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一つ屋根の下、地雷注意報

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一つ屋根の下、地雷注意報

31 - 第二十九話:「カゴの中、ふたりの温度」

2025年05月29日

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夕方前、冷蔵庫を見て、俺がポツリとつぶやいた。
「もう、飯になるもん何もねぇな……」


それを聞いてたのか、聞いてなかったのか。

るかが、洗面所から出てきて、髪を結び直しながら言った。


「……買いに行く?」


「え? ……ああ、うん」


意外だった。

あいつから“一緒に”を切り出すのは、めったにない。


でも、断る理由もなかった。



駅前のスーパーは、夕飯時にしてはわりと空いてた。


るかは何かを探してるみたいに、棚の間を黙って歩く。


「今日、何食いたい?」


そう聞いてみても、返事はない。


(あー、また無視モードか……?)


と、思ったけど、数秒後にぽそっと返ってきた。


「……鶏のやつ」


「どれだよ、“やつ”って」


「照り焼き」


その言い方が少しだけ不機嫌そうで、

俺は内心ちょっと笑ってしまった。



カゴの中に鶏肉と、醤油と、ねぎ。


俺がなんとなく野菜コーナーでトマトを手に取ったら、

るかが横目でそれを見て言った。


「……トマト、嫌い」


「え、マジで? 初耳」


「言ってないだけ」


なんかそれっぽい。

好き嫌いを話すのも、たぶんこの子にとっては“警戒解除”なんだろうな。


「でも、俺食うよ。入れたら?」


「……勝手にすれば」


それでいて、トマトをカゴに入れたあと、

なぜか微妙に不機嫌そうな顔になるのは、やっぱりちょっと地雷系。



レジに並ぶとき、俺が財布を出そうとすると、

るかが一言、小さく言った。


「わたし、払う」


「え、いいって。オレが……」


「半分は、わたしが食べる」


その言い方が少しだけ強くて、

“奢られたくない”んじゃなくて、

“負担をかけたくない”って感じだった。


(……ちゃんとしてんじゃん)


なんて思ったけど、言わなかった。



家までの帰り道。

るかは買い物袋を片手に、ちょっと不満そうな顔のまま歩いていた。


俺は袋の中のトマトが気まずそうに揺れてるのを見ながら、

次からはこっそり自分用だけに分けようと決めた。



地雷感は、地雷を踏むまで気づかない。

けど、踏んでからなら、少しだけ理解できる。


それだけでも、前よりはちょっと近い気がした。

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