コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ごめん。さっきも仕事で、つい。」
「直してくれたらいいんです。」
彼は少し悲しそうな顔をしていた。
「宙(そら)にとって、今までの体験からどう思う?一番辛い?」
彼はさっきと同じように重みを持って頷いた。
社長は柴田さんに次々と質問していった。
症状のことからプライベートでの楽しいこと、悲しいこと、好きなもの、好きな人はできたのかどうか。
私は社長の質問に答えた回答を一語一句間違わずに資料へと書いていった。
そんな他愛のない話をしていても柴田さんはひとつも笑わなかった。
社長も質問ばかりじゃなくて自分の面白いストーリーを話していたけれど、柴田さんはずっと机のほうを見ているだけで、ただただ聞いているだけだった。
社長も焦りが少しずつ顔に出始めていた。
社長がこんなにも患者と話すのはめったにない。
もう30分は話している。しかもそれは“質問だけ”でだ。
普段なら30分過ぎたところで患者と向き合って何が辛いか苦しいかを話して、早かったらもう解決してる時間だった。
社長は焦っている。
自分の後輩がこんなことになってしまった悲しみもあるだろうけど、こんなにも表情を見せない患者は私も社長も初めてだった。