_真実は向こうから__🥀𓈒 𓏸
マイクがバイクを急カーブさせ,人気のない道を走る
すると,先回りされたかのように目の前に黒い車が飛び出し出口を塞いだ
「ッ…遅かった……」
マイクがバイクを急停止させると、後ろからも追いかけてきた車が止まる
中からゾロゾロと覆面たちが出てくると、先回りしてきた車の中から1人、大柄な男が後部座席姿を現した
「…バロイン………」
黒マスクをつけた男…バロインはマイクの前で歩くのを止めた
「……相変わらずの下手な運転だな…」
男たちの持つ銃が一斉にマイクに向けられる
背後、そして主にバロインを警戒しつつ、マイクはバイクに寄る
「だがまぁ……追い掛けてるのが俺だとよく気付いたな…。こんな道におびき寄せて……」
バロインは建物に囲まれた人気のない道を静かに見渡す
バロインの重要な武器である植物は周囲をいくら観察しても見つからない
それでもマイクの周りには複数人の男に囲まれている
逃げるのは難しいだろう
「望みはなんです…?」
マイクがバロインを充分警戒しながら質問をした
「そんなの決まってるだろう」
黒い手袋をつけた人差し指が,ゆっくりと持ち上がり、マイクの前で指を指し、止まる
「戻ってこい…マイク」
彼の望みは…マイクだ
「……まさか…冗談でしょう」
マイクは鼻で笑い、後退りをする
「それ以上下がると、片足が無くなるぞ」
「……ッ」
「もはやお前に選択肢など存在しない。」
その言葉をスタートに、マイクはバイクにエンジンをかけた
バイクに飛び乗ると,マイクはバロインに背を向け車に目掛けて突っ込む
「……打て」
合図と共に一斉に銃弾がマイクに放たれる
しかし銃弾は方向を変え、目標とは違う場所に向きが変わる
「小包の力か……」
マイクは歯で小包を噛み砕く
口元に隠し持っていたのだ。
車の僅かな壁との隙間を通り,来た道を戻る
しかしバロインは追いかけず、耳元に繋がった無線機に話しかける
「……計画通り…奴はそっちに向かった」
「____おっけー♪」
バイクを走らせていると、バイクに接続したマイクの携帯電話がなる。
指でスライドし、電話を繋げるとダレイの声が響く
「マイク!今どこだ!誰か打たれたか?」
ダレイの焦る声とは裏腹にマイクは冷静に会話を続けた
「いいえ、大丈夫です。”今から北側の博物館”に向かいます…。そこで1度合流しましょう」
「……分かった…打たれるなよ」
ダレイはしつこく電話を繋げず、そのまま電話を切った
バイクを走らせながらチラッと後ろを見る
しかし誰も追いかけてる様子は見えない
(なぜ追いかけてこない……?まさか読まれてるのか?)
マイクのバイクはそのまま走り続ける
途中の木から、黒い影が覗いていたのを、マイクは気付かなかった
ひと足早く博物館に着いたダレイは、マイクが来るのを外で待っていた
(あの銃声は……一体なんなんだ…?)
しかし考えても分からない。
マイクに聞くしかないのだ
博物館についてしばらく、遠くから足音がした
物陰に隠れていたダレイは警戒しながらゆっくり音のする方へ目を向ける
歩いてきたのは、マイクだった
「こっちだ。マイク」
声のする方へマイクは視線を向け、そのまま素早くダレイの傍へ走る
「バイクは?」
「隠してきました……というより捨てて来た様なものです……発信機を付けられてしまいましたので」
マイクに連れられダレイは博物館と横にひっそりと隠れていた小さな扉に、入っていった
「……ここは?」
扉の奥は妙に鼻に来るような薬品の匂いが漂っていた
机の上には粉や液体の入った瓶
そして小さな包みが何枚も重ねてあるのが分かる
「私しか知らない研究室です」
マイクは扉を閉めると
真っ暗になった部屋の電気を付けた
コンクリートで、できた壁や床、換気できるように通気口もある
「……ここへは長く居られません」
マイクは机の引き出しを空け、大きな箱を取り出すと、徐にこじ開けた
中からは数百個以上はある小包が出てきた
別の引き出しから小袋を取り出すと
マイクはそれぞれの小包を手に持ちすばやく中へと入れる
ダレイは様子をじっと見つめていた
次第にマイクの梱包が終わると、小袋をダレイに差し出した
「これを貴方に、きっと命を守ってくれます」
「おい、マイク、いい加減どういうことか説明してくれ」
小袋を差し出すマイクの手をダレイは押し返した
しかしマイクはダレイに小袋を強引に押し付けた
「命を狙われてるんです!!私も…!貴方も!時間がありません!」
マイクの叫び声が室内に響き渡る
かつてこんな彼の姿を見た事がなかった
下を見ているマイクの表情は見え無い。
いつもとは違う力強い手はダレイの体を強引に払ってるようにも見える
「そんな説明で納得できると思うか……?」
マイクの手を力強く掴みダレイは、更に質問をした
その勢いに小袋が床に飛ばされる
「なぜ俺まで命を狙われるんだ!!!」
ダレイにとっては、知らぬ間に知らぬ人に殺されかけている
マイクの口振りからすると、理由を知ってるように見える
それを説明せずに今ある現状だけ言われても、納得するわけが無いのだ
不意にマイクの手の力が緩み、ダレイの手を引き剥がす
そのままダレイに背を向け机に両手を置く
「私が…この小包を開発したのです…奴らの狙いはこの小包の開発者である……私です」
髪の隙間からマイクの口だけが見える
「小包は……開発する人の調合に合わせて様々な力を込めることが出来ます……」
それはマイクがかつてBARで話した内容だった
ダレイは今あるこの状況マイクの態度に凄まじい疑問を感じたのだ
いつもと違うどこか震えるような声と…静かなのに落ち着いてないトーンが、その場にいるダレイに密かな焦りを抱かせた
「彼らに常識なんてものは存在しません。人殺しだってします…!全ては自分らの利益の為にです」
ふとダレイの脳に、ミジという女と話した会話が脳内に流れた
___彼さえ手に入れば…すぐに噂なんて広まる。あたいらを知らない奴なんて居なくなるくらいね__
「俺はかつて…ミジと名乗る女に会い、お前の事を聞いた」
「…ッ!?」
マイクはダレイに振り返る
振り返った時にわかった。マイクは酷く辛そうな顔をしていた
それでもダレイは話すことをやめなかった
辞められなかったのだ
「俺の課長は命を狙われた、全てはあの女が仕込んだことだ。もしあの女の言うことが正しいのであれば…あの女も…狙いはお前の小包だ。」
「…それは……っ」
どこからかそんな声が心に響くが,
それと同時に、課長が襲われた際のディスクの光景が、フラッシュバックする
ダレイがそう言うとマイクは何も話さなくなった
その瞬間、扉が勢いよく開くと同時に外から無数の男達が入り込み、マイクとダレイに銃口を向けた
ダレイが男達を睨みつける中
マイクは下を向きまるで分かりきっていたかのように俯いていた
そして外から…ミジが入ってくる
「ふふん♪流石バロイン、計画通りね」
「……っお前…!」
「マイクとは話がついたみたいね」
冷たいものがダレイの首筋に当たる
銃口だ
「……ッ」
「可哀想に…まだまだ若いのに…こんなところで死ぬなんてね」
「辞めてください」
マイクの声が響く
しかしその声は、まるで抜け殻のようだった
マイクがダレイの方へと歩き出す……が、そのまま通り過ぎ、ミジの前まで歩いた
しかし、ミジは不満げに声を漏らした
「何いい人ぶっちゃってんのさ…昔のあんたならそんな言い方しなかったでしょ」
「……殺すな」
マイクが言い方を変えると、ミジは満足そうに手で合図をする
ダレイに突きつけられた銃口がゆっくり離れる
「……どうすればいいのか……アンタなら分かるよね……?」
にっこりと微笑み、ミジはマイクに告げた
「……行くぞ」
マイクの指示に,ダレイの周りを囲っていた男たちは一斉に動きだした
「マイク」
ダレイがマイクの名前を呼ぶ
しかしマイクは振り返りもせずにそのまま外へと男たちに続いて歩き去っていく
すっかり誰も居なくなった研究室はダレイとミジの2人だけになる
ミジはダレイに声をかけた
「あんたのおかげで,彼を戻すことが出来たわ」
「戻すだと……?」
「えぇ……何せこの怪盗団を作ったのは…彼だもの」
ミジも、そのまま扉から外へと出て行った
外からは雨の音がする
誰も居なくなった研究室にダレイだけが取り残されたのだった
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