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2030年2月12日
僕は欠陥した。昨日僕の一部が無くなった。我儘だっただろうか。彼女には僕と話すことが苦痛だっただろうか。僕は知りたかったんだ、彼女を。
いつも一人で俯いていた。他にもそういう人はたくさんいたけれど、達観しているような眼が僕を引き寄せた。どんなふうに世界が見えているのか見てみたくて、近づいた。最初は緊張しすぎて変に迫ってしまったけど、一緒に帰ったときは気を遣ってくれた。僕のための話を小さい声でたくさん言葉をくれた。それが、嬉しくて仕方がなかった。別れ際の約束もずっと頭の中を巡った。嘘でもよかったんだ。彼女は風邪を引いたらしくて結局約束は果たせなかったみたいだけれど、玄関のそばできっとずっと僕の話を聞いてくれていた。女子生徒がついてきていたことは僕も驚いていて、とにかく彼女のことを悟られないように友達だと言って、あまり会話もしないようにした。飽きたらしく帰ってしまったのを確認して、すりガラスと木で作られた綺麗な扉越しに君に言葉を投げかけた。もしそこにいてくれるならどれほど嬉しいことか。彼女はノックしてくれた。僕の願望だ。ありがとうの意なんて、5回のノックにこもってなかったのかもしれない。だけど少しの可能性にかけて、8回ノックして「どういたしまして」と返した。10秒ほど経ってから2回ノックされた。意味を考えた。わからなくて、映画みたいな事を考えた。「好き」だったらいいのに。なんて事を思って3回返した。「僕も」と重い重い気持ちを込めて。僕は帰った。気恥ずかしくて、次会う事を思って、熱い顔を俯かせて帰った。もっともそれ以降は彼女は冷たかったのだけれど。結局彼女の思いの中に入れなかった。浮かれてた僕が馬鹿だったんだ。彼女の言葉が本当でも嘘でも関係ない。
そんな事を思って図書室で本を片付けていた。そういえばどうして10年前の事件なんかを調べていたのだろう。もっとも僕は10年前の事件なんて彼女が調べていなければ知らなかったんだ。適当に話を合わせてしまった事を少し後悔した。廃棄の本の整理を始めると英語の新聞が出てきた。きっと英語の成績の向上を目指した先生が取り入れたのだろう。少しだけ読むことにした。10年前の事件のことは日本の新聞では、痴情のもつれだの喧嘩だの書かれていた。だけど辞書を引きながら読んだ外国の新聞ではそんなことは書かれていなかった。そこに書かれていたのは、事件の一部じゃ無くて全容だった。新聞の1ページ分に細かく綴られるそれは、きっと、彼女が求めていたものではないのだろうか。