テラーノベル
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side 大森
人気音楽番組の生放送。
3人並んで座ってる。
トークコーナー。
涼ちゃんはいつも通り穏やか。
「はい、ありがとうございます」
礼儀正しいし、 空気も読む。
フォローも上手い。
完璧。
でも、 一部のスタッフからなぜか好かれていない。
理由は分からない。
「真面目すぎて扱いにくい」
「裏で何考えてるか分からない」
勝手なレッテルを貼られる。
事件はリハ終わり。
楽屋に戻る途中。
スタジオで大きな音がした。
ガシャッ。
「え、なに?」
高価なカメラ機材が倒れてる。
レンズが割れてる。
スタッフがざわつく。
そこに。
「……さっき藤澤さん、この辺にいましたよね?」
静かな一言。
空気が変わる。
涼ちゃんは立ち止まる。
「え?」
「ぶつかったんじゃないですか?」
その言い方。
ほぼ断定しているような言い方。
若井の目が細くなる。
僕は一瞬で察する。
涼ちゃんは首を振る。
「っぇと、、僕は触ってないと思います、」
本当。
その時間、涼ちゃんは楽曲の打ち合わせで
別のスタッフと話していた。
でも。
「でも近くにいたのは事実ですよね?」
圧。
周囲の視線。
涼ちゃんの喉が少し鳴る。
「……近くは通りましたけど」
それだけで。
疑いの空気が濃くなる。
涼ちゃんは元々、自己主張が強くない。
責められると、 自分が悪いかもしれない
って 思ってしまう。
(僕が避けきれなかった?)
(何か当たってた?)
そうやって考え込んでいる顔。
でも、そんな事実は ありえない。
倒れた位置も角度も。
明らかに誰かがぶつけた倒れ方。
若井が前に出る。
「涼ちゃんが壊すわけないです」
声は低い。
怒りを押し殺してる。
スタッフが反論。
「でも証拠は?」
その瞬間。
僕が一歩前へ出る。
柔らかいけど、揺れない。
「そちらこそ、証拠がないのに
決めつけるのはやめてください」
空気が静まる。
涼ちゃんは横でぎゅっと拳を握ってる。
悔しい。
悲しい。
でも。
言い返すのが怖い。
そして、防犯カメラを確認する流れになる。
問題のスタッフは少し焦ってる。
映像。
そこに映っていたのは。
機材に足を引っかけるそのスタッフ自身。
焦って無理に動かして倒す姿。
完全に。
自爆。
空気が凍る。
涼ちゃんは静かに立っている。
若井の手がそっと涼ちゃんの背中に触れる。
「見た?」
小さな声。
涼ちゃんは頷く。
でも、 目が少し潤んでる。
スタッフは言い訳する。
「暗くて見えなくて」
「たまたまで」
僕が静かに言う。
「でも、涼ちゃんのせいにしましたよね」
逃げ場のない事実。
そのスタッフは番組から外されることになった。
表向きは“トラブル対応”。
でも実質、降板だった。
side 藤澤
楽屋。
僕は椅子に座ったまま動かない。
若井が前にしゃがむ。
「なんで何も言わなかったの」
怒ってる。
でも相手じゃなくて、僕に。
僕は小さく笑う。
「揉めたくなくて」
元貴が優しく言う。
「でも今日は言わなくてよかったかもね」
僕は顔を上げる。
「え?」
「僕らが言うから」
若井が続ける。
「証拠なくても、俺らは信じてるよ」
その一言。
僕の肩が震える。
「……ちょっと怖かったの」
やっと出た本音。
「みんなの前で疑われるの」
元貴が隣に座る。
「涼ちゃんはいい子すぎる」
若井が真っ直ぐ見る。
「優しさは弱さじゃない」
僕の目から涙が一粒。
静かに落ちる。
「ありがとう」
テレビでは笑ってる3人。
でも裏では。
ちゃんと守られてる。
疑われても。
壊れない。
だって。
隣にふたりがいるから。
コメント
2件
更新頻度高くて嬉しいです✨
#ミセスグリーンアップル
#病み