夜風が俺のそばを通る。あれだけ暑かった夏が嘘みたいに、半袖で心地いいくらいの風。
お互いに何を話すわけでもなく、自然と着いてしまったのは俺の家だ。
「ここ、置かせて」
玄関前に自転車を置いて、鍵をかける。それが当たり前になっていたから。
「うん」
ほぼ会話がない状態で家に入る。キヨくんも覚悟決めてたんだろうな、俺に何を聞かれるのか。
俺はとりあえずお茶をいれて部屋に向かった。そんな俺のあとを観察でもするかのような視線に気付いて
「なに?」
と声をかける。
「いや…久しぶりだなって…」
それは事実。でも時間が経った今でも俺の家の道のりとか使い方とか覚えててくれるのは嬉しかった。
部屋の小さいテーブルに向き合うようにして座る。お互いにお互いが言い出すのを待ってるみたいだった。チラチラと俺を見るキヨくんは、前みたいな元気はなくて、どこか落ち着かないような顔をしている。
…俺の家だもん、俺から言わなきゃ。
「俺になに聞かれるかわかってるでしょ?」
「うん」
即答だった。
「別に責めてるわけじゃなくて…ただ単純に何でかなって」
「そうだよな…ごめん」
「謝ってほしいわけじゃないんだって。俺…あの時ほんとに動揺してて…そんなに覚えてないんだけどさ… 」
したじゃん…キス…
「レトさんが困るの、知っててやった。それは謝らせて 」
「そうだよ、めっちゃ困ったよ。今でも困ってるし」
「あと、レトさんのこと避けてたのも」
「うん、ほんとにね。どこ行ってもいないんだもん」
「でも…」
そこですぅっと大きく深呼吸をする。
「俺はあの場でキスしたの、後悔はしてないよ」
キヨくんの口から出た“キス”という単語に俺の心臓は跳ね上がる。
あの時されたこと、今になってやっと実感が湧いてきたようだった。
「レトさんと休みの間色んなことして、色んな所も行って…本当に楽しかったんだ」
目線を下げてうっすらと微笑みながら続ける。
「俺の周りにはいないタイプだから…どんどん惹かれていくのが自分でも引くほどわかってさ」
「レトさんと一緒にいる度に自覚したよ…
レトさんのこと、好きなんだって」
To Be Continued…
コメント
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は?!え?!ウォッカさん!!笑笑 去年の八月以降投稿してなかったから、もうやめちゃったんかと思ってた😭文章力とかストーリーとか天才すぎて、全ての作品読ませていただきました。夢かと思ったけど、ちゃんと現実で嬉しい🫶🏻🤍だいすき