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2030年2月7日金曜日
私はまだ10年前のことを調べていた。新聞や資料以上の何かがあるってドラマチックな何かがあると信じた。今日は学校をずる休みした。由崎にお礼を言いたいとは思ったけれどそもそも私は学校が嫌いだったから。私は公共図書館に向かった。徒歩5分で着くそこは金曜日なだけあって人が少なかった。図書館の空気が好きだ。本の匂い、静まっている館内、誰もが本以外に干渉しないでいるそれが、私には癒しと言える。背徳感が罪悪感に変わりゆく中で学校の図書館にはなかった記事を見つけた。10年前の事件だ。ただ相変わらず少ししか書いていない。
女性が男性と外出していたところ痴情のもつれか男性が女性の腹部を一度深く刺し、女性は即死した。
ということが書いていた。「やっぱり喧嘩とかそういう理由なのかな」なんて、もっと違う理由であって欲しかった。少なくとも世界の人々が納得してしまうようなそんな理由。私は諦めてしまった。全部やめて、由崎のことも無かったことにしてしまおうかと思った。
2030年2月11日水曜日
由崎が家の前に来てから4日経った。いつのまにか時間が流れてバレンタインはもうすぐだ。学校ですれ違っても私は他の人との対応と同じようにした。学校帰りは逃げ帰るようにしている。由崎は相変わらずあの女子生徒に絡まれているし、私を追いかけづらそうで私は好都合だ。私はもう話すべきじゃないのだ。そもそも10年前のことに興味を持ったからこうなった。むしろ今の状態が通常で普通で当たり前だったはず。言い聞かせてるわけじゃない。現実だ。もともとこうなるのも決まってたんだろう。神様か何かが気まぐれで私と由崎を遭わせたんだ。そして飽きたから離れさせて元通りにした。別になんの異論もないけど。
「榎木。」
帰り道由崎が追いかけてきた。私はさっきよりも急ぎ足で用件を聞いた。
「なんで避けるの。…やっぱ木曜日家に行ったこと怒ってる?」
「…」
言葉が出ない。もし話しかけられたらなんて返すかなんて事をずっと考えてたくせに。
「教えてほしい。言ってくれないとわからない。僕も解りたい。」
この人は、なんでこんなに優しいんだろう。私はこんなに酷いのに。当てつけでもなくてきっと本心なんだろう。だからこそ苛立った。苛立って思ってもない事を言った。
「話しても何もわからないでしょ。ただ単に話したくないだけだし、気を遣ってくれないかな。…もう、放っておいて。」
それだけ言って私は走って帰った。由崎の顔が少し悲しそうに見えたから。もう本当に話すことも、目が合うこともきっとなくなる。別にいいのだ。どうか嫌われて私たちは終わりたい。そんな願いも神は「滑稽だ」と笑うだろうか。