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「がああああああああっ……!!、あああああああああああって……!」
ヴェルリナは恐ろしい形相で。威嚇し、彼女の唸り声を合図に怪現象が引き起こされ始め、「お前達は気に食わない……皆殺しだ」
そう言って彼女は拳を振り下ろして、再び両親達へ暴力を振るった。「全部壊れて仕舞えば良い、うううううううっ……!!」
獣のような唸り声を襲いかかる。彼女の声色は女児とは思えないような声で、まるで獣のような声色だった。「がああああああああ、ああ……」
彼女の悪魔憑きの状況が治らない。強引ではあるが、急遽悪魔祓いを試みる事に。「無理は承知だが、此処で急いで悪魔祓いをやろう、それで全てが落ち着く訳じゃないが……」
「え、ええ……」
そうして、悪魔祓いやる為にヴェルリナを椅子に拘束して身動きが取れない状況を作り、その隙に「じゃあ悪魔が暴走を始める前に始めよう」
緊急で行われる事になった悪魔祓い。彼女の形相は悪魔そのもので、元の彼女の力で強引に拘束している紐を千切り、エリミア達を襲おうと飛びかかった。
「悪魔よ、キリストの名の元に鎮まり給え…!」
「がああああああっ……!、ううううううっ………!」
暴れていた悪魔も長時間詠唱の呪文をエリミア達が唱えている間、ずっと悪魔からすれば天敵である『十字架』を自身の目の前に向けられ、苦痛だったのか悪魔の状態は消沈し、また痙攣を起こした。
悪魔憑きの状況が深刻化していて、更にこの状況に懸念していた事【ヴェルリナが悪魔憑きの状況悪化の最終段階、悪魔に自我を乗っ取られ猟奇殺人鬼になってしまうのではないか】と、その懸念していた予測が現実味帯びている。
「まさか、こんなにも悪魔の支配が早いなんて、予想外よ。もうヴェルリナちゃんは直に人間とは呼べなくなる……正真正銘の悪魔の類いよ」
「ああ、益々本来の正気を失っているように見えた、間違いなく悪魔憑きの状態になる頻度が正気の時間ようも頻発で、長時間になっている……それ程ヴェルリナちゃんの心は以前よりも更に悪魔によって追い詰められているという事だ」
「ヴェルリナは……本当に人を殺めるようになってしまうの…?ヴェルリナや私達を苦しめてる悪魔は一体何時居なくなるの……?」
「他者に対しての殺意が極めて高い、それにその前兆が明確にあったという事なら尚更、それは視野に入れておいて下さい、暫く歯彼女の行動には細心の注意をして見ていた方が良いかと」
「心が悲観的になり、自己否定感が強まってしまったらそれはもう悪魔の思う壺になってしまうも同然なんです」
彼女らが話している間ヴェルリナはどうなってたかというと、悪魔祓いが長時間長引いた影響で身体が疲弊して気絶していた。
と、話し声が気になったのか、ゆっくりと瞼を開けヴェルリナは起き上がった。「ん……ん……ううっ……おえっ……」
目覚めて早々に吐き気を催し、嘔吐した。吐き出した汚物には血色と赤黒く妙な血色のものだった。「ヴェルリナ、大丈夫……?」
そうルナリスが優しく彼女の肩に手を添えると、ヴェルリナは大声で泣き叫んで何度も、何度も両親らに向けて謝罪の言葉を泣きながら、「ごめんなさい……ごめんなさい………ごめんなさいっ…!」
「謝らなくて良いのよ、貴女も苦しめられてる側なんだから……それにごめんねって言いたいのは私達の方よ、ヴェルリナ…ごめんなさい、何も貴女の役に立つ事が出来なくて…情けない親よね」
「ママ……、うう……うわああああああああん…!!」
泣きじゃくる娘をぎゅっと暖かく包み込んで抱きしめるルナリス。母親の優しい温もりの中で抱かれ、涙が溢れ続けるヴェルリナは声を出して、涙が落ち着くまで泣いた。
「娘さんの事とても大切に思っていらっしゃいますね、この悪魔事件にとってはその当たり前の愛情や絆は心強い力になるので、有り難いです」
「子供を大切に思うのは親として…家族として当然の事ですから。何より私達夫婦にとってヴェルリナはたった一人の大切な宝物なんです、だからこそヴェルリナが苦しんでいるのなら、それに寄り添って一緒に私達も同じ苦しみを背負うの」
「とても良い親子関係で素敵ですね、悪魔というのは幸せや喜びといった肯定的な感情に弱い傾向があるので、だからこそ安心できます」
沢山の大人に囲まれながら、休息の時を過ごす。だけど、背後に目を向ければ無数の悪魔が憑依している……その弊害で気色が悪いのか。気分は相変わらず落ち込んだまま上がらない。
「うう………はあ………はあ……」
身体にまた気持ち悪さを感じ、ヴェルリナはベッドに横になった。
「顔色……肌の血色は少し良くなったように思えるけど、それでもやっぱり完全回復までには至れないわね」
エリミアはそう言って、そっと彼女の額に手を置いた。彼女は呼吸が早くなり、かなり苦しそうだ、「酷い熱ね……かなりの高熱、悪魔憑きによる不調はやはり何時までも付き纏う……ヴェルリナちゃん、辛いね‥…苦しいね」
そっと彼女はヴェルリナの頭を撫で下ろした。
「何か冷やせる物を……」
そうして、ヴェルリナの突然の高熱を冷やすべく氷枕や水で濡らしたタオルを額に置いて看病を。急激な心身の不調続き、そして頻発する悪魔付きの症状……これらの事から考えるに、彼女を心身を衰退させて苦しめているのは言わずもがな、『悪魔』の存在だ。
「様々な悪影響と心身の衰弱はこれからもずっと終わらないでしょう、だって悪魔の目的はそこにあるのだから」
「え……、悪魔の目的って……?」
「悪魔は標的を見つけると嫌がらせをしたり、周囲を脅かして心身に不安な気持ちやストレスを与える、そして抵抗力がなくなっている隙を見計らって憑依、憑依する事で悪魔憑きとなり、人間関係を破綻させ、絶望に追い込んで最終的には、自死を選ばせる‥…それが悪魔の特性だ」
「そんな……………」
ルナリスはその言葉を聞いて、言葉が出ない…もう悪魔からは【逃げられない】そう悟った。静かに母親は娘に手を伸ばし、彼女の手を握って泣いた。
「…………ママ……何で泣いてるの…?ママは何も悪い事してないのに」
長引く不眠によって疲労やストレスが積み重なってしまい、身体と心は共にボロボロに、衰弱状態になっていくばかり‥……気分の落ち込みが激しくなった事で途端に涙脆く、何度泣いてもまた涙が溢れてくる。
「ううん、私は貴女にこうして言葉をかける…こんなちっぽけな事しか出来ない……ヴェルリナ、貴女は私達……ううんこの家の出来事以上の事を抱え込み苦しんでるでしょ?そんな中………こうやって寄り添う事だけしか出来ない事に私はとても悔しさを感じてるの、でもね?私達家族も、そしてエリミアさん達も、誰一人として貴女の事を笑ったり見捨てたりしない……悪魔に取り憑かれて、自分を見失いかけてる……だから、皆んなで貴女を支えるわ」
「ママ………ごめんなさい‥‥…ごめんなさい‥…!」
ヴェルリナはまた大粒の涙を溢して泣いた。
平穏が崩れ去ったのは「私のせいだ」そう自分を追い詰める。自分を卑下、否定する事で余計にまた悪魔の誘惑の思う壺の罠に嵌る。
「ヴェルリナちゃん、こうなったのは貴女のせいじゃないわ、それに貴女は一人なんかじゃない、貴女にはこんなに沢山味方が居るのよ」
「…………嘘だ……、私の事ほんとは怯えて怖いって思ってるんでしょ?良いよ……気を遣わなくたって、どうして私なんかに構うの?訳分かんないよ……」
ヴェルリナは、母親らから突然心を閉ざしてしまった。
「ヴェルリナ…………」
ルナリスが心配して彼女の背中に手を添えようとしたその時、睨みつけるような視線を母親に向け、「触らないで……、話しかけないで……っ‥、出てってよ…!!」
冷酷な一言を放った。
ヴェルリナの事が心配にはなるが、これは少し冷静になる時間が必要だと判断したエリミア達は部屋から退室し、心身共に休養して貰う時間を作ろう‥‥そう思った訳だが、やはり大切な最愛の娘を放っておけない。そうルナリスはヴェルリナに優しく寄り添うように、「貴女の事、絶対に見捨てたくない、だってヴェルリナ、貴女は私達家族にとって大切な宝物だもの」
「私なんて……もう要らないでしょ…構わないでよ」
ヴェルリナの心は荒み、精神的に相当病んでしまっているようだ。
「っ………‥、っ……」
涙脆くなって何度も何度も、気付けば不意に大粒の涙が止めどなく溢れてくる。すると、彼女は起き上がって、部屋にある大きいタンスにひっそりと忍ばせていたナイフや首吊り用の紐を出して、「…………もう耐えられない…………身体が重くなってく、その度に私が消えていく……」
椅子に登って高いところに紐を吊し、ナイフで……彼女の突然の行動に不穏な雰囲気を感じ、「ヴェルリナ…!!、お願い……そんな事やめて‥…!!」
自殺を図ろうとしていたヴェルリナを間一髪で阻止した母親。だが、ヴェルリナは死にたい衝動に心が張り詰められ、どれだけ止められようが無理矢理にでも『死にたい』……と、自傷し首を自らの手で締め、圧迫する。
悪魔の呪いから解放されたい、その為には死ねば良い。そんな考えが彼女の頭に過り、今度は絞殺して命を絶とうとする。
「お願い……!、ヴェルリナ、どうか……もう死のうとしないで、その手を緩めて」
「………………………………」
それでも、自死するその手を止めない。でも、疲れや不眠が絶えず蓄積していて、身体が限界を超えた影響でこれ以上の負荷にはもう……彼女は疲労困憊…倒れ込んだ。
「ヴェルリナ……!!?、ヴェルリナ……!!!?確りして……!!」
「負荷の蓄積に身体が耐えきれなくなったのでしょう、ちゃんと呼吸もしてる。ただ気絶しただけみたいです」
「それなら良かった……」
そこで、ルナリスはヴェルリナを起こさないようにそっと抱えてベッドに寝かせ、風邪を引かないように毛布をかけてあげた。
「それにしても、益々不穏な状況になったな。まさかここまで自死願望が強まってるなんて、最悪の事態が招かれてしまうのも、もう時間の問題かもしれない」
「そうね、でも多少はまだヴェルリナちゃん自身が悪魔の意思と思考に逆らおうとする意識が残ってる、それがまだせめてもの救いね」
「ああ、でも……その抵抗さえ出来なくなる程に心身が追い詰められたら、もう後がない」
両親、エリミア達ヴェルリナを静かに見ていると……寝ている筈が何故か目を閉じたまま涙を流していた。
「ヴェルリナ、また泣いてる……相当心が追い詰められているのね、ごめんなさい、母親として貴女に娘に救いの手を差し伸ばしてあげたい……ごめんね、ごめんね…………」
ヴェルリナの涙に釣られ、ルナリスも涙を流した。
ヴェルリナはその後……限界に達した疲労の蓄積により、深い休息に入ってぐっすり。「す〜…………す〜………」
溢れる吐息、そこにうっすら苦しそうな呼吸音が混じる。「魘されてるのか、それとも悪魔が彼女にまた悪戯しようとしているのか、何だか妙ね」
「暫く時間が経てば、熟睡の域に入れると思うけど、顔色が相変わらずまるで死人みたい……ずっと眠れなかったから、辛かったわよね」
ルナリスは最愛の娘に心から寄り添っている。その後も子守りを続け、熟睡に入れたようでそこから一度も起きる事はなく、呼吸も安定した。
ヴェルリナの調子が一先ずは落ち着いた……と、ふうっーと一息をつくルナリス達。そっと母親はヴェルリナの頰や髪に触れ、【私達が傍に居るからね】そう彼女に言うように触れた。
「ルナリスさん、ヴェルリナちゃんの事心から愛しているのですね、子供を大切に愛しているのがとても良く伺えます」
「勿論よ、この子は私達にとってたった一人の宝物だもの」
〜数時間経過後〜
「確り、眠りにつけているようね。悪魔に取り憑かれてずっと不眠が続いてそのせいで疲労やストレスが蓄積していって、その繰り返し……でもやっと、その苦痛から少し離れられたね」
エリミアも、そっと彼女の頰に触れた。「むにゃむにゃ……す〜、す〜す〜〜〜」
深い眠りにつけて寝言も言ったり、休息の時間を得られたヴェルリナ。
それから更に時間は経過……。
ーーー翌日ーー
「ん~………、ん〜……ふぁ〜……もう……朝……??」
眩しい朝日が差し込む窓辺を見て、背伸びをグーンっとして起き上がる。「ヴェルリナちゃん、おはよう。昨日は確り眠れてたみたいね、今日の目覚めはどう?」
「すっきり……した…かな、あんなにちゃんと寝れたのは何だかとても久しぶりかも、だけど……身体が重いには変わりないよ、気持ちも何だかモヤついたままって感じ」
「そう…、でもちょっとでも以前の状態から改善されたって感じれるのならそれは良い事よ、悪魔の誘惑に負けないように心を強く持ち続けるのよ、大丈夫!私達が居るから。ヴェルリナちゃんは決して一人じゃない」
「エリミアさん……ありがとう……!」
ヴェルリナの顔に笑顔がまた戻った。そしてエリミア、アルベスに心からの信頼を寄せるようになり、すっかり両親以外の大人にも懐いた様子。
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