかも」
この答えはミナを満足させない。
彼女はメイとじゃれ合い始める。すべてがユーモアに満ちている。
マギーは黙ったままだ。
空を見上げ、静かに問いを投げかける。
ベン、あなたは何をするつもりなの?
――――――――
ベンはフィッシアーノの店舗屋上に降り立った。
足が地面に触れた瞬間、一つの影が目に入る。
ニックだ。
昨夜彼と戦った男。
両親の確執の真実を明かした男。
ニックは一服するために外に出ていた。
しかしベンの存在だけで、彼の怒りが再燃する。
顔にはまだいくつかの絆創膏が残っている。
彼は近づいてくる。
「ベン、お前がカモティの息子だろうと、昨夜のことは許せねえ。殺されそうになったんだぞ!」
ベンは目を逸らさず見つめる。
「ニック、俺は警告したはずだ。通れと言ったのに、お前が俺を見下した。自業自得だ」
ベンもまた、ニックとの再会を喜んではいなかった。
昨夜、彼はベンを「世間知らず」と嘲ったのだ。
ベンは冗談を言うためにここに来たわけではない。
手加減などしない。
「どくか。さもなくば、昨夜のことが優しく思えるくらいにしてやる」
「望むところだ!!」
ニックのプライドと自我が彼を後退させない。
しかし内心では、すべてを理解している。
体が震え、額に汗が伝う。
昨夜、彼は悟ったのだ。自分とベンはレベルが違うということを。
勝てない。
彼は強すぎる……。
カモティと同じ、圧倒的なオーラを感じる。
危険だ……。
突然、屋上への扉が開く。
一つの存在感が広がる。
ベンと同じ、だが……より強い。
ニックはゆっくりと振り返る。
冷や汗が全身を走る。
このオーラを、彼は知っている。
「カモティ……」
カモティが姿を現す。
「ニック、下に客がいる。休憩が終わったなら、応対しろ」
「わかりました」
ニックはカモティの前を通り過ぎ、屋上を去る。
これより、父と息子の対話が始まる。
――――――――
「ベン!」
カモティは即座に雰囲気を和らげようとする。
「昨夜の試合を見直した。素晴らしかったぞ。特にあの最後のゴール! 今朝から若い客が大勢来ていてな。お前に会いたがっている」
しかしベンは答えない。
沈黙を守る。
その表情だけで、彼が抱える深い悲しみが伝わってくる。
やがて彼が口を開く。
「父さん……お願いだ。母さんと仲直りしてくれ。俺たちは家族なんだ! 何をしたにせよ、謝ってくれ! 俺のために、頼む」
カモティはため息をつく。
「やれやれ、ベン……お前は状況を理解していない。昨夜彼女が説明した通り、不可能なんだ。彼女は戦争を選んだのだからな!」
表情が厳しくなる。
「家族の諍いに構っている暇はない。俺は地球最大のブランドを率いており、宇宙での支配を拡大する機会を得ている」
ベンは眉をひそめる。
「どういう意味だ?」
カモティは説明を始める。
「知っている通り、ラグジュアリー・クラブは『多宇宙ラグジュアリー連盟』が統括している。ルールを決め、品質検査などを通じてどのブランドがラグジュアリーに値するかを判断する」
一呼吸置く。
「数ヶ月前、彼らから連絡があった。宇宙間ラグジュアリー・クラブが開催されることになった」
ベンは注意深く聞く。
「つまり、地球で最高のラグジュアリーブランドが、各惑星の最高ブランドと対戦し、最終的に宇宙で最も強力なブランドの座を争うということだ……!」
カモティは興奮に震える。
ほとんど叫ぶように喜び、その競争の構想に嗤う。
「宇宙最大のブランド……」
「その通りだ!」
表情が変わる。
「だからメリのことなどどうでもいいと思っているのか? 誰も俺の夢の実現を妨げさせない。すべてを踏み潰す……彼女も含めてな」
この最後の言葉が、ベンの怒りを爆発させる。
最後の希望をまだ抱いていた彼が、拳を強く握りしめる。
「じゃあ、お前の野心のためなら、すべてを破壊してもいいってのか!! がっかりしたよ!!」
「毎日こんな話をするつもりはない、ベン。お前は選択を迫られている。競技に参加する社員を登録し、連盟に名簿を提出しなければならない。今すぐ返事が必要だ」
ベンの心は混乱に陥る。
すべてが頭の中で渦巻く。
選択を……。
選択を……。
彼はこれまでのすべてを思い返す。
そして、一つの言葉だけが蘇る。
「現状に満足するな」
いつも同じ言葉。
キムが彼に言った言葉。
ベンは最終的な決断を下す。
「勝負しよう! 俺が勝って、お前が意識を失ったら、母さんを戻すよう説得することを約束してくれ」
ベンの提案に、カモティは大笑いする。
「アハハハ! さすが俺の息子だ! 度胸がある、俺と同じだ!! 受けて立つぞ、ベン! 受けて立つ! これでお前が競技に耐えられるかどうか、見極められる!」
そしてカモティは扉の方を振り返る。
「ニック!! まだ扉の裏にいるな。本当に口が軽い奴だ!」
その通りだった。
ニックは店舗に戻るはずだったのに、階段の下でこの会話を盗み聞きしていた。
オーラを隠していたが、カモティには見抜かれていた。
「俺の不在中は店を任せたぞ!」
ニックは固まったまま。
「気づかれてた……」と呟く。
カモティは空を見上げ、微笑む。
「見たいなら来ても構わないぞ」
ベンは怒りに囚われすぎて、親友二人の存在に気づいていなかった。
レイとジョプリが、ずっと空中に浮かんでいたのだ。
ベンは二人を見て驚く。
「レイ! ジョプリ! なんでここに?」
「お前のことはもうよくわかってる。こうなる可能性は予想してたよ」とレイが答える。
ジョプリは笑う。
「お前は見かけによらず熱い奴だな、ベン。似合ってるぜ、アハハハ! 俺たちも試合を見たい。結局、フィッシアーノに加わる約束をしてたしな」
レイが付け加える。
「お前が拒んでも来るつもりだ」
ベンは二人を見つめる。
「レイ……ジョプリ……行こう!」
彼は振り返る。
カモティはLEMを振り、空へと舞い上がり、ジョプリとレイを追い越す。
「ベン、場所はわかっているな」
こうしてベン、ジョプリ、レイはカモティに従い、戦いの場へと向かう。
十分間、四人は飛行を続け、人家のない岩だらけの土地に降り立つ。
この岩地は、かつてラッベ島と呼ばれた場所だった。
カイジェン家の旧宅があった場所であり、
ベンが幼少期を過ごし、修行した場所でもある。
レイとジョプリは、一段高い岩の上で後方に下がる。
その間、ベンとカモティは向かい合う。
両者の眼差しは決意に満ちている。
どちらも手加減するつもりはない。
父と息子のこの戦いは、ラグジュアリーの世界に大きな衝撃を与えるだろう。
果たして、どちらが勝利するのか。
続く
コメント
1件
おお、第4章読んだわ!ついに父子対決か…。ベンが両親の和解を願いながらも、カモティの野心の前で立ちすくむ展開が切なかった。でも「現状に満足するな」って言葉を思い出して、父親に戦いを挑んだのは熱すぎる🔥 レイとジョプリが駆けつけるのもグッときた。ラッベ島での因縁の対決、次がめっちゃ気になる!