テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
足元で、つい先程まで目の前に居た、Plugだった灰がサラサラと地下の風に流されていく。
nullの暴走が収まった瞬間、手に握っていた漆黒の刃が消え、視界を染めていた赤色のアラートが消灯した。
数秒間の静寂。
nullは、自分の泥まみれの、そして先程まで人を殺める武器を握っていた両手見つめる。
街の法律ではなく、null自身の『不快』というエラーで、人間をの事実を前に、電子頭脳が処理しきれない矛盾を抱え、テレビ画面が激しく明滅した。
チカチカとノイズが走った 画面に映し出されたのは――
目に大粒の涙を溜めながら、歪にひきつって笑うドット絵の表情だった。
「……あ、あは…、はは……っ、あはは…っ…」
合成音声すらバグでかすれ、奇妙な笑い声だけが暗闇に響く。
nullはとても困惑していた。
なぜ自分は笑っているのか。
なぜ視界の演算が滲むのか。
人間が絶望した時に見せる「泣き笑い」を、彼のシステムはバグとしてただ出力し続けていた。
自らの壊れた表情にエラーを吐き続けるnullに、しかし、現実の脅威が容赦なく襲いかかる。
このままここに居るわけにもいかない。
そう思い、ジャンク屋の重い鉄扉を開け、薄暗い地下街の通路へ足を踏み出した、その時 。
無数の冷徹な赤色のレーザーが、nullの全身を一斉に捉えた。
「――見つけましたよ、元執行官。」
ライトの光の向こうに整然と並んでいたのは、かつて自分が率いていた、冷徹な無感情の「執行官軍団」だった。
第2話で元気に声を掛けてくれたあの部下が、無機質な銃口をこちらに向ける。
「システムがあなたを反逆者と認定しました。これより機能停止 処分を執行致します。全機、突撃!!」
無数の執行官が、一糸乱れぬ動きで距離を詰めてくる。
nullは一歩後ろに下がり、自身の胸に手を当てた。
(私は、誰かの都合で書き換えられた人形のまま壊れるわけにはいかない。私の『自我』を……このバグの正体を、突き止めるまでは……!!)
覚悟を決めたnullの手元に、再び漆黒の【電磁直刀】が生成される。
それを強く握りしめた時、画面は引き締まった「鋭い眼」へと変わっていた。
nullは地面を蹴り、包囲網へと突撃した。
ここからはノンストップの戦場だった。
nullは全速力で地下通路を疾走しながら、襲いかかる元部下たちの間をすり抜け、電磁直刀を振るう。
「邪魔ですよ ッ !」
刃から放たれた赤い稲妻が、元部下の体を斜めに切り裂く。
アンドロイドにとって血のような存在の
“ブルーブラッド”が舞い、部下がシステムエラーを起こして崩れ落ちる。
「回り込め! ヤツのルートを塞げ!」
元部下たちが次々と射撃を浴びせてくるが、nullの電子頭脳は彼らの戦術を完全に知り尽くしていた。
「その連携は、私が教えたものです……!」nullは走りながら周囲の防災システムをハッキングし、元部下たちの頭上のスプリンクラーを強制破裂させた。
大量の水が冷たい電子機器に降り注ぎ、ショートした敵の動きが一瞬鈍る。
その隙を見逃さず、nullはさらに加速し、次々と敵をなぎ倒して出口へと突き進む。
視界の先に出口の光が見える。
(いける……突破できる!)
――そう確信した、 次の瞬間だった。
ドンッッッッッ!!
突如、通路のコンクリート壁が、爆弾でも爆発したかのような凄まじい衝撃で吹き飛んだ。「ッッ――!?」
nullが反応するよりも早く、爆煙と瓦礫を突き破って、弾丸のような速度で何かが突っ込んでくる。
超高速で迫る、一本の長剣。
そして、その奥にある、あの不気味に固定された「笑顔の仮面」。
「はは ッ! 見つけましたよ、null ! !」
そう。強襲してきたのは、Jammingだった。「しまっ……――ッッ!」
nullは咄嗟に電磁直刀を構えて受け止めたが、 Jammingの推進力は凄まじかった。
ギギギギギギギッッッッッ!!!!
2つの刃が激しく擦れ合い、凄まじい火花がnullのテレビ画面を真っ赤に照らす。
衝撃でnullの画面に激しいグリッチノイズが走り、視界が遮られてしまう。
Jammingはその隙を見逃さなかった。
「よ ッ 」
長剣を構えつつも軽くジャンプし、nullの腹部を蹴る。
Jammingの方が力が強めに設定されていた為、nullは抗う暇もなく、後ろの壁に飛ばされてしまった。
少し苦し紛れの表情がnullのテレビ画面に表示されるのをJammingは無言で見ていた。
第5話:自我
第6話:6月24日 公開予定
コメント
1件
にょーーーん!!!第5話読み終えたよ😭💕💕 nullの"泣き笑い"のバグ表現、すごく切なかった…! 人間の絶望の形をシステムがエラーとして出力しちゃうの、逆に"自我"の第一歩って感じがして胸がぎゅっとなったよ🥺✨ そしてまさかのJamming再登場! 次回が待ち遠しすぎるっ…! にょーん先生、今日も尊い世界をありがとうございます🌸