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両者は構えた。
瓦礫が空に浮かぶ廃都市。砂埃が舞い、割れた高層ビルのガラスに二人の虚像が映る。
重力が崩れ、地面が遠ざかる中――
二人は同時に思念でリミッター解除を要求する。
「「兵装展開実行!」」
ガニメデは、爆弾のように腕へ装着された|反重力駆動衣の多重デバイスへ指令を送る。
トリトンもまた、マント型多重デバイスへ思念で命令。
『全デバイス同期完了。制限解除――戦闘モードへ移行』
白い光のラインが脈動し、電流のように身体を走る。
二人は同時に落下しながら地を踏み抜く。
――ダンッ。
互いに間合いを取った。
「氷漬けにしてやるよ。そのひょろひょろの体をなあ? 脳が焼き切れるほど冷やしてやる。折れたらすまねえな、カマ野郎」
ガニメデの腕が青白く発光する。冷気が周囲を凍らせる。
「はあ……本当に下品ですね。水色の髪だけは可愛いのに」
トリトンは長い青髪をかき上げる。
マントから水が触手のように左右へ伸びた。
「相性が不利だと知って煽るのでしょう? 残念ですが、それは違います」
水の触手が鋭く尖り、射出される。
「はっ! 凍らせちまえばいいんだよ!」
ガニメデは両手から冷気を放ち、水槍を凍結。
掴み、へし折り、投げ返す。
「まあ、そう来ますよね」
トリトンは水で受け流し、氷の槍を砕いた。
『おおっと! 開幕から属性相性の真っ向勝負だァ! 冷気対水流! これは好カード!』
空中に浮かぶトーナメント進行AIがマイク片手に叫ぶ。
その隙に、ガニメデは滑走する。
冷気を床に撒き散らし、氷上を滑るように急接近。
トリトンは触手をマントへ収納し、大きく広げた。
「ガラ空きだ!」
氷を纏った拳が腹部へ振り抜かれる。
「本当に単細胞ですね」
――瞬間。
マント内部から複数の水槍が展開。
背後にも回り込む全方位攻撃。
「!?」
ガニメデは咄嗟にガード。
前方は砕くが、背後の数本が貫く。
「ガハッ……!」
『ヒットォォォ! トリトン選手、冷静なカウンター! 氷結防御の隙を突いたァ!』
「水の生成速度が氷に負けるわけないでしょう。そんな簡単に間合いに入るなんて、猿でも分かりますよ」
トリトンは見下ろす。
(クソ……だが、仕掛けたのは俺だ)
ガニメデは痛みに耐えながら、腕に仕込んでいた爆弾を上空へ放っていた。
「お前こそ大馬鹿だ」
氷爆弾、起爆。
冷気が放散し、空中の水蒸気を一気に昇華させる。
巨大な氷塊が生成され、重力に引かれ落下。
「なっ――」
トリトンは空気中の水分を凝縮し迎撃。
氷塊は砕ける。
破片が視界を奪う。
その死角。
ガニメデの拳が冷気を纏い――
――ゴッ。
トリトンの脇腹へ叩き込まれた。
(くっ……流石に、この距離は……)
『決まったァァァ!! 近接強打! 氷のフックが炸裂!』
『水と氷――理論上は拮抗! しかし実戦では読みと胆力が勝敗を分ける!』
砂塵が舞う廃都市の中心。
二人はまだ倒れない。
重力は揺らぎ、瓦礫は宙を漂い続ける。
『模擬戦とは思えぬ激戦! 果たして立っているのはどちらか――!』
実況AIの声が、崩壊都市に高らかに響いた。