テラーノベル
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永夢が目を閉じる。
「……パラド」
静かな呼びかけ。
その名前を呼んだ瞬間――
――意識の奥。
暗い空間。
パラドが振り向く。
いつもの余裕はない。
「……本気か?」
低い声。
永夢はうなずく。
一瞬の沈黙。
でも声が、いつもより静か。
「いいのか? 俺の感染が一気に上がれば――」
一歩近づく。
「お前の体も、ただじゃ済まない」
視線が揺れる。
「最悪……お前が消える」
本気の警告。
本気の心配。
永夢は笑う。
「大丈夫」
優しく。
パラドは小さく息を吐く。
パラドはしばらく黙って、永夢を見つめる。
怒っていない。
呆れてもいない。
ただ、確かめるみたいに。
「……分かってたよ」
小さく笑う。
強がりでもなく、皮肉でもなく。
「お前は止まらない」
一歩、近づく。
「俺はお前。お前は俺」
視線が真っ直ぐ重なる。
「だから、想いは同じだ」
声は静かだが、揺るがない。
「後悔すんなよ、永夢」
永夢がうなずく。
「ああ」
パラドはふっと柔らかく笑う。
「なら、思いきりやるぞ」
でも最後に、低く。
「死ぬなよ、永夢」
意識が重なる。
――現実。
煙と炎。
永夢は目を開く。
「大丈夫。行こう」
その瞳は、迷いがない。
空気が揺れる。
敵の背後、空間が歪む。
データノイズが走る。
低い声。
「……平気なんだろうな、永夢」
飛彩の表情が凍りつく。
理解してしまった顔。
「……!」
怒り。
だがそれ以上に、恐怖。
感染が強まればどうなるか、誰よりも分かっているから。
貴利矢が息を呑む。
「おいおい……それ、最悪の裏技だぞ……」
永夢は一歩踏み出す。
「分かってる」
静かに。
「でも、これしかない」
パラドが横に立つ。
「なら、さっさと片付けるぞ」
一瞬だけ、永夢を見る。
覚悟の共有。
「行くぞ…!」
そう言った瞬間だった。
身体の奥で、何かが爆ぜる。
「――っ、あ゛ぁ……!」
声にならない叫び。
膨れ上がった感染データが一気に逆流する。
視界がホワイトアウト。
足元が崩れる。
「永夢!!」
パラドの声が遠い。
胸を掻きむしるような痛み。
神経を直接焼かれるような痺れ。
呼吸ができない。
「が……っ、は……!」
空気を吸っているのに、入らない。
肺が動かない。
心臓が暴れる。
鼓動が速すぎて、逆に止まりそうだ。
永夢が絶叫する。
「わあああああああああああああ!!!!!」
戦場に響く。
敵も、飛彩も、貴利矢も、動きが止まる。
飛彩の顔色が変わる。
「発症……!」
永夢の身体から黒いノイズが溢れ出す。
装甲の縁がバチバチと弾ける。
膝が砕けるように地面に落ちる。
両手で頭を押さえる。
「やめ……ろ……っ」
拒絶。
本能が拒む。
ウイルスを。
痛みを。
死の予感を。
パラドが叫ぶ。
「永夢、逃げんな!!」
「っ……!」
「怖いのは分かってる。でも今拒んだら、お前が壊れる!」
敵が動き出す。
「勝手に自滅か?」
エネルギー弾が放たれる。
貴利矢が歯を食いしばる。
「くそっ……動け、永夢!!」
飛彩は立てない身体を無理やり起こそうとする。
「研修医……!!」
だが、永夢は地面に縋ったまま。
「俺がいる」
ノイズの中、永夢の瞳が揺れる。
「お前が俺を呼んだんだろ」
データが、永夢の周囲を包む。
「だったら最後までやれ」
エネルギー弾が目前に迫る。
永夢が歯を食いしばる。
涙が滲む。
怖い。
痛い。
それでも。
震える手を、地面から離す。
「……っ、あああああああああああ!!」
今度は、叫びが違う。
拒絶ではない。
受け入れる覚悟。
黒いノイズが、一気に体内へ収束する。
爆ぜる光。
衝撃波。
迫っていた攻撃が、弾き飛ばされる。
煙が晴れる。
永夢は、膝をついたまま。
呼吸は荒い。
汗が滴る。
だが、崩れていない。
ゆっくり顔を上げる。
光が弾ける。
永夢の目が、大きく見開かれる。
その瞬間。
瞳が、赤く光った。
静かな研修医の顔が消え、
“ゲーマーM”の目が開く。
膨れ上がるエネルギー。
飛彩が呟く。
「馬鹿が……」
貴利矢が息を吐く。
「寿命縮める戦い方しやがって……」
永夢が立ち上がる。
瞳はまっすぐ前を見ている。
「患者の運命は――」
一歩、踏み出す。
地面が軋む。
「俺が変える!!」
ガシャットを掲げる。
「マックス大変身!!」
――ガシャット!
――ハイパームテキ!!
――輝ける!流星のごとく!
――黄金の最強ゲーマー!
――ハイパームテキエグゼイド!!
まばゆい黄金の光が爆発する。
街を覆っていた煙が一瞬で吹き飛ぶ。
金色の粒子が空中を舞う。
重厚な装甲が展開。
王冠のようなヘッドギア。
胸部のクリスタルが眩く輝く。
完全無敵。
ハイパームテキエグゼイド、降臨。
「ノーコンティニューで」
拳を握る。
「クリアしてやるぜ!!」
敵の攻撃が一斉に放たれる。
光弾。
衝撃波。
爆炎。
――だが。
黄金の装甲に触れた瞬間、全てが弾ける。
傷一つ、つかない。
貴利矢が思わず笑う。
「はは……出たよ、チートフォーム」
飛彩は小さく息を吐く。
「……無茶をするにも、程がある」
ハイパームテキがゆっくりと歩き出す。
一歩ごとに、地面が金色に染まる。
敵が襲いかかる。
だが次の瞬間。
視界から消える。
高速移動。
背後。
ワンパン。
バグスターが光の粒子になって消滅する。
回し蹴り。
連撃。
まるでゲームのコンボ。
一体、また一体と消えていく。
空間を蹴り、空中で静止。
太陽のように輝く。
一閃。
巨大な金色のエネルギー波が広がる。
群体型バグスターを一掃。
爆発音が連鎖する。
煙が晴れる。
静寂が訪れる。
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