テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
611
#BL
kaede🍁
15,921
おその★
19,664
重かった空気は、不思議なくらいあっという間に和らいでいった。
「よし!」
深澤が両手を叩く。
「暗い顔ばっかしてても仕方ない!」
「せっかく全員そろったんだから、楽しくしようぜ!」
「……え?」
阿部が目を丸くすると、深澤は得意げにスマートフォンを振ってみせた。
「実はさっき、待機って言われた時点で頼んどいた。」
「ピザと。」
「寿司と。」
「飲み物!」
「えぇ!?」
佐久間が思わず笑い出す。
「仕事なくなった瞬間に注文したの?」
「こんな機会なかなかない、だろ?」
「なんだか長くなりそうな予感しかしなかったし。」
その数分後。
控室のドアがノックされる。
大きなピザの箱を何枚も運び込み、続いて人数分のドリンク、さらに出前のお寿司まで届いた。
テーブルいっぱいに料理が並ぶ。
「……すご。」
阿部が思わず笑う。
「なんか。」
「打ち上げみたい。」
「だろ?」
深澤も笑った。
「こういう時こそ、みんなで飯食うのが一番。」
誰かが紙コップを配り始める。
ドリンクを注ぎ終えると、佐久間が勢いよく立ち上がった。
「乾杯の音頭やりまーす!」
「また始まった。」
翔太が苦笑し、部屋中から笑いが起こる。
佐久間はコホンと咳払いを一つ。
紙コップを高く掲げ、大きく息を吸う。
「俺たちの阿部ちゃんが帰ってきてくれて超嬉しいおかえり!」
「乾杯ー!」
「乾杯!」
九つの紙コップが軽く触れ合い、明るい音が部屋に響いた。
阿部は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
___________
食事が始まると、部屋はすっかりいつもの賑やかさを取り戻していた。
佐久間と向井は「このピザうまい!」と盛り上がり、
翔太と深澤は「寿司はサーモン派かマグロ派か」で言い合っている。
ラウールと目黒はその様子を笑いながら眺め、
岩本はみんなのお皿を気にして取り分けていた。
阿部は、少しだけ辺りを見回す。
そして自然と宮舘の隣へ腰を下ろした。
「だて。」
宮舘が優しく振り向く。
「どうした?」
阿部は少し照れながら笑った。
「今日……。」
「サンドイッチ。」
「本当にありがとう。」
「すごく、おいしかった。」
宮舘は穏やかに微笑む。
「ああ。」
「ちゃんと食べてもらえたならよかった。」
「昨日まで全然食べられなくて……。」
阿部は少し俯く。
「あれが久しぶりのまともなご飯だった。」
宮舘は驚いたように目を細める。
「そうだったのか。」
「うん。」
「優しい味で……。」
「なんか、泣きそうになった。」
少し照れくさそうに笑う阿部を見て、宮舘も柔らかく笑った。
「料理は、食べてもらって初めて完成するからね。」
そう言って、お茶を一口飲む。
「また食べたくなったら、いつでも作るよ。」
「本当に?」
「もちろん。」
「サンドイッチでも、イタリアンでも。」
「阿部が食べたいものを作ろう。」
その何気ない言葉に、阿部の目が少し潤む。
「……ありがとう。」
「遠慮しなくていい。」
宮舘は穏やかな声で続けた。
「頼ってくれるのも、仲間の仕事だから。」
阿部は静かに頷く。
「うん。」
離れた席から佐久間が大きく手を振る。
「あべちゃーん!」
「ピザ冷めるぞー!」
その声に部屋中が笑いに包まれる。
阿部も思わず吹き出した。
「もうおなかいっぱい!」
笑って返事をする阿部を見て、目黒はそっと安堵の息をつく。
数日前まで、一人きりで涙を流していた阿部。
今はこうして、大切な仲間たちの輪の中で笑っている。
まだ問題は何一つ解決していない。
それでも、この温かな時間は、阿部にとって「また前を向ける」と思える、大切な一歩になっていた。
コメント
4件
きっとほんとうにこういうことがあっても⛄️はこうなんだろうなあ☺️

やっぱり凄いですね。 戸惑っているのだろうけど 誰もそれを出さないで ゆっくり 安堵している 舘様も嬉しそうだし あべちゃんもだけどめめもホッとしてるんだろうな。緊張の糸が少し緩んだかな。 読み応えあります 凄いですね。 続き待ってます♪
次の投稿から💛💜出て来ます。