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⚠️注意書き
・恋愛
・緑黄
・魔女設定
・下手っぴ注意報
朝。
ドア越しに使用人達の呼ぶ声で目覚め、すぐに部屋を出た。
いつも以上に慌てた様子に少し不審に思いながらも、いつもより早めの時間に朝食の席に着く。
食卓には、お父様とお母様と、俺、
そして、使用人が複数人。
一つの大きなテーブルを囲んでいる。
料理の乗ったお皿が全て並び終わった時、お父様が二、三人の使用人達に何かを耳打ちしていた。
その使用人達は、お父様の言葉に頷くと、そそくさと部屋を出ていってしまった。
具体的な内容は聞き取れなかったけれど、特に関係ないだろうと思って、
そのまま食事を始めた。
「みこと、」
食事の終わり際。
口を開かず、黙々と料理を口に運んでいたお父様が、俺の名前を呼んだ。
👑「なに?」
動かしていた手を止め、お父様の方を見た。
食卓でお父様から話しかけられることは滅多に無いため、身構える。
「夜中、どこにいた?」
ドキッとした。
まさか、バレたのかなと思った。
もしバレたのだとしたら、どんな仕打ちを受けるか分からない。
動揺しているのを悟られないよう、いつも通りの態度で返事をする。
👑「…どこ、って、部屋にいたよ?」
「呼びかけても返事がなかったんだが」
👑「寝てた、から…」
声が少しばかり震える。
怒られるのが怖かった。
「…嘘、ではないんだな?」
👑「っ、ほんと…」
俯いて、目を瞑る。
お父様は口を閉じた。
お母様は、黙ってこの会話を聞いている。
「では、これはなんだ」
お父様の低い声と共に、チャリン、という小さな金属音が聞こえた。
ゆっくりと顔を上げ、お父様の手に握られたそれを見る。
👑「…ぇ、?」
ペンダントだった。
すちくんがくれた、ペンダント。
👑「な、ぇ…、?」
なんで、?
なんでお父様が…。
そもそも、部屋には鍵が…。
閉め、忘れたとか、?
いくつもの疑問が頭に浮かぶ。
それと同時に、怒りが込み上げてきた。
👑「…っ、勝手に取らないでよ!」
👑「返して!」
机を思いっきり叩き、
腕を伸ばしてお父様の手からペンダントを奪い取ろうとする。
でも、避けられてしまった。
「…馬鹿者め」
「父親であり、この家の主である私が、息子の部屋の鍵を持っていないなんてことがなかろう」
そう言って、ポケットの中から俺の部屋の鍵と同一のものを出す。
「…この紋章、魔女族のものだな」
「魔女と関わりを持ったなんて…」
「王家の子供として恥ずかしくないのか」
👑「いいから返してよ!」
お父様の言葉も全部無視して、目の前の宝物にひたすら手を伸ばす。
「質問に答えろ!」
👑「っ、(ビクッ」
お父様が怒鳴り声をあげる。
今更になってようやく、してはいけない事をしたと気が付いた。
「魔女との関わりを持った、」
「さっきまでのは全て嘘なんだな」
👑「ちがっ、…!」
「何が違うんだ、言ってみろ」
眉をひそめ、此方を軽蔑した目で睨んでくる。
握りしめた手が震えた。
👑「あの、子は…、」
👑「…と、友達、だから、、」
やっとの事で発した声も、すぐさまお父様の怒鳴り声で掻き消される。
「ふざけたことを言うな!」
「魔女が友達?何を言っている!」
「あいつらは人間の敵だ」
「昔から、何人もの人間を殺してきた、穢らわしい存在なんだ」
「二度と魔女との関わりを持つなよ」
乱暴にペンダントを床に叩きつけて、お父様は部屋を出て行った。
「…時期王としての自覚を持ちなさいよ」
お母様が続いて部屋を出る手前、すれ違い際にそう言われた。
ドアが音を立てて閉まり、再び静寂に包まれる食堂。
一人取り残された俺は、ゆっくりと立ち上がり、ペンダントの側にしゃがみ込んだ。
叩きつけられた衝撃で千切れたチェーン。
幸い、水晶は欠けていなかったけれど、傷が入ってしまった。
👑「……、」
壊れたペンダントを握りしめて、重たいドアを開ける。
ふらつく足取りで階段を上り、自室へ向かった。
👑「え、っ?」
部屋に入って驚愕した。
カーテンが真っ黒になってた。
嫌な予感がして、焦って窓に近寄る。
カーテンを開けると、開けっ放しにしていたはずの窓も、完全に閉じられていた。
しかも、ご丁寧に鍵までかけられている。
👑「…っ、なんで、っ」
👑「…開かないっ、」
精一杯動かそうとしてみるも、鍵はびくとも言わなかった。
👑「……、っ」
反射的に分かった。
もうすちくんには会えないんだ。
会わせてもらえないんだ。
力の入らない体でどうにか歩き、ベッドに突っ伏した。
👑「…っ、うぅ〜、、(ポロポロ」
目から流れる涙が、白いシーツに染み込む。
もう何をするにも嫌で、考える気力も出なかった。
昼食も夕食も抜かして、このまま泣いて寝てを繰り返していた。
ようやくベッドから起き上がれたのは、夜の23:00過ぎ。
二食分食べていないというのに、お腹は空かなかった。
音を立てないように部屋を出て、浴室へと向かった。
お風呂を終え、部屋に戻ると、もう0時を回っていた。
今夜はなんだか、すちくんと目を合わせたくなくて、そのままベッドに寝転がり、毛布を頭から被った。
無音に包まれた数分間。
たった数分のはずなのに長く感じたのは、やっぱり会いたいと思っているからなのだろうか。
横になっても寝られるようなことはなく、意識だけがはっきりと続く。
ふと、コン、という音が聞こえた。
怖くなって、毛布を掴む力を強くする。
そんな態度とは裏腹に、心の中では、淡い期待が膨らむ。
だって、すちくんは魔女だもん。
魔法、使えるし。
会えるよね…?
🍵「…みことちゃん、大丈夫?」
すぐ横で聞こえる、すち君の心配そうな声。
すぐ近くにいるのに。
今すぐ布団から抜け出したいのに。
顔を見て、話したいのに。
👑「…入ってこないで」
自分でも驚くくらいの冷たい声。
違う。
君にそんなことを言いたい訳じゃないのに。
🍵「え、?」
👑「今すぐ部屋から出てよ、」
行かないで、
まだ隣にいて、
🍵「みことちゃん…?」
🍵「ほんとに大丈夫、、」
👑「うるさい!」
無意識に出た大声。
胸の中に、よく分からないぐちゃぐちゃしたものが広がる。
👑「いいから、出てってよ!」
👑「もうやだ…っ」
👑「会いたくない…(グスッ」
会いたいよ
声を聞きたい
触れたい
抱きしめて欲しい
手を繋ぎたい
🍵「…ごめん、ね」
部屋にか細い声が一つ残り、
誰の気配もなくなった。
👑「……、」
見られたかな、ペンダント。
失望されたかも。
暫く布団に篭もり、
その後、隙間から顔を出し、ゆっくりと部屋を見渡す。
静かに立ち上がって、部屋の隅の引き出しを開けた。
中には、すちくんがくれたあのお花。
顔を近づけると、控えめな落ち着く香りがした。
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