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2024 12⁄21 20時14分 投稿
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◆◇◆◇
「これが、、、俺の全力だ!」
地面を蹴った勢いを一切消さずに、一気にモンスターとの距離を詰めた俺は、思いっきり槍を振りかぶった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺の血でできた槍はモンスターの身体にぶつかった瞬間、槍で一切歯が立たなかった甲殻を一瞬で粉々に砕き、露わになった肉をとてつもない速さで抉りとった。
そしてとてつもないモンスターの絶叫が空気を震わし、横から振られてきた鋭い鉤爪が身体を抉るのを感じたが、俺は構わず勢いよく手に持った槍を振り抜いた。
ドォン!
地面を蹴った勢いを一切殺すことなく振りぬかれた槍は、爆音を響かせながらモンスターの首を叩き切ったのだった。
※ピコーン※槍斬※スキル獲得※
「、、、終わった、のか、、、?」
俺は思わず、血が止めなく流れ出る脇腹を抑えながら呟いた。
、、、再生が追い付いていない、、、
そして俺はそこで、意識を手放したのだった。
◇◇
ふにふに。
顔になにか柔らかいものが押し当てられるような感触に、俺は目が覚めた。
そしてゆっくり目をあけると、そこには、、、
ドアップになった黒猫の顔があった。
「アル、、、なんでここにいるんだ、、、?」
そう言いながら俺は立ち上がろうとしたが、突如走った鋭い頭の痛みに思わず蹲ってしまった。
「おやおや、満身創痍じゃないか。」
突然かけられた、どこか聞き覚えのある声に思わず顔を上げると、そこにはこの迷宮まで案内してくれたガルードがいた。
「てっきりこれまでと同じように途中で脱落すると思ったんだがな、、、まさか回復系の能力があるとは想定外だった。」
「、、、どういうことだ、、、?」
状況が飲み込めなかった。
回復系の能力、、、?ヴァンパイアの能力のことを言っているのか、、、。
ということは、話を聞いた感じだと、まだ俺がヴァンパイアハーフだということはバレていない、ということか。
そもそもとして、どうしてここにガルードがいるんだ?
「なんで俺がここに居るんだ、っていう顔をしているな。知りたいのか?」
まるで俺の心を見透かしたように話しかけてきたガルードの言葉に、俺は迷うことなく頷いた。
「じゃあ、教えてやろう。まず、俺はお前の知ってのとおりこの迷宮の守護者で、この迷宮に封印されている秘宝を守護し、秘宝を欲する者が居たのなら、その者が秘宝に相応しいのか見定める、という使命があるのだ。」
使命、、、か。
つまり、この迷宮に入る前に言っていた殆どのことが本当のことではない、ということか。
「なあ、この迷宮に秘宝は封印してあるのか?」
俺の質問にガルードは少し考える素振りをして、すぐに顔を上げた。
「単刀直入に言うと、この迷宮に秘宝は封印されていない。」
やっぱりか、、、
最下層のモンスターを倒しても一向に道が現れないからもしかしたら、、、とは思っていたが、まさか本当だったとはな。
「この迷宮はあくまで、秘宝を欲する者の実力を量るための迷宮だ。
そして、この迷宮の最下層はこの階層だ。そしてお前は最下層の【ボス】を倒し、この迷宮を踏破した。
つまり、お前は秘宝を手にすることができる程の実力がある、ということが証明されたわけだ。
、、、秘宝の所まで案内する。そこで、最後の試練を行い、秘宝に認められたら秘宝はお前のものになる。ついてきてくれ」
いや、付いてきてくれと言われても、、、動けないんですが。
助けを求めるようにずっと大人しく俺の横で座っていたアルを見ると、アルはすっと目をそらした。
、、、泣くぞ?
俺は意を決して無理やり立ち上がろうとしたが、やはり身体の損傷が激しいのか、立ち上がることは出来なかった。
それでも諦めずに立ち上がろうとして床の上でジタバタしていると、それを見たガルードは溜息をつきながら、自身の背嚢から紫色の液体が入った小瓶を渡してきた。
「回復薬だ。飲めば動けるくらいには回復するだろ。」
「、、、ありがとな」
俺はそう言った後、ガルードから渡された回復薬のコルクを開け、一気に飲み干した。
すると、脇腹の傷や体中に出来た傷が突然薄暗い紫色に輝き、光が収まったときには完全に傷が回復していた。
、、、今の光、明らかに回復薬が出しちゃいけないような毒々しい色をしていたが、、、まあそういう物なんだろう。
「行くぞ。さっきも言ったが、試練はまだ残っているんだ。こんなところでのんびりしている場合じゃない」
「だな」
俺はそう言ってガルードの後を付いて行ったのだった。
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