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藤花は勿論、朔も葵も大切な友達だ。
時に二人は大切な事を教えてくれる。
感謝してもしきれない。
「紅ー!」
「藤花ちゃーん!」
せっかくのイチャイチャタイムを邪魔された…!
少し恨めしそうな顔で僕は二人を見つめた。
藤花には見えないように。
すると、二人は呆れたような声で僕に言った。
「私は少し前から居たわよ。ただ、いつ二人に声を掛けるか考えていただけ」
「俺はついさっきから。二人共、仲良く喋ってるから話しかけるの躊躇したんだぞ」
朔が恋愛事情を知ってるのは分かるけど、何で葵も知ってるんだ?
そう疑問に思いつつ話を続けた。
「取り敢えず全員揃ったし、中入るか?」
「…そーだな。夏だから外は暑いし」
「…そうね。行きましょう」
「うん。入ろう」
僕ら四人組は、そうして中に入っていった。
「まずは、お昼ご飯食べようよ」
「えぇ、食べましょう」
女子組が話をどんどん進めていく…男子組の僕と朔は置いていかれていた。
「…あれって飯じゃなくて、スイーツとかドリンクがメインの店だよな?」
「楽しそうだから良いんじゃない…」
諦めモードに僕は入り始めた。藤花が楽しいならそれで良いんだ…それで…
「諦めんな紅!このままだと俺達の飯がクレープとかパンケーキになっちまうぞ!」
「美味しいじゃん」
「そうゆう問題じゃねぇよ!成長期真っ只中の野郎が食うもんじゃねーんだよ!」
朔は肉が食べたいらしい。
そりゃそうか。朔は母ちゃんは普段食べさせてくれないステーキを食べれるかもっていつも以上に騒いでたもんな…
「じゃあ、どうやって女子組の意見を変える?このままスイーツの店になりそうだけど」
「任せろ!俺に良い案がある!」
そう言うと朔は目の前を歩く女子組に駆け寄ると話し始めた。
「あの店にしないか?ケーキとかアイスとかもあるし、肉とかもあるから腹も満たされるし」
「いいね。美味しそう!」
「藤花ちゃんが良いなら良いわ」
なんとか解決したらしい。僕は正直お腹が空いているので何でも良いから早く食べたい。
「紅が腹減り過ぎて死んだ魚の眼してるから急ぐぞ!」
「それは大変ね。行きましょう」
「紅君大丈夫?」
「………うん」
僕達は目の前にある料理店に急ぎ足で入っていった。朔と藤花が焦った表情をしている。
「全然大丈夫じゃねーな!」
「もう少し…もう少しだから!」
逆に葵は呆れたような表情をしている。この中で一番大人なのは葵かもしれない。
「大丈夫よ。こんなので死ぬ程紅君は柔くないわ。確かに顔は死んでいるけれど…」
店内に通され、僕達は座る。
「俺ここに座るから、紅はここな。藤花ちゃんは紅の隣で良いか?」
「うん。大丈夫だよ」
「この席順で大丈夫だと思うわよ」
僕の隣は朔が気を利かせてくれて、藤花が座ることになった。流石僕の親友兼幼馴染。
葵は藤花の向かい合う席で、僕の斜め前だ。朔は僕の正面に座っている。
「私トイレ行ってくるね」
「了解」
藤花が席を外すと朔と葵は僕に呆れたような表情を向けた。何回呆れるのさ。
「流石に顔に出過ぎだ!」
「そんなに?」
「そんなによ!あのイチャイチャに入りづらくて話しかけてなかったんだから!」
えぇ…と僕は思わず声を漏らした。
藤花との話に熱中しすぎて二人の事を気にしてなかった事は申し訳なく思った。
「でも、部活の皆とかは言ってこないよ?」
「あの部活の殆どが年齢=彼女いない歴だから分からないだけよ!」
「えぇ…」
本日二回目のえぇ…が出た。
でも、田中に彼女がいるところが申し訳ないが想像できない。本当にできない。
「別に藤花ちゃんを好きになるなって言ってる訳じゃねぇよ。ただ…」
「ただ?」
「周りを嫌そうな顔で見るな。最悪の場合、それを知った藤花ちゃんに嫌われるぞ?」
「嫌われたくない!」
朔の言葉に反射で答える。藤花に嫌われたら、その後の学校生活は恋愛できない自信がある。
「お前は一つの事に夢中になると周りが見えなくなるからな…」
「そうか?」
「そうだよ!アドバイスできる時は、してやるから少し落ち着け」
自覚してないだけで傍から見たらそう見えるのかだろうか…?
「分かった…頼む、朔」
「任せとけ!」
「二人だけで話進めないでー!私も紅君と藤花ちゃんの恋愛応援してるから!」
味方が二人居るのはありがたい。手伝えるだけ手伝ってもらおう。
朔と葵に心から感謝した。
二人は僕の背中を押してくれる心強い仲間だ。
四人で入った昼下がりの料理店で君が居ない時、こっそりした話。
君との恋の歯車は既に動き出していた。