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一つ屋根の下、地雷注意報

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一つ屋根の下、地雷注意報

32 - 第三十話:「避けられたトマト」

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2025年05月30日

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買ってきた食材で、いつもよりちゃんと料理をした。
といっても、るかが手伝ったわけじゃない。

キッチンの端でスマホをいじりながら、

こっちの様子をちらちら見てるだけ。


でもそれでも、なんとなく“ふたりで作った気分”になれるのが不思議だった。



出来上がったのは、鶏の照り焼き、

キャベツの千切り、味噌汁、そして……スライスした冷やしトマト。


テーブルに並べて、るかの前にもちゃんと置いたけど、

その赤い一皿にだけ、彼女の目が止まった。


一言も文句は言わなかった。


黙って箸を持って、照り焼きに手を伸ばす。



その後も、味噌汁、キャベツ、順番に食べていって、

トマトの皿だけ、綺麗にスルーされる。


「……食べないの?」


俺がそう聞くと、箸を止めて、少しだけ眉が寄る。


「……だから、嫌いって言ったでしょ」


冷たい声でもなく、怒ってるわけでもない。

ただ、ちょっと面倒くさそうに。


「いや、まあ。なんか、せっかく切ったし」


「なら、自分で食べれば?」


ピシャッと切られた感じがして、俺は「あ、うん」と小さく返す。


そのあと、彼女が何も言わずにまた食べ始めたことで、

会話は打ち切られたと理解する。



けれどそのあと。


ふと見ると、るかがスプーンでトマトを端っこに寄せていた。

皿の端っこに、丁寧に並べて、一切れも触れていない状態に。


あまりに綺麗に“避けられている”それが妙におかしくて、

俺は少し笑ってしまった。


「なに笑ってんの」


「いや、なんか……几帳面だなって」


「べつに」


るかは不機嫌そうに目をそらして、

残りの照り焼きをもくもくと口に運んだ。



無言で避けられるトマト。

けどそれを“避けた”という事実は、ちゃんと俺の記憶に残った。


こうやって、知らなくていいことと、

本当はちゃんと知っておきたいことが、毎日の食卓に並んでいく。

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