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朝起きて朝食を摂り支度をして学院に行き、午前の授業を受けて、昼食を摂り、午後の授業を受けて、放課後真っ直ぐ屋敷へ帰る。夕食前に少しゆったりと読書などをして過ごし、夕食を摂り、湯浴みを済ませて、就寝前にお茶や読書をしたりして、その後眠りに就きその日一日を終える。

休日は慈善活動で教会に足を運んだり、庭の手入れや一人でお茶や読書をして過ごす。


以前に戻っただけだ。彼と出会う前、毎日この日々を繰り返していた。敢えて付け加えるならば生家で暮らしていたので母達から嫌味や嫌がらせを受けていた。今はフレミー家で暮らしているのでそれがない分平和だ。


「ティアナ様、明日はお出掛けになられますか」


明日は学院の休みの日だ。ただ教会に行く予定はない。ティアナはモニカに否と言おうとするが、首を縦に振った。


「えぇ、行きたい所があるの」




翌日、ティアナは一人馬車に乗りある場所へと向かった。モニカ達が心配だと言ってついて来ようとしたが断った。彼女達には仕事があるし、それに今は一人が良い。

ぼうっとしながら窓の外を眺めていると、馬車が大きく揺れて止まった。どうやら目的地に着いた様だ。ティアナは馭者に声を掛け、一人で建物の中へと入って行った。


建物の中は以前来た時と違って閑散としており人が殆ど居なかった。ティアナは迷う事なくある場所へと向かう。そして一枚の絵画の前で足を止め食い入る様にその絵を見ていた。


「その絵、好きなの?」

「⁉︎」


暫くの間眺めていると不意に背後から話し掛けられた。ティアナは驚いて振り返るが声の主を見て更に驚いた。


「ハインリヒ殿下……」

「やあ、ティアナ嬢。こんな所で奇遇だね」

「……」

「そんな警戒しなくても取って食ったりしないよ」


彼はゆったりとした動きでティアナの隣に並ぶと、絵画を眺める。


「良いよね、この絵。僕も好きなんだ。見ているだけで心が洗われる様だよ。君もそう思わないかい?」


穏やかで優しい雰囲気なのに、何処か張り詰めたものを感じる。暗くて冷たい、彼からはそんな感覚が伝わってくる。

黙り込むティアナにハインリヒは軽く笑った。


「同じ絵が好きな者同士、君とは気が合いそうだ。どうかな、少し僕に付き合ってくれないかい」


ティアナは彼からの申し出を断ろうとする。だがそこで周りを見てハッとした。どうやら拒否権は自分にはないらしい。

元々閑散としてはいたが、気が付けば美術館の中にはティアナとハインリヒ、彼の従者等しかいない様だった。




ハインリヒの馬車に乗ったティアナが連れて行かれた先は、城ではなく郊外の林道を抜けた場所に佇む屋敷だった。


「見覚えがあるんじゃないかい?」

「ここは……」

「以前君が誘拐されて監禁されていた屋敷だよ」


まさかと思いハインリヒを見るが、彼は肩をすくめ笑った。


「一応言っておくけど、君の誘拐・・に僕は関わりはないからね」


些か彼の言い回しは気になるが、嘘を吐いてる様には見えない。

警戒をしながらもティアナはハインリヒの後をついて行った。こんな場所に連れて来てどうするつもりなのだろうか。

階段を上がり廊下を奥へと進んで行くと彼は突き当たりの部屋に入って行く。


「ニクラスさん⁉︎」

「やぁ孫ちゃん、久しいなぁ」


思いがけない人物との遭遇にティアナは呆然とした。

長椅子に腰掛けるティアナとハインリヒ、そしてニクラス。ティアナは二人をチラリと交互に盗み見る。何回見ても自分を含めおかしな組み合わせだ。


「実は少し前に彼を拾ってね、ハハッ」


(拾ったって……)


犬や猫じゃないのだからと呆れるが、何も言えない。何しろ相手はあの第二王子だ。


「あ、あの……」

「大丈夫だよ、彼の事は知っている。仲介屋だろう?」

「!」


驚いてニクラスに視線を向けるが、彼は特に気にした様子はない。一体何がどうなっているのかさっぱりだ。


「じゃあ、先ずは僕の話からしようかな」

【拝啓、天国のお祖母様へ】この度、貴女のかつて愛した人の孫息子様と恋に落ちました事をご報告致します。

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