テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#魔王
チタコロ
48
#探偵
橘靖竜
6,432
自転車和尚
1,223
#魔道具職人
こはる
1,904
「ジャヌスさんを殺したのが……」
思い出したく無い辛い記憶。ニティアは鼓動の音が大きくなり、何も聞こえなくなりながらも一つずつ記憶を遡っていった。
争った様子もなく、静かに裏庭で倒れていたジャヌス。当然これと言った外傷もなく、唯一あった傷は胸元の火傷のみ。
ジャヌス自身や、身に付けているローブの魔法耐性を貫通し、ピンポイントでその胸元を一撃で撃ち抜いている電撃魔法。
引退したとは言え、かつて魔女と戦ったことのある英雄の1人だった彼女に、そんなことができる人間なんてそうはいないはず……少なくとも家を出たときにそんな魔力を持つ人間なんて近くにいなかった。
それができるものと言えば……光と共に現れ……そして消え去ることができる……
「魔女……アニタ……」
同じ考えに至ったのだろう。握っている拳から力を緩めず、血を流しながら腕を震わせたフィニスが呟いた。
「あいつは何がしたいんだ……」
自分のことを助け、育ての親を殺した魔女。わけもわからず、怒りと動揺に身を包まれたフィニスが、震えた声でステラに尋ねる。
『星の循環から外れた異質の存在……。少なくとも、アニタと呼ばれる魂の存在については……突如現れたとしか言えません』
「あの……私からもひとつよろしいでしょうか……?」
フィニス達の後ろで小さく手を上げるアルテアに、ステラが優しく微笑んだ。
『ええ。私が答えられることであれば』
目を閉じて大きく深呼吸をするアルテア。
「この星の巡りから外れた魂の魔女。ですが、魂ではなく、魔力そのものから……何か分かったりはしないんですか?」
『……と言いますと?』
「家族や一族で魔力の波長が似ている……と言ったような……誰かは分からなくても……近い魔力を有している人物がいないのかが気になりまして……」
アルテアの言葉に静まり返る一同。しばらく沈黙を続けた後に、ステラがゆっくりと口を開いた。
『あなたは……何か感じましたか?』
「それは……」
黙り込むアルテア。隣にいたエラリスがうーんと首を傾げながら呟いた。
「魔力が強大すぎて細かい波長とかは全然分からなかったかな。むしろそういう読めないと言った点で言えば……ステラ様に近いかも」
その言葉にぷっと吹き出すステラ。
『確かに……元はと言えば私が授けた力が原因のひとつですからね。ですがアルテア。私がその答えを言ったとして……あなたが今まで見てきた全てを否定し、私の言葉を信じることができますか?』
「いいえ……」
2人のやり取りに首を傾げるフィニス達。アルテアも一度俯き、首を左右に大きく振った後、再び顔を上げてステラの目を見つめた。
「やっぱり大丈夫です。私自身の目で……見て確かめます」
その言葉に、ステラはにこりと笑った。
『あなた達の信じる道を進んでください』
ひとしきり話を終えた後、ステラが再び真面目な顔でフィニス達ひとりひとりに視線を移す。
『あの子達を生み出した私にはもう、人間達に直接力を授けることはできません……』
そのまま、台座の上にいる精霊達を見回すと、今度はドーム状の部屋全体に視線を送った。
『この場所は……霧の結界もあるせいか、魔女と魔族達が時折訪れ、手前の広間で暴れたりすることがありました。あなた方も先ほど巻き込まれていたようでしたが……しかし、あなた達が訪れてアルドムリアを倒したことで、魔女の動きも本格的になるでしょう』
「……」
『星と共に歩んできた過去を見ることはできても……未来を見ることはできません。これから先……あなた方と星がどのような選択をしてゆくのか……見守っていますよ』
ゆっくりとステラがニティアの方へ手を翳すと、ニティアの胸元が明るく輝き出す。
その輝きを受け取るように、そっと両手で包み込もうとするニティア。光がニティアの手に触れるや否や、光が消失し、ひとつの指輪がニティアの手の中に収められる。
「これは……?」
現れた指輪を手に取り、まじまじと見つめるニティア。キラキラと輝いてはいるが、それでもかなりの年季が入っているのだろう。
指輪の内側には何か文字のようなものが刻まれていたが、削れて読み取ることができなかった。
「S……u……。削れて読めないわ……誰かの指輪……?」
優しく微笑むステラ。
『これを貴方に授けること。どうやらそれが、この星の選択のようです。皆さんも……頼みましたよ』
そう言いながら再び精霊達を見回すと、激しい光と共にステラは消え去ってしまった。
膨大な魔力が込められている指輪を右手の薬指に装着し、ステラが去ってからもしばらくの間、ニティアはその指輪を見つめていた。
コメント
1件
いやあ、今回も重厚な回でしたね。魔女アニタがジャヌスを♡♡♡たって確証に至る流れ、フィニスの震える声が痛いほど伝わってきました。それでいてステラの「未来は見えない。あなた達の選択を見守る」っていうスタンスが、世界の仕組みとしてすごく一貫してて好きです。あの指輪、削れて読めない刻印がまた気になる…「Su」って誰のものなんだろう。長編ならではの伏線の積み方、しっかり味わってます。