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6 - 第2話:カミツキとメロンソーダ

2025年05月07日

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第2話:カミツキとメロンソーダ
社内は照明が白く無機質で、空調の音だけが響いていた。

ユーヤのデスクに置かれたメモには、朝一で届いた修正依頼が6件。


「また“仕様じゃない仕様”か……」

同僚の誰かがぼやいた。ユーヤは無言でコードエディタを開く。


昼休み。

彼は無言でNEO-Vを装着し、COKOLOへとログインした。




【COKOLO:PRIVATE ROOM “KZKR”】


仮想空間に立ち上がったのは、緑と赤の羽根飾りが光るステージ。

背景は星と金屏風が交錯するような昭和風空間、床はキラキラとしたホログラムのチェッカーパネル。


その中央に、コザクラは立っていた。


赤と緑のツートーンボブに、金の帯を巻いたミニ着物風の衣装。

濃いめのピンクリップとアイシャドウ、そして満面の笑み。

どこか懐かしく、それでいて異様に存在感のある光景だった。


「おにーちゃーんっ、ログインありがとっ!」

彼女は手を左右に振りながら、昭和アイドルのような決めポーズを取る。


「はいっ、今夜の“カミツキ飼い主ランキング”出ましたぁ!

 1位のユーザーさん、昨日10回も噛まれてくれたの~!優勝!」


「……知らない情報でいい」

ユーヤは仮想空間でも声を発さず、視線だけで返す。


「ふふっ、でもさー、“飼い主”ってほんと面白いんだよ?

 あたしが“浮気した?”って聞くと、ちゃんと戻ってくるの。かわいいでしょ?」


コザクラは、空中から取り出したメロンソーダ風のグラスを持ち、

透明な氷と泡を視覚エフェクトで踊らせながら微笑む。


「でもね――」

彼女はふいに声を落とす。


「いちばんの“飼い主”は、お兄ちゃんかもしれないって、思ってる」


ユーヤは少しだけ視線を外した。

彼女の声の裏にある“本気”に、何も言葉を返せなかった。




【LAST STRIDE:Memory Hunter】


試合開始。system_0は密林マップに現れた。

装備はナイフとジャマーだけ。あえて銃火器を持たない戦法。


敵が乱戦の中で激突する中、system_0は**“音”を殺して移動**する。

風の中に潜み、密やかに1人、また1人とメモリピースを奪っていく。


敵のレーダーが一瞬だけ彼を捉えるが、次の瞬間には消えている。

これは“戦術”ではない。“生存するための設計”だ。


「system_0、また無被弾勝利……?」

観戦ルームの視聴者たちがざわめく。


それを静かに見届けながら、コザクラがCOKOLOの個室でつぶやいた。


「飼い主たちには負けないでね、お兄ちゃん――噛みつかれないように、気をつけてよ?」




【現実:シスケープ 第7開発ビル】


「system_0ってさ、今期の解析一位だよな。……開発チーム内にいたらウケるよな」


誰かが笑った。ユーヤは、黙って次のコードチェックへと手を動かす。


彼のモニターには、試合ログとは別に、

**“感情過負荷による空間エラー”**というワードが、淡く光っていた。


> デバイスの向こう側。

それは、心の深さとつながっていた。

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