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このまえ、お母さんに相談した時、お母さんに言われたこと。
ー「健二君を問い詰めても、のらりくらり言い訳して逃げると思う。だから、なんとかしてマリって人と会って直接話してみたほうがいいよ」ー
私もそんな気がした。
あの、スクショしたやり取りを見ても、健二ばかりが好きだと言ってて、マリは少し冷めた対応だった気がする。
健二に対して、愛してるとか奥さんと別れてとかそんなねっとりした感じはなかった。
一度だけと言った健二の言葉は明らかな嘘。
でもそれを問い詰めても、言い訳して土下座でもして逃げると思う。
なんとかして、マリと直接会えないだろうか。
ぴこん🎶
《おはよう!この前はありがとうね》
千夏からLINEが届いた。
〈あれからどう?喧嘩になってない?〉
《圭佑ね、2、3日落ち込んだりイライラしてたけど、私は何も聞かずいつも通りよりは少し優しく接していたら、なんとか、ね。時間をかけて修繕していくつもり。ね、綾菜ちゃんはどうするの?》
〈千夏さん見てて思った、私も直接相手に会ってみる。健二を問い詰めても逃げられそうだから〉
そのマリという女に興味もある、女として。
《わかった。私に何かできることがあったら、なんでも言って!》
〈うん、何かお願いすることあったらよろしく!〉
そうだ!LINEだ、と思いついた。
その日の夜。
健二のスマホを覗く。
健二『もう大丈夫だから行ってもいい?』
マリ『ダメ』
健二『なんで?いいじゃん?!』
マリ『そんな気分じゃないから』
健二『俺は会いたいの!マリちゃんに❤️』
マリ『おやすみ💤』
健二『行くから、木曜日!』
そっとスマホを閉じた。
木曜日、今度の?
でもマリからの返事はない。
わざと、マリのところに行きやすいようにしてみるか。
次の日。
いつものように朝が始まる。
「おはよう!ご飯できてるよ」
「あー、おはよう。とりあえず麦茶ちょうだい」
「はい、どうぞ。あ、あのさぁ…13日なんだけど、健二帰りは何時になる?」
「ん?なにかあるの?」
「お母さんの誕生日なんだ。だから実家行ってもいいかなって思って。あ、晩御飯は用意して行くけど。それか、早かったら健二もどう?」
「13日…?」
カレンダーを見ている。
きっと曜日を確認している、木曜日だと。
「あ、その日、もしかすると遅い時間から打ち合わせがあるかもしれないから、いいよ、翔太と行っておいで」
「そっか、じゃあ晩御飯だけ用意して行くね」
「いや、いいよ、打ち合わせだったらそのまま食事に行くと思うし。食べてくるよ」
行くんだね、マリのとこ。
「じゃ、行ってくる」
「うん。あのさ、お母さんと盛り上がったら泊まりになるかも?いい?」
「うん、いいよ。翔太もおばあちゃんに会いたいだろうし」
「わかった、いってらっしゃい」
いつもより丁寧にヒゲを剃っていたな、なんて思ってしまう。
さてと。
お母さんに電話する。
「もしもし、お母さん?」
『おはよう、どした?』
「あのさ、今夜、翔太を見ててくれない?」
『いいけど。何かあるの?』
「ちょっとね、マリって人をつきとめてくる」
『え?やっぱりまだ切れてなかったの?』
「うん、多分、今夜会うはずだから」
『ふーん、わかった。翔太のことは任せていいからね』
「うん、私、お母さんの誕生日だから実家に行くからって健二に言ってあるから、まさかと思うけど、なにかあったら話を合わせてね」
『うん、わかった。危ないことにはならないようにね』
お昼ご飯を食べて、翔太を連れて実家へ行った。
健二の今日の行動を予想して、どうするか考えてみる。
仕事を終える→車でマリと待ち合わせ(でも、あのやり取りだとマリの部屋へ行ってる気がする)→マリの部屋に入る証拠を写真か動画で撮る→部屋に乗り込む???
マリという女の性格がまったくわからないから、想像しただけで、ドキドキするけど。
「ただいま!しょうちゃん、来てる?」
「ばぁば、おかえり」
「おかえりなさい、ご飯できてるよ」
「ありがとう。で、もう行くの?」
「うん、健二の会社まで行って、あとをつけてみる」
「あ、そうそう、さっき健二君からメッセージがきたわ。お誕生日おめでとうございます、今日は仕事で行けなくてすみません、だって。先に綾菜から聞いておいてよかったよ。思わず、私の誕生日は12月よって返事するとこだった」
「へぇー、確認てとこかな、私の所在の。あ、そうだ、お母さん、車貸して」
「うん、いいよ。なんか探偵の尾行みたいだね。でも、繰り返すけど危ないことにはならないようにね」
「わかってる、行ってくるね」
ゆっくり深呼吸して、エンジンをかけた。