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ゆっくりと、目を開ける。
白い天井が見える。
と、隣には、1人の男の子が座っている。
誰、?
「香奈(かな)。おはよう。今起きた様だね。」
その人が、そう言った。
なんで、悲しそうな、嬉しそうな、複雑な顔をするんだろう。
「えっと、貴方は、?」
「僕は、湊(みなと)。一応、君の恋人だよ。」
この人が、?
でも、って、あれ?記憶が、ない、
なんで、
そう、私が戸惑っていると、彼の唇が開いた。
「君は、夜、眠ると、記憶が無くなるんだ。」
え、?一日で、?
でも、大体の学びは、残っている。でも、記憶の中に人は居ない。
「はい。これ。」
彼は、私に日記らしいものを渡した。
「これは、?」
「君が記憶を無くした時から書いている日記だよ。」
そう、なんだ。
私は、その日記を読むことにした。
2022年 1月5日
私が一日で記憶が消えてしまうから、日記を書くことにした。
今日は、湊くんにお話を聞いた。私は、どうやら、無名の記憶障害のようで、酷く皆に心配掛けただろう。
母親にも会って、父親にも会った。2人ともとてもいい人で、こんな人達が親でよかった。
明日は、記憶、消えてないといいな、
2022年 4月24日
今日は、お母さんとお父さんらしい人が、亡くなったと聞いた。湊くんも、泣いていた。
私の知らない人なのに、何故か、涙が溢れた。会ったこともない人なのに。
明日は、記憶消えてないと、いいな、
一日も休まず、1ページ、日記を書いていた。
日記の最後の行には、必ず、「明日は記憶消えてないといいな」と書いてある。
「読み終わったかい?」
優しく、そう訪ねてきた。
「はい。湊さんは、いい人なんですね。」
無意識に笑顔でそう言った。
この日記に書いてある限り、湊さんは、毎回私に説明してくれている。
「そうかい、?」
聞こえるか聞こえないか、そんな音量でそう呟いた。
なんで、そんな、悲しそうな、顔をするの、?
そう言えば、この人は私の恋人、私は、すぐに記憶が無くなっちゃう。
だとしたら、この人は幸せになれないんじゃないかな、
「あの、なんで、私を振らないんですか、?」
私なら、そんな人は、嫌、だな、
相手を見ると、聞き慣れているかのような表情をしている。
「君は、変わらないね、苦笑」
変わらない、?どういう意味だろう。
「さぁ、お出かけしに行こう。」
私が深く考えていると、彼はそう言った。
お出かけ、?
「今日は、院内を回ろうか。」
この病院内のことかな、?
「はい、」
「さぁ、行こう。」
彼はそう言い、私の手を引いた。